あとがき・リソグラフィの将来

1.あとがき
 私が数値計算法というものを知ったのは昭和43年(1969年)、随分と昔のことです。
使った参考書は「計算機のための数値計算」著作者:宇野利雄、発行所:朝倉書店、初版:昭和38年11月15日、6版発行:昭和43年9月25日です。
 1960年代、計算はそろばん、計算尺、手回し計算器等がほとんどでしたが1969年に初めて簡単なプログラムが可能な計算機をさわることができました。この演習問題がルンゲクッタ法による簡単な一階微分方程式の解を求める問題でした。このとき計算機のすばらしさに感激!!
 数値計算法がいつ頃から発達してきたかは正確なことはわかりません。参考書については1942年以降数多く出版されています。しかし、このとき学んだニュートン法、シンプソン法、ルンゲクッタ法がいまなお活用できるのは驚きです。

2.リソグラフィの将来
 1970年代以降1998年の現在に至るまで計算機の性能アップとコストダウン、小型化の進歩は目をみはるものがあります。この進歩に半導体集積回路(LSI)が大きく寄与したいっても過言ではないでしょう。  また、半導体集積回路の処理速度、小型化、コストと写真彫刻技術(リソグラフィ技術)は同様に密接な関係を保っています。より微細な回路を作るほど処理速度は向上し、コストも下がります。このためリソグラフィは常に微細化の道を歩んでいます。
 初期のリソグラフィ技術は(1)コンタクトプリントが主流でした。次に(2)1:1投影露光装置(ミラー光学計スキャン型)さらには(3)縮小投影露光装置(レンズ光学系、波長436nm、ステップ&リピート型)、(4)縮小投影露光装置(レンズ光学系、波長365nm、ステップ&リピート型)、(4)縮小投影露光装置(レンズ光学系、波長248nm、ステップ&リピート型)と発展してきました。
 近い将来は(5)縮小投影露光装置(レンズ光学系、波長248nm、ステップ&スキャン型)になると思います。リピート型とスキャン型で何が変わる?本質的に解像度が向上するとは思えません。確かに本質的解像度は向上しませんがスキャンすることにより広い画角を少ない収差のレンズで投影することが可能となります。このため実用的には改善が期待できます。
 本質的解像度向上はどうしたらよいでしょう?理論的には波長をさらに短くすればよいはずです。光源としてはさらに波長の短いArFエキシマレーザ等があります。しかし、使用可能なレンズ材料は限られており、具体化は容易なことではないと思われます。装置は益々複雑で高額なものになるでしょう。

 本質的解像度向上策としては光のかわりに電子線(EB)を用いるのが有望と思われます。電子線描画装置(EB)は真空中で電子線を投影し露光します。電子は粒子であり弾丸のように飛んでいくのでほとんど波動性がありません。量子論によるならば、電子線の波長はλ=1.16/sqrt(eV) (nm)の関係があり、印加電圧は100eV以上とするならば波長は0.1nmと水素原子程度の長さです。
 EBが本質的解像度向上策として有望なのはよくわかります。しかし、なぜ実用化しないのでしょう?現在、EBは原版(レチクル)の描画等限られた用途で実用化しています。しかし、量産への適用はいまいちです。主な欠点としては(1)位置精度が劣る。(2)装置価格が高い。(3)処理能力が劣る。等があり、利点としては(1)原版(レチクル)が不要等です。
 「(1)位置精度が劣る」は真空中で位置合わせを行うためですが本質的に解決困難な問題とは思えません。いずれ解決すると思われます。
 「(2)装置価格が高い。」EBは高度の計算機と電子回路を必要とし、高額なものになっていました。しかし、計算機と電子回路の進歩とコストダウンは著しいものがあります。実際の製造原価では光学式露光装置と逆転しているのではないでしょうか。
 「(3)処理能力が劣る。」これは当分解決しそうもありません。
 「(1)原版(レチクル)が不要」最近、原版にかかる費用が益々増大しています。少量多品種の製品では原版コスト比率は増大します。
 EBが主流となる時代がいつかくるような気がします。
3.独り言
 技術は量産ライン、開発ライン、オペレータ、検査、プロセス技術、装置技術、研究、開発、設計、設計支援技術等さまざまな技術が一体となり、それぞれがスムーズに機能することこそ重要、くれぐれも空洞化はさけたいものです。
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