16章:梁の計算
作成2012.10.27
図16-1に示すように水路の中央に計測機を設置して水質を測定する場合に、どのような構造ににべきか?
この課題に対する解答は無限にあり、その中から望ましい方法を選択する必要があります。
- H鋼の梁を使用
H鋼は強度計算に必要な定数が機械工学便覧に記載されており、最も強度計算が容易な例です。欠点はH鋼はmあたりの質量が大きく重いため、運搬と設置工事が大変です。
強度計算結果を以下に示します。
100×50H鋼強度計算表(両端単純支持) |
項目 | 記号(=計算式) | 値 | 単位 |
ヤング率 | E | 205800 | N/mm^2 |
断面2次モーメント | I | 1870000 | mm^4 |
断面係数 | Z | 37500 | mm^3 |
梁の長さ | L | 8000 | mm |
集中荷重 | W | 1000 | N |
等分布荷重 | w | 0.09114 | N/mm |
梁の重量 | G=wL | 729.12 | N |
集中荷重の計算 |
項目 | 記号(=計算式) | 値 | 単位 |
最大モーメント | M1=WL/4 | 2000000 | Nmm |
最大応力 | σ1=M1/Z | 53.3333333333333 | N/mm^2 |
最大歪 | δ1=WL^3/(48EI) | 27.7167143913843 | mm |
等分布荷重の計算 |
項目 | 記号(=計算式) | 値 | 単位 |
最大モーメント | M2=wL^2/8 | 729120 | Nmm |
最大応力 | σ2=M2/Z | 19.4432 | N/mm^2 |
最大歪 | δ2=5wl^3/(384EI) | 0.00157881334351923 | mm |
集中荷重+等分布荷重の計算 |
項目 | 記号(=計算式) | 値 | 単位 |
最大モーメント | M=M1+M2 | 2729120 | Nmm |
最大応力 | σ=σ1+σ2 | 72.7765333333333 | N/mm^2 |
最大歪 | δ=δ1+δ2 | 27.7182932047278 | mm |
EXCEL計算シートは以下で参照できます。
「100×50H鋼強度計算表(両端単純支持)」にいく。
SS400材の耐力は215(N/mm^2)であり強度的には問題が無いことがわかります。最大撓みが27.7mmもありますがこれも問題ないでしょう。
強度計算が容易で、加工も素材を一定の長さに切るだけですので容易でしょう。しかし梁の重量は729N(74.4kg)もありますので、運搬と設置工事は重量物の扱いが必要となります。
- ワイヤー構造
図16-2にワイヤー構造を示します。この場合の計算は手計算でも可能ですがトラスの計算プログラムを使用すると簡単です。
図16-2において、ワイヤー径をΦ5mmとすると、ワイヤーの質量は1.32kgと小さく、運搬、設置は容易となります。
ただし、ワイヤー固定部に負荷がかかるため、固定部の基礎がしっかりしている必要があります。
基本計算条件
項目 | 記号 | 値 | 単位 | 備考 |
節点数 | Jn | 3 | 点 | 最大100点 |
要素数 | En | 2 | 本 | 最大100本 |
外力の加わる節点数 | Ns | 1 | 点 | 最大100点 |
固定端の節点数 | Fixn | 2 | 点 | 最大100点 |
節点座標
節点番号 | X座標(mm) | Y座標(mm) | 支持条件 |
1 | 0 | 0 | XY固定 |
2 | 8000 | 0 | XY固定 |
3 | 4000 | -1500 |
荷重条件
節点番号 | 荷重Wx(N) | 荷重Wy(N) |
3 | 0 | -1000 |
部材条件
部材番号 | 節点Pi | 節点Pj | ヤング率E(N/mm2) | 断面積A(mm2) |
1 | 1 | 3 | 205800 | 19.6349540849362 |
2 | 2 | 3 | 205800 | 19.6349540849362 |
変位計算結果
節点番号 | 変位Δx(mm) | 変位Δy(mm) |
1 | 0 | 0 |
2 | 0 | 0 |
3 | 0 | -4.2875 |
応力・軸力計算結果
部材番号 | 応力σ(N/mm2) | 軸力F(N) |
1 | 72.5238 | 1424.00062421959 |
2 | 72.5238 | 1424.00062421959 |
H鋼では部材質量が7.4kg、変位量が27.7mmに対して、ワイヤー質量は1.32kg、変位量は4.3mmと小さくなります。ただ
し、ワイヤー固定部の基礎がしっかりしている必要があります。
- トラス構造
図16-3に3角トラス構造を示します。この場合トラスの計算プログラムに問題があり、修正が必要になりました。
問題となったのは、両端の2点をXY方向とも完全固定にすると3角形の上辺の部材の変形がゼロとなり、上辺の部材にかかる軸力がゼロとなります。
固定部の基礎が不安定の場合、単純支持条件とすべきです。単純支持条件はこの場合、節点1がXY固定、節点2がY方向のみ固定となります。条件によっては、節点1がXY固定、節点2がX方向のみ固定となる場合もあります。
節点2の固定条件をモード選択できるように計算プログラムの変更が必要となりました。
