15章:円板の軸対称曲げ
作成2011.12.20
- 円板の軸対称曲げの基礎方程式
図15-1に円板の軸対称曲げの説明図を示します。
ここでは、座標軸を上方にz、半径方向をr、円周方向をθとします。
軸対称曲げにおいては、z軸を中心に円周方向は均一に変形するものとしています。
曲げの曲率半径の記号は、半径方向rと区別するために、円周方向の曲率半径をρθ
、半径方向の曲率半径をρrとします。
図15-1において。位置rにおける面の法線とz軸とのなす角をψとします。ここで
の関係が成立します。また
であり、sinψ≒ψとするならば
次に半径方向の曲率半径ρrは
が成立します。ここで互いに直交する2方向への曲げにおける曲げモーメントの式を利用します。
(14.22)式、 (14.23)式をMy=Mθ、Mx=Mr、Rx=ρr、Ry=ρθと変数変換をします。次に(15.3)式
と(15.4)式を代入するならば
となります。
- 微小要素の力のバランス
ここで、微小要素の力のバランスを考えます。
図15-2において、圧力Pはz軸の正方向に等分布荷重を与えます。
圧力Pはせん断力Qrの変化を与え、せん断力QrはモーメントMθの変化を生じます。
ここで、垂直方向の力のバランスから
高次の微小項を無視して整理すれば
次にモーメントの釣合いを考えますが、モーメントには方向性がありベクトル表
示して、位置r+drでのθ方向成分のバランスを考えます。
高次の微小項を無視して整理すれば
(15.10)式に(15.5)式と(15.6)式を代入すると
ここで、下記の微分公式を適用するため、(1-ν)≒1の近似を行います。
代数解が得られる微分方程式は限られているのですが、 (15.12)式の形の
微分方程式は代数解を得ることができます。
したがって、 (15.11)式は
ここで(15.8)式を下記のように変形します。
(15.14)式に(15.13)式を代入すると
が得られます。(15.15)式が円板の軸対称曲げの基礎方程式です。 (15.15)式は順次
積分が可能な形をしており代数解を得ることができます。
代数解はc1、c2、c3、c4を定数として
(15.16)式において
c1=せん断力の初期値(集中荷重があるとき有限の値、集中荷重が無いときゼロ)
c2=曲率半径の初期値(リング内径がr=0の場合は特異点のためc2=0)
c3=傾き角度の初期値
c4=変位zの初期値
の定数を決定する必要があります。
- 周辺を固定され等分布荷重を受ける円板
(15.13)式に(15.16)式を代入して整理します。
ゆえに
半径rの全円周のせん断力Qsは
半径rの範囲内の全荷重Wpは
全荷重Wpと全円周のせん断力QsはWp=- Qsが成立する必要があります。従って
次に定数c2ですが、 (15.16)式はc2がゼロ以外の場合、r=0でlogRの値がマイナス
無限大となり計算不能となります。円板の場合はr=0が存在するためc2はゼロ以外の値を取れなくなります。
もし、円板でなくリング板の場合は、c2が有限の値をとることができます。今回は円板を想定しているため
となります。
次に円板の半径がr=aで周辺固定の場合、 r=aで傾きがゼロである必要があります。すなわち
ゆえに
また、 r=aで変位zがゼロである必要があります。すなわち
(15.27)式と(15.26)式から
(15.16)式に定数を代入すると
となります。ここで下記式を代入すると
となります。曲げモーメントは(15.5)式、 (15.6)式に(15.30)式を代入して
曲げ応力はσr=σx、σθ=σyMθ=My、Mr=Mxとして下記式に(15.31)式、
(15.32)式を代入して求めることができます。
すなわち
となります。
- 周辺を固定され中心に集中荷重Wを受ける円板
分布荷重P=0を(15.16)式に代入する
半径rの全円周のせん断力Qsは
集中荷重Wと全円周のせん断力QsはW=- Qsが成立する必要があります。従って
となります。c2は周辺を固定され等分布荷重を受ける円板と同様に
となります。従って(15.35)式は
次に円板の半径がr=aで周辺固定の場合、 r=aで傾きがゼロである必要があります。すなわち
ゆえに
また、 r=aで変位zがゼロである必要があります。すなわち
ゆえに
(15.38)式に定数を代入すると
となります。曲げモーメントは(15.5)式、 (15.6)式に(15.43)式を代入して
曲げ応力はσr=σx、σθ=σyMθ=My、Mr=Mxとして(14.27)式、 (14.28)式に
(15.44)式、 (15.45)式を代入して求めることができます。
- 円板の軸対称曲げの一般解
円板の軸対称曲げの一般解は
として与えられますが、4個の定数を境界条件から決定する必要があります。 4個の定数
はモデルの境界条件にり変わるため、境界条件に応じて決定する必要があります。
4個の定数の決定のための式の変形はけっこう大変ですね!!
- 円板の板厚計算事例
配管用ステンレスパイプ 32A(1-1/4B)TPSスケジュール40(外形Φ42.7 厚さ3.6)SUS304を使用するとします。
・内径 35.5mm
・縦弾性係数 193000 N/mm2
・ポアソン比 0.3
・耐力 206 N/mm2以上
・圧力 31.8 N/mm2
・周辺支持条件 厳密ではありませんが周辺固定支持と仮定します。
・最大応力が耐力 206 N/mm2に達する円板の板厚を求めます。
上記の式においてモーメントはr=aにおいて最大となります。最大モーメントMmaxは
最大応力は下記式より求めることができます。
Zg-Z=H/2とするならば
となり、以外に簡単に求まります。パイプの厚さ3.6mmに対して底板の円板厚さは6.04mmと
約2.4mm厚くする必要があることがわかります。
円板の撓み量は上記の式で与えられ、r=0で最大撓みとなります。
撓み量は圧力の方向に0.0127mm変形することになります。
- EXCELでの表計算
前記の計算は、あらかじめ最大応力の場所と最大撓みの場所を知っている必要
があります。このため、若干トリック的です。
円板の等分布荷重、周辺固定における計算式を整理すると下記のようになります。
(15.51)から(15.55)式を用いたEXCELでの表計算結果を下記表に示します。
上記の表からわかるように最大応力はr方向応力のr=17.75mmで-206N/mm2となり
最大値となります。
また撓み量はr=0mmで0.0127mmの最大値となります。
- ワークブック「円板撓み.xls」のダウンロード
下記のワークブック「円板撓み.xls」をダウンロードできます。
ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
ワークブック「円板撓み.xls」をダウンロードする。
- 15章:円板の軸対称曲げまとめ
円板の軸対称曲げの計算は、弾性平行円板ガイド機構の最適化検討で使用しました。
この時は、基礎方程式の誘導の過程は読み飛ばして、計算結果のみをもとめました。
円板の軸対称曲げは基本的に代数解を求めることができます。しかし、モデル条件が異なる
と境界条件が異なってきます。積分定数決定のための式の展開は意外と面倒です。
面倒な式の展開をさけるため、当時は数値計算法を活用し単純な手順で解を求めました。
数値計算法での欠点はr=0が特異点で、r=0で計算エラーが発生する点です。このため、rの
値に有限の微小値を設定する必要が生じます。
代数解では、r=0での矛盾を回避できます。
16章:コイルバネの話に行く。
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