8章:ベクトルの微分と積分

    作成2011.02.07
  1. ベクトルの微分
     ベクトルも実数と同様に微分が可能です。
     ベクトルAをスカラー変数tに一価連続関数として微分の説明図を図8-1に示します。

     tにおけるベクトルAをA(t)とします。これをP点とします。t+ΔtにおけるベクトルAをA(t+Δt)とします。これをQ点とします。
     また、ΔA=A(t+Δt)-A(t)です。
     ベクトルAの微分は下記式で定義できます。

     図8-1に示すように、dA/dtは曲線の接線となります。
    ベクトルAを基本ベクトルに分解して表示すると下記のようになります。

     (8.2)式において、Ax、Ay、Azはスカラー変数であり、実数の微分がそのまま適用できることがわかります。



  2. 単位接線ベクトル
     図8-1においてΔAの絶対値Δsは下記式となります。

     ベクトルAをΔSで微分すると

     となり、dA/dsは絶対値が1の単位接線ベクトルとなります。

  3. 高次の微分
     ベクトルAの高次の微分も全く同様行うことができます。


  4. ベクトルの微分公式
     ベクトルの微分法については、ベクトルを基本ベクトルに分解し、ijkの方向別のスカラー変数に分解するならば、実数の微分公式が適用できます。
     分解しない場合の微分公式を下記に示します。


  5. (8.7)式の証明
     下記式の展開から明らかです。


  6. (8.8)式の証明
     下記のように式を展開します。


  7. (8.9)式の証明
     下記のように式を展開します。


  8. (8.10)式の証明
     下記のように式を展開します。


     ベクトルの具体的な演算は一般的に基本ベクトルijkの成分に分割し、スカラー変数にして行う必要があります。この場合、実数の公式は適用できますので、ベクトルの微分公式使わなくても微分は可能です。


  9. ベクトルの不定積分
     ベクトルも実数と同様に不定積分ができます。
     もし、下記式が成立する場合

     下記の不定積分が成立します。

     (8.16)式において、Cはtに無関係な定ベクトルです。

  10. ベクトルのベクトルの定積分
     ベクトルも実数と同様に定積分ができます。



  11. 空気抵抗が無い場合の放射物体の運動
     重力の加速度をg、重力の方向をZ軸に-kとすれば、放射体のいちベクトルをrとすれば、

     積分して

     (8.20)式において、V0はt=0の速度ベクトル、r0はt=0における位置ベクトルです。

     (8.20)式をXYZ成分に分解すると

     となります。実際の計算はXYZ成分に分解して行います。



  12. 空気抵抗が無い場合の放射物体の運動演習
     EXCELを用いて、空気抵抗が無い場合の放射物体の運動演習を行い、空気抵抗が無い場合の放射物体の運動のイメージアップを図りましょう!!

  13. ワークブック「ベクトル解析8.xls」のダウンロード
     下記のワークブック「ベクトル解析8.xls」(ベクトル作図プログラム)をダウンロードしてください。

     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
     
    ワークブック「ベクトル解析8.xls」をダウンロードする。


  14. ワークブック「ベクトル解析8.xls」説明
    1. ワークブック「ベクトル解析8.xls」は複素関数機能を使用していません。
    2. 「ベクトル解析8.xls」をダブルクリックで起動します。
         (マクロを有効にして開いてください!!)
    3. シート「操作」はパラメータの設定と操作を行います。
    4. シート「XY平面」はXY平面上の作図を行います。
    5. シート「YZ平面」はYZ平面上の作図を行います。
    6. シート「数値」は計算結果の数値データです。


  15. シート「操作」
    1. 位置作図倍率 Mr:作図上の位置の倍率を設定します。
    2. 速度作図倍率 Mv:作図上の速度の倍率を設定します。
    3. 時間間隔 dt(s):計算時間間隔を設定します。
    4. 計算回数 N:計算回数を設定します。
    5. 重力加速度 g(m/s^2):重力加速度を設定します。
    6. 初期速度 V0(m/s):初期速度のXYZ成分を設定します。
    7. 初期位置 r0(m):初期位置のXYZ成分を設定します。

    8. 「作図実行」ボタンを押すと作図を実行します。


  16. 計算・作図結果
     入力条件を下記表に示します。

     

     作図結果を下記に示します。

     図8-2と図8-3において、ベクトルの始点はXYZの位置座標、ベクトルの方向と長さが速度 ベクトルで表示しています。



9章:空気抵抗がある場合の放射物体の運動に行く。

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