17章:カチオン重合
- エポキシ基の反応
図17-1にエポキシ基の反応を示します。
エポキシ基のことをグリシジル基とも呼びます。
図17-1において、Rは任意の分子構造を示します。
エポキシ基の酸素は電荷分布(極性)を持ちマイナスに
帯電しています。
プラスイオンのことをカチオンとも呼びます。
カチオン重合とはプラスイオンがきっかけとなって起こる
重合のことです。
エネルギーをもったプラスイオンが酸素に近づくとマイナスに帯電した
酸素が引き抜かれます。
引き抜かれたあと、酸素はマイナス、炭素はプラスに帯電します。
マイナスの酸素とプラスの炭素が結合し重合します。
この反応においては、結合エネルギーの変化は無く、温度は上昇
しません。
従って、重合の連鎖反応は無く、穏やかに反応が進行します。
- 水との反応
図14-2に水との反応を示します。
エポキシ基は水と反応し、両端に水酸基(OH基)を形成
します。
水酸基と水酸基は脱水縮合しますので、結果的にエポキシ基
は水酸基とも結合します。
- 無水フタル酸との反応
図14-2に無水フタル酸との反応を示します。
エポキシ基は無水フタル酸等の酸無水物とも結合します。
- 光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤の種類は多数あります。
一例として、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート
CAS番号 : 61358-25-6 の分子構造を 図17-4に示します。
中央のヨードニウム(I)は元素番号53の原子で1価の原子です。
リン(P)は元素番号15の原子で3価の原子です。
ヨードニウムの電子がリンに奪われて、ヨードニウムがプラス、
リンがマイナスに帯電します。
両端には光を良く吸収するベンゼン環があります。
紫外線がベンゼン環に吸収され、このエネルルギーが
ヨードニウムのプラスイオンに伝達されます。
エネルルギーを持ったプラスイオンはカチオン重合を
開始させます。
- カチオン重合の特徴
・ラジカル重合で生じる酸素阻害がありません。
・表面に金属イオンがあると反応が阻害されます。
・重合反応はゆっくり進行します。
・シリコン、石英等の無機物に良く接着します。
(反対に離型性は悪くなります。)
・硬化収縮が少ない。
等の特性があります。
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