45章:ガソリンの燃焼エネルギー
作成2012.06.29
ガソリンエンジンの出力を予測するには、ガソリンの燃焼エネルギーを知る必要があります。しかし、複雑な混合物
質の燃焼エネルギーを計算するのは容易ではありません。ここでは、主物質のイソオクタンの燃焼エネルギ
ーについて検討します。
- イソオクタンの分子構造と結合エネルギー
イソオクタンの分子構造を図45-1に示します。
図45-1から
C-C結合の数は7個です。
C-H結合の数は18個です。
従って
C-C結合のエネルギー=88 ×7=616 (kcal/mol )
C-H結合のエネルギー=98 ×18=1764 (kcal/mol )
- 酸素ガス(O2)の必要数
燃焼で発生する物質は
二酸化炭素(CO2)が8個
水(H2O)が9個
です。従って必要な酸素ガス(O2)の数は
必要な酸素ガス(O2)の数=8+9/2=12.5個
- 酸素ガス(O2)の結合エネルギー
O-O結合のエネルギー=118 ×12.5=1475 (kcal/mol )
- 二酸化炭素(CO2)の結合エネルギー
CO2結合エネルギー=191×2×8=3056 (kcal/mol )
- 水(H2O)の結合エネルギー
H2O結合エネルギー=110×2×9=1980 (kcal/mol )
- イソオクタンの燃焼エネルギー
イソオクタンの燃焼エネルギー=二酸化炭素+水-イソオクタン-酸素ガス
= 3056+ 1980- 616- 1764- 1475=1181 (kcal/mol )
となります。
- イソオクタンの燃焼エネルギーの単位変換
(1)10339 (kcal/kg)
(2)43423 (kJ/kg)
(3)12.1 (kWh/kg)
(4)7154 (kcal/l)
(5)30049 (kJ/l)
(6)8.35 (kWh/l)
上記の値は換算しただけであり、同一のエネルギー量です。
さて、ガソリンのリットル当たりの単価は約150円程度です。従って、1kWh当たりの単価は約18円となりますが、熱エネルギー
を運動エネルギーに変換する効率は約60%程度となります。1kWhの運動エネルギーの単価は約30円となります。
- 電力料金とガソリン価格の比較
(1)ガソリン単価: 1kWhの運動エネルギーの単価は約30円
(2)昼間の電力料金:約24円/1kWh
(3)深夜電力料金:約9円/1kWh
エネルギーコストの点では、深夜電力利用が最も経済的という結論になります。ガソリンは電力と比較しても高いのですね!!
深夜電力利用の電気自動車は初期投資が必要となりますので単純に経済的とはいえませんが、将来有望な利用方法といえます。
- 自動車の燃費
2000ccクラスの自動車エンジンの最大出力はノーマルで150馬力(110kW)、ターボで280馬力(206kW)程度です。
2000ccクラスの自動車で高速道路を平均時速100km/hで1h走行し、ガソリンを10リットル消費したとします。エネルギー
効率η=0.6として走行時の平均出力と平均推力を計算してみたいと思います。
ガソリンを10リットルの総エネルギーは83.5kWhです。 η=0.6ですので総運動エネルギーは50kWhです。
従って、平均出力は50kWとなります。また平均速度は27.8m/sであり、平均推力は1800N(184kgf)となります。乗車時の
総重量を1700kgとすれば重力と推力の比は0.108となります。
おおざっぱな計算ですが、停止・加速によるロスと坂道でのロスと空気抵抗ロス等の合計でこのような結果になると思われます。
最近ではリットルあたり30kmの走行が可能な自動車がありますが、上記計算の1/3で済むということになります。
ちなみに、 2000ccターボ280馬力(206kW)を1時間運転すると約41.2リットルのガソリンを消費することになります。エン
ジンの出力を上げると消費するガソリンが増大しますので、出力を下げる工夫が必要となります。
46章:ガソリンの燃焼条件とエンジンの出力に行く。
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