移動/固定質量比考慮リニアーモータXYテーブルの応答特性


  1.  移動/固定質量比考慮の場合
     移動/固定質量比考慮のリニアーモータXYステージの解析モデルを図B12に示します。
     図B12においては以下のパラメータが追加されます。
    ・固定部では静止質量が主要パラメータです。これを記号(Mb)単位(kg)とします。
    ・ベース支持構造体のバネ定数を記号(Kb)単位(Kg/s^2)とします。
    ・ベース支持構造体の摩擦抵抗を記号(Ffb)単位(kg*mm/s^2)とします。
    ・固定部は変位を生じます。これを記号(Y)単位(mm)とします。
     
  2.  移動/固定質量比考慮のリニアモータXYステージの解析モデルの方程式   図B12に示すモデルを数学的な方程式で表現すると下記式となります。

     (5)式は移動部の運動方程式であり、(1)式と同じです。
     固定部の運動方程式である(6)式が新たに追加されます。(5)式のモータ推力の項と 摩擦力の項は符号を逆にして(6)式に現れます。これは反力の項です。 (1)式の左辺は移動部の運動方程式です。ここで±Ffの項は摩擦力の項であり、 扱いに注意が必要です。摩擦力は運動の速度を落とす方向に働きます。速度の正負に よって摩擦力の正負が切り替わる不連続な関数です。
     (7)式はパルス数(Pn)を与えるデジタル化の式です。 

  3.  計算の実行
     VBAソフト「ステージ3.xls」をダブルクリックして起動した後、 シート「デェフォルト条件」の条件表の内容をシート「IN_FM」にコピーします。
    次にシート「操作」の「計算実行」ボタンを押します。
    計算結果の概要が表示されます。

    デフォルト条件表
    No記号単位説明
    1Cm1整数制御方式の切り替え、Cm=0線形制御、Cm=1非線形制御
    2Op50パルス非線形制御のオフセット量、単位(パルス)、線形制御時無効
    3Ka24000Kg*mm/(s^2*A)リニアーモータの推力(推力/電流)、単位(Kg*mm/(s^2*A))
    4dx0.00005mmリニアーエンコーダ検出分解能、単位(mm)
    5M40kgテーブルの移動部質量、単位(kg)
    6Ff8000kg*mm/s^2摩擦抵抗、単位(kg*mm/s^2)
    7Ks300A/mm変位フィードバックゲイン、単位(A/mm)
    8Kv0A*s/mm速度フィードバックゲイン、単位(A*s/mm)
    9A00A指令電流(目標設定)、単位(A)
    10Y[0]0.005mm移動部変位初期値、単位(mm)
    11Y[1]0mm/s移動部速度初期値、単位(mm/s)
    12h0.000001s計算時間間隔、単位(s)(計算時間が長くなりますが小さくしたほうが精度がよい。)
    13N100000整数計算回数(整数)(計算時間間隔×計算回数でトータル時間)
    14Np1000整数計算結果の出力間隔回数(整数)(計算結果を全て出力すると見苦しくなるため間引きをします。)
    15Mb300kgベース静止質量
    16Kb120000000Kg/s^2ベース支持構造体のバネ定数
    17Ffb0kg*mm/s^2ベース支持構造体の摩擦抵抗

  4.  デフォルト条件計算結果
     デフォルト条件計算結果を図B13に示します。
     図B13は移動/固定質量比考慮の非線形フィードバックの応答特性計算結果例です。
     図B13の条件においては、ステージとベースの質量比が40:300でありベースは ステージの移動反力のため高周波振動します。
     ベースが振動するとステージはその影響により、収束性が悪くなることがわかります。
     最終的にはステージとベースの振動は一致し、相対的には誤差はなくなります。

  5.  ベース支持構造体のバネ定数変更時の応答特性計算
     No16のベース支持構造体のバネ定数Kbを1.2E+8から1.2E+7に変更します。
     この時の計算結果を図B14に示します。
     図B14の条件においては、ステージとベースの振動は低周波となり、短時間で ステージとベースの振動は一致し、相対的には誤差はなくなります。
     これは実質的に収束性が改善したことになります。

  6.  ベース支持構造体の摩擦抵抗変更時の応答特性計算
     No17のベース支持構造体の摩擦抵抗Ffbを0から10000に変更します。
     この時の計算結果を図B15に示します。
     図B14の条件においては、ステージとベースの振動は低周波で永久振動します。
     構造体が十分剛性があればこの様な振動は問題となりませんが、この振動が問題と なる場合もあります。
     このような場合、ベース支持構造体に摩擦抵抗をつけると図B15のように振動が減衰します。
     乾性摩擦のかわりに粘性抵抗をつけても同様な効果が得られることは容易に類推できます。
     コストがアップしますがアクティブダンパーはこの振動を積極的に抑制します。


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