1章:長さと時間の原器

    作成2011.03.26
  1. 長さの原器
     
    メートル原器 - Wikipediaによれば、

     メートル原器(メートルげんき)とは1mの基準として用いられた原器。
     1879年、フランスで白金90%、イリジウム10%の合金で作られた。

     メートル原器は、それ自体の長さではなく原器の両端付近に記されたそれぞれの目盛の距離が摂氏零度の時に1メートルとなるよう設定されている。 パリの国際度量衡局(現在はセーヴルに移転)に保存されている。1885年日本がメートル条約に加入すると、1890年にフランスから「日本国メートル原器」、「日本国キログラム原器」が到着した。中央度量衡器検定所(現・産業技術総合研究所)で保管され、これを日本の長さの基準にした。

     このように1つの基準から、順番に測定値の保証をしていくことをトレーサビリティという。

     しかしあらゆる物質は経時変化を起こすので、1960年の第11回国際度量衡総会でメートル原器を長さの基準とすることをやめ、物理現象による長さの定義に改められた(1650763.73λKr。「ラムダクリプトン」と読み、クリプトン86元素が一定条件下で発する橙色の光の真空中波長のこと。更に1983年には“299 792 458分の1光秒(約3億分の1光秒)の到達距離”と改正)。

     と記載されています。

    (1) 1879年、フランス、白金90%、イリジウム10%の合金メートル原器
     原器としてわかりやすいですが、実際の運用にあたっては多数のサブ原器が必要となり、サブ原器間の誤差の低減が課題になったのではないか?と推定しています。

    (2) 1960年のクリプトン86元素の真空中波長1650763.73λKr
     これを具体的に実施するためには、下記に示すマイケルソン干渉型レーザ干渉計が必要となりますが、何か?技術的に問題があり実用化されなかったのではないか?推定しています。
     技術的問題とは何か?マイケルソン干渉計は非常に振動の影響を受けやすく、僅かな振動で検出器とカウンター回路の応答が間に合わずカウントエラーを起こす可能性があります。

    (3) 1983年には“299 792 458分の1光秒(約3億分の1光秒)の到達距離
     この定義は当時すでに実用化していたドップラー効果型レーザ干渉計(HP社:ヒューレッド・パッカード)を参考にして定められたと推定しています。(ドップラー効果型レーザ干渉計はHP社の特許で独占使用権を持っていましたが、現在は有効期限切れになっています。)
     ドップラー効果型レーザ干渉計の原理については、後で説明することにして、この定義を実践するためには、極めて高い精度で時間を測定する必要があります。
     時間の原器はどうなっているのでしょうか?


  2. 時間の原器
    原子時計 - Wikipediaによれば、
     原理
     原子や分子には、それぞれに決まっている周波数の電磁波を吸収あるいは放射する性質がある(スペクトルにおける吸収線と輝線)ため、元になる水晶振動子から放射された電波よりも高精度な周波数を求めることができる。周波数は時間の逆数であるから、時間を高精度で測定できる。1967年に定められた秒の定義もこの性質を利用している。原子時計は一般的な時計とは異なり本来は「原子周波数標準器」と呼ばれるもので、時刻を表示する仕組みは備えていない。元になる超高精度のクォーツ時計を修正している。

     原子時計を元に作られた正確な時刻情報は標準電波として放送されており、その電波を受信してクォーツ時計の誤差を修正しているのが電波時計である。

    セシウム原子時計
     アンモニアやセシウムの他にルビジウムや水素なども用いられるが、セシウム原子時計の例について述べる。まず炉から放射されたセシウム133の蒸気を、磁場によって超微細準位の異なる2つに分離する。分離されたうち基底状態の原子に水晶振動子を基準として9,192,631,770Hzのマイクロ波を照射し、これによって励起された原子に再び磁場をかけて分離する。励起状態のセシウムの量が多くなるよう周波数を調整し、正確な9,192,631,770Hzのマイクロ波を作り出す。1967年から、国際的な1秒の定義となっている。誤差は1億年に1秒(10の−15乗)程度とされている。もっとも最高精度を実現しているのは1次標準の数台に限られており、多くは少し精度の低い商業的に作られた2次標準を用いている。

     と記載されています。セシウム原子時計を使用するならば、十分精度で時間計測が可能であることがわかります。


  3. セシウム原子物性の検討
     セシウム原子の物性について、少し検討してみたいと思います。
    セシウム - Wikipediaによれば、
     単体の物性 [編集]金色を帯びた銀白色の軟らかい金属で、比重は 1.9、融点は 28.5℃、沸点は 670℃(沸点は異なる実験値あり)。安定な原子価は、+1価。炎色反応は青紫色。 常温、常圧で安定な結晶構造は、体心立方構造 (BCC) 。

