5章:気体のエンタルピ[i]

    作成2012.06.20

  1. 気体のエンタルピ[i]
     気体のエンタルピ[i]は熱関数とも呼ばれ、熱力学の計算を容易にするためのパラメータです。物理的な意味を追求するのはあまり意味がありません。
     エンタルピの微小変化diは定圧比熱[cp]を使って、以下の式で定義されます。

    (5.1)式からエンタルピは一定圧力のもとで気体にとりいれられたエネルギーであることは明白です。
    絶対零度から温度Tまでのエンタルピの変化は

    として求めることができます。また温度T1におけるエンタルピをi1、温度T2におけるエンタルピをi2とした場合、エンタルピの変化Δiは

    と簡単に計算できます。各温度におけるエンタルピが不明で、各温度における定圧比熱cp(T)がわかっている場合、エンタルピの変化Δiは

    温度T1の定圧比熱がcp1 、温度T2の定圧比熱がcp2で直線的に変化するとするならば、(5.4)式は

    となります。エンタルピ変化量の計算は(5.3)式と(5.5)式のどちらでも計算できますが、 (5.3)式の方が簡単な計算となります。
     あらかじめ、各温度におけるエンタルピの値を計算しておけば、2点の温度間のエンタルピ変化は簡単に計算できます。

     比熱の関係式

    (3.6)式を(5.1)式に代入すると

    (5.6)式に(3.2)式を代入すると


    (5.7)式を0℃から温度t℃まで積分すると

    (5.8)式を変形すると

    となります。(5.9)式から内部エネルギーとエンタルピが確定すると気体の温度が確定することがわかります。
     エンタルピ計算の基準温度は0℃を使用します。


  2. その他エンタルピ関係式





  3. エンタルピ[i]の数表
     表5-1にエンタルピ[i]の数表を示します。

    表5-1 エンタルピ[i]の数表(単位:kcal/kg))
    O2 N2 H2 CO CO2 H2O 空気
    0 0.0 0.00 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
    100 22.1 24.92 342.4 24.9 20.7 44.6 24.1
    200 44.7 49.97 688.6 50.1 43.6 90.2 48.4
    300 68.2 75.32 1035.8 75.6 68.1 137.0 73.1
    400 92.3 101.15 1383.8 101.8 93.8 185.3 98.4
    500 117.1 127.54 1733.5 128.6 120.9 235.2 124.2
    600 142.4 154.50 2085.4 155.9 149.1 286.6 150.6
    700 168.1 182.01 2440.7 183.9 178.1 339.7 177.5
    800 194.3 210.03 2800.0 212.3 207.8 394.5 204.9
    900 220.7 238.50 3163.8 241.2 238.1 450.9 232.7
    1000 247.4 267.38 3532.6 270.5 268.8 508.9 260.8
    1100 274.3 296.61 3906.6 300.1 300.1 568.3 289.3
    1200 301.3 326.15 4285.7 329.9 331.6 629.2 318.1
    1300 328.6 355.95 4669.7 360.1 363.5 691.4 347.1
    1400 356.2 385.98 5058.7 390.4 395.7 754.8 376.3
    1500 383.9 416.23 5452.5 420.9 428.1 819.2 405.7
    1600 411.8 446.66 5850.9 451.7 460.8 884.7 435.4
    1700 439.9 477.26 6253.6 482.5 493.6 951.2 465.1
    1800 468.2 508.00 6660.5 513.5 526.6 1018.4 495.1
    1900 496.6 538.86 7071.2 544.6 559.7 1086.4 525.1
    2000 525.2 569.84 7485.5 575.8 593.0 1155.0 555.3
    2100 554.0 600.94 7903.2 607.1 626.4 1224.3 585.7
    2200 583.0 632.13 8324.2 638.5 660.0 1294.3 616.1
    2300 612.1 663.42 8748.2 669.9 693.7 1364.9 646.7
    2400 641.4 694.80 9175.0 701.5 727.4 1436.0 677.3
    2500 670.8 726.26 9604.5 733.1 761.2 1507.5 708.0
    2600 700.4 757.79 10036.7 764.8 795.2 1579.4 738.9
    2700 730.1 789.38 10471.3 796.5 829.2 1651.8 769.8
    2800 759.8 821.03 10908.2 828.3 863.3 800.8
    2900 789.8 852.73 11347.4 860.2 897.5 831.8
    3000 819.8 884.49 11788.6 892.1 931.8 862.9
    分子量[g/mol] 32 28.016 2.015 28 44 18.015 28.96
    R[m・kp/kg・K] 26.5 30.26 420.6 30.29 19.27 47.07 29.27


  4. エンタルピ[i]のグラフ
     図5-1にエンタルピ[i]のグラフを示します。


     エンタルピ[i]の値は表3-1 定圧比熱cpの数表(単位:kcal/kg・deg)から容易に計算できます。
    表5-1 エンタルピ[i]の数表(単位:kcal/kg)は表3-1の値を元にして計算したものです。エンタルピ[i]の計算は難しくありませんが、表にまとめておくと後の計算が楽になります。
     エンタルピ[i]は熱力学計算を容易化するためのパラメータです。









6章:仕事エネルギーとpv線図に行く。

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