8章:屈折率の波長特性

  1. ローレンツの理論
     ローレンツは物質の屈折率変化は、光の電場によって原子または分子の 電気双極子が発生するとした。
     マクスウェルの方程式において、電磁波が伝播する物質の特性は下記の 物質方程式で記述されます。

     ここに、電場E、磁場H、電気変位D、磁気誘導B、電流密度J、 ρは電荷密度、σは導電率、εは物質の誘電率、ε0は真空の誘電率で8.854×10-12F・m-1、μは物質の透磁率、μ0は真空の透磁率で1.257 ×10-12H・m-1です。また、Pは原子・分子の電荷分布が変化して生じる分極、Mは磁化分布が変化して生じる磁化です。
    また、誘電体の屈折率は

    の関係式があります。(Cは真空中の速度、vは物質中の速度)
     (8.1)式と(7.26)式から下記の関係式が得られます。


     次に原子または分子の運動方程式を考えます。
     電子の質量をm、バネ定数をs、粘性抵抗をb、電子の電荷をq、電場をEとします。
     この時の運動方程式は

     変形して

    となります。
     (8.6)式の微分方程式を解くには、下記の(8.7)式を(8.6)式に代入します。

     定数AとBを求め整理すると

     従って、分極Pは

    となります。
     (8.4)式と(8.9)式から

     変形して

     (8-11)式によれば、任意の角速度ωにおける複素屈折率nは、3個の定数で 決定できることになります。
     ω0は固有振動角速度、ωpはプラズマ振動角速度、 γは粘性係数です。
     これは、物質に依存する定数です。

  2. 実測値と計算値の比較

     材料はシリコンとしました。
     とりあえず
     λ0=300nm
     λp=90nm
     γ=5.00E+13
     として計算してみました。
     下記表においてNは屈折率の実数部
     KはNは屈折率の虚数部です。
    波長nm N計算値 N実測値 K計算値 K実測値
    206.6 0.02 1.01 3.004 2.909
    250 0.06 1.58 4.924 3.632
    300.9 29.94 5.02 14.926 3.979
    350.2 6.54 5.442 0.082 2.989
    400 5.14 5.57 0.034 0.387
    449.2 4.59 4.682 0.021 0.149
    499.9 4.29 4.298 0.015 0.073
    548.6 4.10 4.089 0.012 0.044
    601.9 3.97 3.943 0.010 0.025
    645.8 3.89 3.858 0.009 0.017
    696.5 3.83 3.787 0.008 0.013
    746.9 3.77 3.736 0.007 0.009
    805.1 3.73 3.688 0.006 0.006
    826.6 3.71 3.673 0.006 0.005
    1120 3.60 3.536 0.004 0
     厳密には一致しませんが傾向としてはあっています。


  3. X線領域の屈折率
     λ0=300nm
     λp=90nm
     γ=5.00E+13
     としてX線領域の屈折率(実数部)を図8-1に示します。

     屈折率(虚数部)を図8-2に示します。

     図8-1と図8-2から、X線領域では、屈折率(実数部)は1、 屈折率(虚数部)は0となることがわかります。

     光は、波長50nm~380nmの間で強く吸収され、赤外線、X線領域 では透過しやすいことがわかります。



9章:反射と屈折の法則に行く。

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