    反応性が極めて強く、常温でも空気中で酸化される。粉末は自然発火する。また常温の水とも爆発的に反応して爆発するため、消防法にて危険物指定されている物質である。

     と記載されています。原子量が大きいわりに比重が小さいですね。原子間の結合が弱く、低融点、低沸点の金属のようです。
     次にセシウム原子の電子配置を調べて見ましょう。セシウム原子の電子配置を下記表にしまします。

     表1-1 において、電子殻は、電子の収まる場所のポテンシャルエネルギーを表しています。これは原子の中心からの距離であり、番号が小さいほど中心に近くなります。
     軌道名はポテンシャル+運動エネルギーで分類されたものです。
     方位量子数は、電子のスピンによる運動エネルギーの順位を表しています。
     収容できる電子数は各軌道名毎の収容できる電子数を示しています。
     エネルギー順はポテンシャル+運動エネルギーの大きさの順番です。エネルギー差は順番が小さい方が大きくなります。
     Cs-収納電子数は安定状態におけるセシウムの電子の収納状況です。エネルギーが加わると電子の収納位置に変化が生じます。これを励起状態といいます。
     励起状態の電子の収納位置はさまざまな可能性があり、必ずしも一通りではありません。


  4. 9,192,631,770Hzのマイクロ波の光子エネルギー
     電磁波の光子エネルギーは下記式で計算できます。

     9,192,631,770Hzのマイクロ波の光子エネルギーは(1.1)式と(1.2)式に示すように非常に小さな値となります。

     次に、エネルギー変化に伴う質量変化を計算して見ましょう。

     セシウム1mol当りの質量増加は、下記式で計算すます。

     セシウム1mol当りの質量は0.1329kgであり相対的な質量変化は

     となり、エネルギー変化に伴う質量変化は検知困難な量であることがわかります。


  5. 9,192,631,770Hzのマイクロ波の光子エネルギーによる電子配置変化の推論
     9,192,631,770Hzのマイクロ波の光子エネルギーにより、軌道6sの電子が→軌道4fに移動する。と推論されます。
    (1)軌道6sと軌道4fのエネルギー差が最も小さい。
    (2)軌道4fは電子のスピンエネルギーを持つため、トータルの磁気バランスがくずれて磁気特性を持つ。
    (3)磁気特性の違いを利用して、安定状態と励起状態の原子の分別が可能となる。
     以上が軌道6s→軌道4fの推論の理由です。


  6. 日本標準時間
    情報通信研究機構で日本標準時間が表示されます。

     周波数標準と日本標準時電波法に基づき、周波数標準値を設定し、標準電波を発射し、日本標準時(JST)を通報している。

     NICTが運用する12台のセシウム原子時計の時刻を1日1回平均・合成することによって協定世界時UTC(NICT)を生成し、これを9時間進めたものが日本標準時JSTとなる。なお、この協定世界時 UTC(NICT) は、国際度量衡局 (BIPM) が決定する協定世界時 (UTC)との差が±50ナノ秒以上にならないように決定される。このようにして決定された日本標準時は、標準電波 (JJY) やNTPサーバ、電話回線を通じて供給されている(参考:国立天文台、産業技術総合研究所計量研究所)。

     標準電波は、福島県にあるおおたかどや山標準電波送信所と、佐賀県にあるはがね山標準電波送信所の2か所から発信されている。発信周波数は40kHzおよび60kHz。

     2006年2月7日から、セシウム原子時計に加えて水素メーザー原子時計を使用することなどにより、UTCとの時刻同期精度が±50ナノ秒以内から±10ナノ秒以内に向上した。

     電波時計は標準電波を受信し、正確な時間を表示します。


  7. パソコンの内部時計の設定方法
     パソコンの内部時計を日本標準時間に合わせるには以下の設定をします。
    (1)「スタート」_「コントロールパネル」を選択します。
    (2)アイコン「日付と時刻」をダブルクリックします。
    (3)「いんたーネット時刻」タブをクリックします。
    (4)サーバーに「ntp.jst.mfeed.ad.jp 」を入力します。
    (5)「今すぐ更新」ボタンをおします。
    (6)OKボタンを押して閉じます。

     日本標準時間は十分正確なことが理解できます。




2章:ドップラー効果型レーザ干渉計に行く。

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