3章:カップリング処理

    作成2011.09.24
  1. カップリング処理剤の分子構造
     カップリング処理剤として、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル CAS番号 : 4369-14-6 を用います。
     図3-1にカップリング処理剤の分子構造を示します。
     図3-1において、最下部の分子構造がシランカップリング剤の分子構造と同じ構造をしています。
     上の部分はアクリレート基になっているため、ラジカル系樹脂と強固に結合します。
     この材料は、分子構造が確定しているため、購入先は選択できます。
     少量使用の場合は試薬として購入できます。
    (1)和名 : アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル TCI製品コード : A1597 包装単位25g  東京化成工業

     使用量が多い場合は下記から購入できます。
    (2)製品名 KBM-5103 化学名 3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 信越化学工業
     名称は異なりますが、CAS番号 : 4369-14-6は同じであり、同じ構造をしています。

     特性としては
    ・無色透明な液体です。
    ・分子量が小さく、揮発しやすい。沸点/沸騰範囲: 95℃/0.4kPa 引火点: 123℃
    ・2-プロパノール(極性プロトン性 )にもトルエン( 無極性 )にもアセトン (極性非プロトン性 )にも 良く溶解します。(ほとんどの溶剤に溶解します。)


  2. 表面活性化処理
     カップリング処理はSiウエハ等の被転写基板に行う処理です。
     カップリング処理も離型処理同様に処理前に表面活性化処理が必要です。


  3. カップリング処理方法
     カップリング処理方法としては
    1. ディップ法
       ディップ法を図3-2に示します。
       ディップ法においては、カップリング処理剤を2-プロパノール(極性プロトン性 )、トルエン( 無極性 )等の 溶剤で濃度0.1w%に希釈(処理剤:希釈剤=1:1000)して使用します。
       カップリング処理剤は水分と反応して異物になりやすい性質があり、ディップ法を適用すると基板上に 異物が付着しやすい問題が生じます。
       この原因としては、処理液の汚れ、容器の汚れ、基板保持治具の汚れがあります。 これらの汚れの完全な対策は難しく、容易には異物付着を防止できません。


    2. 大気圧気相法
       大気圧気相法を図3-3に示します。
       カップリング処理剤が揮発しやすい性質を利用します。
       処理液は100%の原液を使用します。
       なべの底に小型容器を置き、原液をいれます。 なべの中の保持治具に被処理基板をセットし、なべのふたをして、 約60℃程度に加熱したホットプレート上にセットします。
       カップリング処理剤は沸騰しませんが、温度の上昇により大気とカップリング処理剤の 混合気体となります。
       これは、水蒸気が25℃の常温でも存在するのと同じ原理です。加熱温度により カップリング処理剤の混合比が変化します。
       約60℃程度で十分処理に必要な濃度に達します。

       カップリング処理剤は水分との反応物は、揮発しにくくなるため処理液中の 異物は付着しなくなります。(蒸留水がきれいになるのと同じ原理です。)
       この方式は、なべと保持治具がきれいなうちは、異物付着に少ない処理が 可能です。
       しかし、連続使用するとなべと保持治具が汚れやすく、長期的な安定性に 不安が残ります。
         

    3. 真空気相法
       真空気相法を図3-4に示します。
       カップリング処理剤が揮発しやすい性質を利用します。
       処理液は100%の原液を使用します。
       容器内を真空にすると、カップリング処理剤が揮発しやすくなり、より安定な処理が可能となります。
       容器内の圧力を400Paまで下げるとカップリング処理剤は95℃で沸騰し、完全に気化します。 気圧をさらに下げるとさらに低い温度で沸騰します。 この場合、濃度は気化させるカップリング処理剤の量で制御します。
       カップリング処理剤は水分との反応物は、揮発しにくくなるため処理液中の 異物は付着しなくなります。(蒸留水がきれいになるのと同じ原理です。)
       真空気相法では、大気圧気相法より容器と保持治具の汚れが少なくなりますが、 まったく汚れないわけではありません。
       装置で使用する処理液は、1種類に制限する必要があります。 数種類の処理液を使用すると、容器と保持治具の汚れ起因の コンタミが発生します。
       

    4. スピンコート法
       スピンコート法を図3-5に示します。
       スピンコート法においては、カップリング処理剤をメタクリル酸エチル(CAS番号 : 97-63-2)で濃度0.1w%に希釈 (処理剤:希釈剤=1:1000)して使用します。
       なぜ?メタクリル酸エチル(CAS番号 : 97-63-2)は、無極性 で水分を溶解性質があり、ラジカル反応基を持つため カップリング処理剤やスピンコートレジストとなじみやすい性質があります。
       カップリング処理剤中の異物は滴下直前のフィルターで除去できます。
       カップリング処理剤は分子量が小さく、粘度が小さいため、孔径20〜30nmの微小孔径フォルターを 使用して、フィルタリングすることも可能です。

       カップリング処理剤を滴下後5000rpmで余分なカップリング処理剤を飛ばします。

       スピンナーカバーの汚れは、異物付着にあまり影響しません。 このため、同じスピンナーを用いて異なる処理液やレジストを使用することが 可能です。
       スピンコート法は管理にしやすさの点で優れています。


     等が考えられます。


  4. カップリング処理膜の安定化
     最後に、110℃〜120℃で2〜3分の加熱処理を行うと脱水縮合反応により、カップリング剤分子の結合は Si原子との共有結合に変化し、 強固に固着します。
     これで、カップリングの処理が完了します。


  5. カップリング処理膜の膜厚測定は可能か?
     カップリング処理剤の分子量は小さく、全面にカップリング処理剤がついたとしても、 うまく膜厚は測定できません。
     カップリング処理膜の膜厚はエリプソメータの測定限界以下であり、測定値は不明確です。 もし、エリプソメータの測定限界以上の膜厚が観測された場合、それは、部分的な塗布ムラの影響です。


  6. カップリング処理膜の品質はどの様に確認するか?
     図3-6に示すような、接着力測定を行います。
    ・基板はSi基板を使用し、カップリング処理を実施します。
    ・次にPETシート、枠、両面テープを使用して図3-6に示すような試験テープを作成します。 セロハンテープ、スコッチテープ、ビニールテープ等では、引っ張り力に耐えられず切れてしまします。
    ・試験テープに試験用のラジカルUV硬化樹脂を滴下し、UV硬化させます。 ここで、試験用のラジカルUV硬化樹脂は厚膜用でないと下側まで硬化しません。
     厚膜用のラジカルUV硬化樹脂には、比較的UV吸収率の小さいラジカル重合開始剤を 使用します。このため、感度は低くなりますが、厚みのあるUV硬化が可能です。 (具体的な調合方法は後で説明します。)
    ・最後に樹脂が剥がれるときの張力を測定します。


     カップリング処理したSi基板とラジカルUV硬化樹脂は強固な共有結合となり、 強固に接着します。
     測定用のテープが切れたり、ラジカルUV硬化樹脂の段差部の応力集中で ラジカルUV硬化樹脂が途中で破壊して、正確に測定できない場合もあります。



  7. カップリング処理の注意点
    ・カップリング処理で付着した異物を除去するには、O2プラズマ処理等が 必要ですが、同時にカップリング処理膜も破壊されます。
    ・カップリング処理で付着した異物はナノインプリント時に確実に欠陥となります。
     いかに、異物付着の少ない、カップリング処理を行うかがポイントです。





4章:トリモチとレプリカに行く。

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