11章:エリプソメータ
- エリプソメータの原理
エリプソメータの原理を図11-1に示します。
最もシンプルなエリプソメータは光源にHe-Neレーザが用いられます。
入射光は45度傾いた直線偏光の光を入射します。
試料面で反射した光はP偏光とS偏光で反射率と位相の差が生じます。
このため、反射光は楕円偏光となります。
エリプソメータは下記の二つのパラメータを実測します。
Ψ(プサイ)=ATAN(P偏光/S偏光の振幅比) ---(11.1)式
Δ(デルタ)= P偏光とS偏光位相差 ---(11.2)式
上記の二つのパラメータから薄膜の膜厚を計算します。
測定したパラメータが二つありますので、薄膜の膜厚と屈折率
の同時計算も可能です。
ただし、膜厚と屈折率の同時測定は、上安定となることがありますので
膜厚のみが推奨です。
- Ψ(プサイ)とΔ(デルタ)の計算
エリプソメータの校正用基準サンプルはSi基板上にSiO2の
薄膜をつけたサンプルを使用します。
この条件においてΨ(プサイ)とΔ(デルタ)がどのように変化するか?
計算してみたいと思います。
計算条件
・波長 633nm
・入射角度 70度
・SiO2の膜厚 0~180nm(10nm刻み)
・空気の屈折率 実数部=1 虚数部=0
・SiO2の屈折率 実数部=1.462 虚数部=0
・Siの屈折率 実数部=3.850 虚数部=0.020
とします。
計算に必要な基本式は下記です。
図11-2にΨ(プサイ)とΔ(デルタ)の計算結果を示します。
図11-2において、SiO2の膜厚 0~130nmにおいて
Ψ(プサイ)の値は単調増加しますが、140nm近傍でピークとなります。
したがって、膜厚140nm近傍での測定は上安定となります。
この場合、入射角度を変更してピーク位置をずらす必要があります。
(測定波長を変更できる場合は波長を変更します。)
- エリプソメータ計算プログラム
エリプソメータは種々の理由により、測定誤差を生じることがあります。
このため、定期的に標準サンプルを測定し、測定値を確認する必要が
あります。
下記のエリプソメータ計算プログラムは、標準サンプル測定結果の検証用に
作成したプログラムです。
このプログラムは測定結果のΨ(プサイ)とΔ(デルタ)を入力すると
入射角度と膜厚を計算します。
誤差要因の一例にすぎませんが、入射角度の設定値と実際の
入射角度がずれている場合があります。
ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
「エリプソメータ計算プログラムをダウンロードする。
複素関数設定方法
(1)Microsoft Excelが必要です。
(2)NK固定θD計算.xlsをダブルクリックで起動してください。
(3)マクロを有効にするで開いて下さい。
(4)メニューの「ツール(T)_「アドイン(I)を選択してください。
(5)「分析ツールにチェックマークをいれ、OKボタンを押して下さい。
以上の操作で複素関数の表計算が可能となります。
(6)どこか空白のセルを選択し、メニューの「挿入(I)_「関数(F)を選択してください。
(7)関数の分類「エンジニアリングを選択し、IMABS等の関数が表示できたら
複素関数の設定は完了です。
表計算方法
1. 第1面反射・透過計算表
(1)入射角度(度) 入射角度を黄色のセルに設定
(2)屈折率実数部nr0 空気の屈折率(N)=1を黄色のセルに設定
(3)屈折率虚数部ni0 空気の吸収係数(K)=0を黄色のセルに設定
(4)屈折率実数部nr2 薄膜の屈折率(N)=1.462を黄色のセルに設定
(5)屈折率虚数部ni2 薄膜の吸収係数(K)=0を黄色のセルに設定
2. 第2面反射・透過計算表
(1)屈折率実数部nr2 基板の屈折率(N)=3.850を黄色のセルに設定
(2)屈折率虚数部ni2 基板の吸収係数(K)=0.020を黄色のセルに設定
3.多光束干渉計算表
(1)波長λ(nm) 光の波長=633を黄色のセルに設定
(2)膜厚d(nm) 薄膜の膜厚=50黄色のセルに設定
(3)計算値Ψc Ψ(プサイ)の計算結果が表示されます。
(4)計算値⊿c ⊿(デルタ)の計算結果が表示されます。
4.逆計算
(1)多光束干渉計算表/目標値Ψt 黄色のセルに設定値を設定します。
(2)多光束干渉計算表/目標値⊿t 黄色のセルに設定値を設定します。
(3)「θD計算実行《ボタンを押します。
(4)
入射角度(度) 入射角度が変化します。
(5)膜厚d(nm) 薄膜の膜厚が変化します。
(6)変化が終了したら逆計算が完了です。
5.注意事項
(1)各セルのロックはかけていません。
(2)黄色のセル以外の設定値は変えないで下さい。
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