下記のトラスの計算2.xls(フリーソフト)]をダウンロードしてください。
ダウンロード後は解凍してから使用してください。
トラスの計算2.xls(フリーソフト)]をダウンロードする。
図16-3において、部材径をΦ5mmとして計算を実行します。
基本計算条件
項目 | 記号 | 値 | 単位 | 備考 |
節点数 | Jn | 3 | 点 | 最大100点 |
要素数 | En | 3 | 本 | 最大100本 |
外力の加わる節点数 | Ns | 1 | 点 | 最大100点 |
節点2の固定条件 | Fixn | 2 | モード選択 | 0or1or2 |
節点座標
節点番号 | X座標(mm) | Y座標(mm) | 支持条件 |
1 | 0 | 0 | XY固定 |
2 | 8000 | 0 | モード選択 |
3 | 4000 | -1500 |
荷重条件
節点番号 | 荷重Wx(N) | 荷重Wy(N) |
3 | 0 | -1000 |
部材条件
部材番号 | 節点Pi | 節点Pj | ヤング率E(N/mm2) | 断面積A(mm2) |
1 | 1 | 3 | 205800 | 19.6349540849362 |
2 | 2 | 3 | 205800 | 19.6349540849362 |
3 | 1 | 2 | 205800 | 19.6349540849362 |
変位計算結果
節点番号 | 変位Δx(mm) | 変位Δy(mm) |
1 | 0 | 0 |
2 | -2.6396932576304 | 0 |
3 | -1.3198466288152 | -7.80711466334287 |
応力・軸力計算結果
部材番号 | 応力σ(N/mm2) | 軸力F(N) |
1 | 72.5237562593575 | 1424.00062421959 |
2 | 72.5237562593575 | 1424.00062421959 |
3 | -67.906109052542 | -1333.33333333333 |
節点2がx方向に縮むため変位量も-7.8mmと大きくなります。部材3は1333Nの圧縮軸力をうけますが問題ないでしょうか?
部材3の直径がΦ5mmの鋼材では、圧縮による坐屈に耐えられないことは直感的にもわかると思います。この条件においては、SGP(配管用炭素鋼鋼管)40A(外形48.6mm)以上パイプを使用する必要があります。8mの質量は31.1kgであり、H鋼梁の条件と比較すれば軽くできます。
坐屈応力の強度計算結果を以下に示します。
項目 | 記号(=計算式) | 値 | 単位 |
ヤング率 | E | 205800 | N/mm^2 |
外形 | d1 | 48.6 | mm |
内径 | d2 | 41.6 | mm |
長さ | L | 8000 | mm |
断面2次モーメント | I=π(d1^4-d2^4)/64 | 126842.644157422 | mm^4 |
断面係数 | Z=π(d1^3-d2^3)/32 | 4201.87624718553 | mm^3 |
断面積 | A=π(d1^2-d2^2)/4 | 495.900400369149 | mm^4 |
最小断面2次半径 | K=SQRT(I/A) | 15.9932016807142 | mm |
長柱の細長さ比 | λ=L/k | 500.212537783913 | 無次元 |
両端回転の場合 | n | 1 |
坐屈応力(オイラーの理論公式) | σcr=n(π^2)E/λ^2 | 8.1177555570799 | N/mm^2 |
軸力 | F | 1333 | N |
圧縮応力 | σ=F/A | 2.68803977372818 | N/mm^2 |
安全率 | S=σcr/σ | 3.01995366155649 | 判定OK |
比重 | ρ | 0.00000785 | kg/mm^3 |
部材質量 | G=ρAL | 31.1425451431825 | kg |
EXCEL計算シートは以下で参照できます。
「坐屈強度計算シート)」にいく。
トラスの変位計算結果と応力・軸力計算結果以下のように変化します。
変位計算結果
節点番号 | 変位Δx(mm) | 変位Δy(mm) |
1 | 0 | 0 |
2 | -0.104496483693324 | 0 |
3 | -0.0522482418466619 | -4.42685229809344 |
応力・軸力計算結果
部材番号 | 応力σ(N/mm2) | 軸力F(N) |
1 | 72.5237562593575 | 1424.00062421959 |
2 | 72.5237562593575 | 1424.00062421959 |
3 | -2.68817204301075 | -1333.33333333333 |
トラス構造を採用すると一様断面積の梁構造と比較して、軽量化が可能となります。ただし部材の圧縮による坐屈に注意が必要です。部材の長さが長くなると坐屈しやすいので、部材長さを短くすると坐屈を防げます。
したがって、網の目のように細かいトラス構造は軽量・高剛性の構造が可能となります。(ただし複雑な形状となります。)
17章:片持ち梁の計算に行く。
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