16章:光のエネルギー

  1. 光の波動性
     光は電磁波であり、電場Eと磁場Hの振動として、空間を伝播します。電場と磁場の関係を数式で記述した式がマックスウェルの方程式です。従って、波動光学の基礎式はマックスウェルの方程式から導びかれます。
     電磁波は電場(電界)と磁場(磁界)の振動が伝搬(伝わる)する現象のことです. 真空中を伝わる電磁波は,光速cで伝搬し, 電場と磁場の振動方向は互いに垂直でかつ進行方向に垂直です. ふつう,電場はベクトルEで,磁場はベクトルHで表現されます.

     エネルギーの伝播は波動光学で良く説明がつくのですが、高温物体からの光の放射や分子での光吸収現象を説明できません。





  2. プランプの黒体放射

    図16-2にプランクが提唱した黒体放射の式を示します。

     図16-2の式は単位時間(s)・単位面積あたり放出エネルギーを 波長幅Δλで割ったものです。(波長幅を掛けると単位時間(s)・単位面積あたり放出エネルギー となります。)






    図16-3に放出エネルギーの計算結果を示します。

     図からはわかりにくいのですが、
     表面温度4000℃でのピーク波長は600nmで赤色です。
     表面温度6000℃でのピーク波長は470nmで紫色です。
     表面温度8000℃でのピーク波長は350nmの紫外線です。
     表面温度10000℃でのピーク波長は280nmの紫外線です。
     表面温度12000℃でのピーク波長は240nmの紫外線です。
     表面温度14000℃でのピーク波長は200nmの紫外線です。
     表面温度16000℃でのピーク波長は180nmの紫外線です。
     表面温度18000℃でのピーク波長は160nmの紫外線です。


  3. 光子のエネルギー
     プランプの黒体放射は光のエネルギーが連続量ではなく、離散的 な量であることを前提に導きだされたものです。
     光のエネルギーの最小単位を光子といいます。
     光子のエネルギー(E)は下記式で定義されます。
       E=hν=hc/λ
     hはプランク定数、νは光の振動数、cは光速、λは光の波長です。


     図16-4に光子のエネルギー計算結果を示します。

     有機物の主骨格はC-C結合で構成されています。
     C-C結合の結合エネルギーは3.82eVです。

     光子のエネルギーが3.82eVとなる波長は325nmです。
     波長325nm以下の紫外線を有機物に照射すると有機物が 破壊されます。
     紫外線は有機物を分解したり、殺菌したりする作用があります。

     紫外線は真空(低圧)中にわずかな水銀蒸気がある状態で放電すると 水銀が高温のプラズマ状態になって強い紫外線を発光します。
     この時の波長は約150nm程度であり、プラズマ温度は18000〜20000℃ になっていると思われます。
     波長約150nm程度の光は、強烈に有機物を分解するので危険です。

     蛍光灯は、ランプ管内壁に蛍光塗料を塗布し、危険な紫外線を安全な 可視光に変換して照明します。



     
17章:カチオン重合に行く。

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