20章:静磁場

    作成2011.03.01
  1. 静磁場の本質
     磁石は地球の南北を知る手段として古くから知られています。
     磁石の原料は自然界には図20-1に示す磁鉄鉱の形で存在します。
     地球内部には酸化鉄が多く存在し、地球全体が磁石となり磁界を形成しているため、磁石を使って南北の方向を知ることができるのだと思います。
     この磁力は、どのような仕組みで発生しているのか?厳密な説明はできませんが、電子のスピン(角運動)によって磁場が発生しているといわれています。
     しかし、一般の物質は電子のスピン方向が正逆うまくバランスしており、磁場は発生しません。
     酸化鉄のように特別の物質で電子のスピン方向のバランスが崩れ、磁場が発生するという説が一般的です。



  2. 磁石に対するクーロンの法則
      静磁場の本質は物理学で解明すべきです。ここでは、静磁場を数学モデルとしてどう扱うか?を検討したいと思います。
     地球の北極にはS極があり、南極にはN極があります。磁石のN極は北極のS極に引かれ、磁石のS極は南極のN極に引かれます。従って、磁石のN極は北極の方向を指します。

     クーロンはねじり天秤の実験によって、静電気の場合と同様に磁極の間に下記の力


     が成立するのを確かめました。静電気の時と同様に(20.1)式を書き直すと

     となります。


  3. 静磁場のポテンシャル
     磁石はN極とS極が必ず同じ大きさでペアーになり単独では存在しません。この性質は電気双極子と同じです。
    電気双極子のポテンシャルは

     に対して、静磁場のポテンシャルは

     となります。 (20.4)式は磁気双極子のポテンシャルです。


  4. 磁場と磁束密度
     磁気においても、電気の場合と同様に磁気力の場を考えることができます。これを磁場といい、その強さをHで表します。
     磁場Hはスカラーポテンシャルφの傾斜として求めることができます。



  5. 磁化
     ケイ素鋼のように、通常は磁力がなくても磁場中で磁石に変化する材料があります。これは通常は電子のスピン方向がランダムでトータルの磁気がゼロの状態から、磁場中で電子のスピン方向がそろってしまい、結果的に磁気を持つためといわれています。
     このような現象を磁化といい、その大きさをMで表します。


  6. 磁束密度
     静電気において、電束密度Dを

     としました。同様に磁束密度Bを

     と定義できます。
     また、静電気において、Dの発散は

     でした。これに対して、磁気では「真磁荷」が存在しないことから

     (20.7)式もマクスウェルの方程式のひとつです。


  7. 磁気双極子と磁化のある場
     磁気双極子と磁化のある場について考えてみたいと思います。

     図20-3におけるポテンシャルは


     (20.8)式の3Dグラフを作成するにあたって、簡単化のため

     とします。
     (20.8)式の計算結果を下記に示します。

     図20-4において、流れはポテンシャルの高い点から低い点に流れます。流れの方向はポテンシャルの等高面に垂直となります。


  8. スカラーの勾配
      具体的にはスカラーの勾配であり、下記の式となります。

     流線を描くにあたって、Z=0とします。
    流線の方向はベクトルAの方向とします。
    描く流線の長さをSとすると

     を満足するようにΔXとΔYを決定します。
    従って

     また、流線のスタートはX=-2とし、Yを変数とします。
     以上の条件で作図プログラムを作成します。





  9. 磁気双極子と磁化のある場演習
     EXCELを用いて、磁気双極子と磁化のある場演習を行い、磁気双極子と磁化のある場のイメージアップを図りましょう!!

  10. ワークブック「ベクトル解析20.xls」のダウンロード
     下記のワークブック「ベクトル解析20.xls」(ベクトル作図プログラム)をダウンロードしてください。

     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
     
    ワークブック「ベクトル解析20.xls」をダウンロードする。


  11. ワークブック「ベクトル解析20.xls」説明
    1. ワークブック「ベクトル解析20.xls」は複素関数機能を使用していません。
    2. 「ベクトル解析20.xls」をダブルクリックで起動します。
         (マクロを有効にして開いてください!!)
    3. シート「操作」はパラメータの設定と操作を行います。
    4. シート「XY平面」はXY平面上の作図を行います。
    5. シート「ポテンシャル」はポテンシャルの3Dグラフを示します。


  12. シート「操作」
    1. X作図倍率 Mx:作図上のXの倍率を設定します。
    2. Y作図倍率 My:作図上のYの倍率を設定します。
    3. Y間隔 dU:作図上のY間隔を設定します。
    4. 計算回数 N:Yの計算回数を設定します。
    5. 線分長さ dS:作図上の線分長さを設定します。

    6. 「作図実行」ボタンを押すと作図を実行します。


  13. 計算・作図結果
     入力条件を下記表に示します。

     

     作図結果を下記に示します。

     図20-5の流れは左から右に向かって流れます。



21章:アンペアーの法則に行く。

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