6章:ノーマル厚膜用のスピンコートレジスト

    作成2011.10.03
  1. ノーマル厚膜用ののスピンコートレジスト調合材料の選定
     厚膜用ののスピンコートレジスト調合はさほど難しくはありません。
     下記の条件を満たせば、厚膜用となります。
    ・レジスト粘度を大きくする。
    ・ラジカル重合開始剤の紫外線吸収を適正にして、厚みのあるレジストの下部まで 紫外線が透過するようにする。
     レジスト粘度を大きくするには、(1)希釈剤の希釈率を小さくする、 (2)主剤に粘度の大きいレジストを選定する、(3)粘度の高い希釈剤を選定する。
     選択可能なラジカル重合性樹脂の選択範囲は大幅に広がります。
     しかし、ここでは小変更で対応します。


    1. スピンコートレジスト主剤の選定
       主剤は以下の材料とします。
      ・スチレン型不飽和ポリエステル樹脂
      ・サンドーマ CN-325 ディーエイチ・マテリアル(株)
      ・外観 淡黄色液体 粘度 1200mPa・s(25℃)
      ・用途 木工塗料用ワニス

       以下サンドーマ CN-325をCN-325と略して記載します。

    2. スピンコートレジスト希釈剤の選定
      ・メタクリル酸エチル M0084
       CAS No 80-62-6 で分子構造が特定されています。
       この材料は東京化成工業から試薬として購入することが可能です。
      ・和名 : メタクリル酸エチル
      ・TCI製品コード :M0084
      ・分子量 =114.14
      ・粘度 0.56mPa・s(25℃)
      ・沸点 100℃
       以下メタクリル酸エチル M0084をM0084と略して記載します。


    3. ドライエッチ耐性向上材料
      ・エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート A-BPE-10
       硬化後の弾力性に優れた材料です。
       CAS No 64401-02-1 ですが、分子量までは特定できません。
      ・製品名 : A-BPE-10  新中村化学工業
      ・化学名 エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
      ・外観:淡黄色透明液体
      ・分子量:776
      ・色数:70(APHA)
      ・比重:1.137(25℃)
      ・粘度:550(mPa・s/25℃)
      ・屈折率:1.516
      ・重合禁止剤:100(MEHQppm)

       以下エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート A-BPE-10をA-BPE-10と略して記載します。



    4. 3次元結合力向上材料
       気まぐれですが、分子量の大きい下記の材料に変更してみました。
      ・イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル) T2325
       CAS No 40220-08-4 で分子構造が特定されています。
       この材料は東京化成工業から試薬として購入することが可能です。
      ・和名 : イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)
      ・TCI製品コード :T2325
      ・分子量 =423.37
      ・物理的状態(20℃) 固体  
      ・融点 53℃
       以下イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル) T2325をT2325と略して記載します。

       


    5. 光重合開始剤の選定
       光重合開始剤はIRGACURE 907を使用します。
       この光重合開始剤は固体です。紫外線の透過率と感度バランスがとれています。、中程度の膜厚の スピンコートレジストに適用します。
       CAS No 71868-10-5 で分子構造が特定されています。
       この材料は東京化成工業から試薬として販売されていませんが、シグマ アルドリッチ ジャパン からは試薬として販売されています。(非常に多くの種類の試薬を扱っています。)
      ・和名 : 2-メチル-4′-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン
      ・製品番号 405639-50G
      ・分子量 =279.40
       この分子構造においては、ベンゼン環が1個あり、これが紫外線を吸収し、エネルギーを 得ます。このエネルギーが分子内を伝播し、酸素の2重結合がある不安定部分の結合 を切ります。
       このため、共有結合が切れたラジカルが発生し、ラジカル重合反応を開始させます。

       以下IRGACURE 907をI-907と略して記載します。


  2. ノーマル厚膜用のスピンコートレジストの配合比の決定
     ここまで検討したら、後は直感で配合比を決定します。
     ただし、希釈率は5000rpm-20sスピンコート後、ベーク80℃2分を行った後、膜厚を測定して調整します。
    ・ノーマル厚膜用のスピンコートレジストの配合比 CN-325:A-BPE-10:T2325:M0084:I-907=1:1:1:10:0.3
    ・この配合で、膜厚775nm程度の均一なスピンコート膜を得ることができます。
    ・回転数の設定で変化できる膜厚は僅かです。
    ・大きく膜厚を変える場合は、希釈率を変更する必要があります。
    ・混合後は、200nm程度の孔径のフィルターを使用してのフィルタリングが必要です。
    ・スピンコート時の膜厚は回転時間10s〜20sで安定します。
    ・スピンコート後は、80℃2分のベークを行い、希釈剤を蒸発させる必要があります。
    ・露光時間は僅かに長めとなります。


  3. ノーマル厚膜用のスピンコートレジストの今後
     2層プロセス、3層プロセス検討用レジストです。
     厚膜用のスピンコートレジスト材料の選択の範囲は、広がりますが 本レジスト調合条件は、複数の条件での比較評価をして決めた条件ではありません。 (直感的に1回できめた条件です。)




7章:Si系薄膜用のスピンコートレジストに行く。

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