9章:発酵

  1. ブドウ糖の発酵
     でんぷんはブドウ糖が脱水縮合して結合しているため、 十分な水を加えると酵素(アミラーゼ、マルターゼ等)または希硫酸により容易に加水分解 できます。

     図9-1にブドウ糖の発酵メカニズムを示します。
     図9-1では、発酵による変化を分子構造ではなく、分子式で 示しています。
     発酵の過程での分子構造は不明確ですが発酵により 水素、酸素、炭素の原子数は不変です。

     1個のブドウ糖から2個のエタノールと2個の二酸化炭素が 生成されます。




  2. エタノールの発酵
     エタノール(エチルアルコール)はさらに発酵して酢酸(酢)に変化します。
     図9-2にブドウ糖の発酵メカニズムを示します。
     図9-2では、発酵による変化を分子構造ではなく、分子式で 示しています。
     発酵の過程での分子構造は不明確ですが発酵により 水素、酸素、炭素の原子数は不変です。

     1個のエタノールと酸素ガスから1個の酢酸と水が 生成されます。




  3. エタノールの分子構造
     エタノールの分子構造を図9-3に示します。

     エタノールの分子構造からエタノールの物性を推定してみましょう。
     右端にはOH基(水酸基)があり、強い電化密度(極性)があります。 これは水分子との間に引力が働くため、水と良く溶解します。

     左側には「-CH2CH3」のエチル基があります。 エチル基は油に良く溶解します。
     またエチル基は分子間の引力が弱いため、揮発しやすく、表面張力も 弱くなります。

     従って、エタノールは水も油も良く溶かし、揮発しやすい性質をもっています。

     エタノールは酸性でもなくアルカリ性でも無く中性を示します。
     エタノールにエヘルギーが加わると一番結合の弱い箇所で結合がきれます。 中央部の酸素と結合している炭素の電荷が+0.19とプラスになっていることに注目 する必要があります。
     中央部の炭素と結合している水素との結合が最も弱くなっています。 エヘルギーが加わるとここが切れるのですが切れる際に中央部の炭素は水素の 電子を奪い取ることができません。
     分離した水素はプラス水素イオンとはならず、ラジカル水素となります。 ラジカル水素は中性ですので、エタノールは中性を示すことになります。

     炭素の結合の切れた部分もラジカル状態となります。 ラジカル状態の炭素は通常ラジカル水素と再結合し、すぐ元に戻ります。
    もし、何らかの理由で近傍にラジカル酸素が存在した場合は、ラジカル状態の炭素は ラジカル酸素と結合し酢酸に変化します。

     高濃度のエタノールは殺菌作用があり、生命には有害です。
     適度に希釈されたエタノールは酒類であり飲用されています。 酒類が人体にどのような影響をもたらすかは生体内で起こる現象であり よくわかりません。
     少なくとも高濃度のエタノール(アルコール)の飲用は避けるべきです。



  4. 酢酸の分子構造
     酢酸の分子構造を図9-4に示します。

     酢酸の電荷分布においては、中央部の炭素が+2.67とプラスに強く帯電します。
     右横の酸素は-2.13とマイナスに強く帯電しています。 このため中央部の炭素と右横の酸素は強く引き合い、ここからは結合が切れません。

     エネルギーが加わると再右端の水素のみが分離します。
     水素が分離する際、水素の電子は酸素に奪い取られプラス水素イオンと なります。プラス水素イオンが増加するため、酢酸は酸性を示します。

     酢酸は殺菌作用、でんぷんの分解作用等が期待できるため、ごはんに混ぜて すしめしを作るのに役立ちます。





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