6章:葉緑素染めの原理と手順
作成2019.05.13
葉緑素は疎水性で一般的な草木染めの方法は有効ではありません。葉緑素の特性を理解し、
その特性にあった方法を適用する必要があります。
- 葉緑素の分子構造と特性
以下にクロロフィルaの分子構造を示します。
図6-1において、赤のマークを付けた結合は特殊です。窒素は3個の共有結合で安定ですが、2個の共有結合となっています。このため空いた電子軌道に電子が補充されマイナスの電荷を持ちます。
これに、マグネシウムイオンが配置された構造をしています。さらに非環式脂肪族化合物がシッポのようについています。
マグネシウムが配置された葉緑素は不安定で変色しやすい問題があります。マグネシウムの代わりの銅を配置すると変色しにくくなります。
また、脂肪族化合物は疎水性が高くなります。
- 柔軟剤の分子構造と特性
柔軟剤(ソフラン)の成分を見ると「エステル型ジアルキルアンモニウム塩」とかかれています。残念ながらこの名前から分子構造を確定できません。これを「塩化ジステアリルジメチルアンモニウム」とするならば、分子構造は以下のようになります。
図6-2において、第4級アンモニウムはプラスに帯電しています。ステアリル基は脂肪族化合物で疎水性です。
さて、染色物(綿)の表面には多数のOH基があります。このOH基はマイナスに帯電します。このマイナスに帯電したOH基にプラスに帯電した第4級アンモニウムが電気的に吸引されます。
第4級アンモニウムにはシッポのような脂肪族化合物であるステアリル基がついています。これに葉緑素についたシッポなような脂肪族化合物がからみつきます。
脂肪族化合物どうしの絡み合いは強固な結合ではありませんが、水洗い程度には耐える結合となります。
- 葉緑素の染液の準備
(a)緑の葉を採集します。
(b)採集した緑の葉を繊維を切断する方向で細かく刻みます。
(c)大型のステンレスボールまたは鍋に細かく刻んだ緑の葉をいれ、アルカリ水を入れます。(消石灰を使用します。)
(d)大型のステンレスボールまたは鍋をコンロで加熱し、約3分程度沸騰させます。
(e)煮込んだ緑の葉を冷水にしたし、よくゆすぎます。(水溶性の色素を除去します。)
(f)緑の葉の水をきります。
(g)緑の葉に水を加え、ミキサーでジュース状にします。
(h)さらし布で染液を濾して固形物を除きます。(さらし布を絞って、染液を絞りだします。)
(i)染液に銅媒染液を加えます。(水で薄める前の銅媒染液:染液=1:20程度で加えます。)
注1)マグネシウムイオンの葉緑素は変色しやすいため銅イオンを加えて置換します。
注2)葉緑素は疎水性で水に溶解しないため、粉末状となって沈殿します。
- 柔軟剤(ソフラン)処理の実行
(a)大型のステンレスボールまたは鍋に柔軟剤(ソフラン)と水と染色物(綿)をいれます。(柔軟剤(ソフラン):水=1:20程度)
(b)大型のステンレスボールまたは鍋をコンロで加熱し、約5分程度沸騰させます。
(c)ゴム手袋をして、染色物(綿)を取り出し、軽くしぼります。
- 染色の実行
(a)大型のステンレスボールまたは鍋に染液と染色物(綿)をいれます。
(b)大型のステンレスボールまたは鍋をコンロで加熱し、約5分程度沸騰させます。
(c)染液と染色物(綿)を保存容器に戻します。
(d)20:52 2019/05/12ゴム手袋をして、染色物(綿)を取り出し、軽くしぼります。
- 乾燥
(a)染色物(綿)を陰干しします。
注1)色が薄い場合は、再度染液に染色物(綿)をつけ、軽く絞り乾燥します。
- 洗濯
(a)ポリ容器に染色物(綿)と水をいれ、ゆすぎます。
(b)再度、ポリ容器に染色物(綿)と水をいれ、アクロン20:53 2019/05/12等のおしゃれ着用洗剤を少量いれて洗います。
(c)再度、ポリ容器に染色物(綿)と水をいれ、ゆすぎます。
(d)染色物(綿)を軽く絞り、陰干しします。
以上が葉緑素の染色方法ですが、一般的な草木染めとは異なる方法となっています。
7章:草木染めのサンプル写真に行く。
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