37章:リサイクルプラントの課題と1550℃燃焼炉の基本構造
作成2012.06.01
理想的なリサイクルプラントは原理的には可能ですが、現実的には多くの課題があります。
- リサイクルプラントの仕様
以下の仕様が理想的です。
- あらゆる廃棄物を分別することなく処理できる。
- 精密に成分別に資源を分けて回収できる。
- 全自動運転が可能。
- メンテナンス不要
- 燃焼エネルギーを無駄なく電力に変換できる。
- 有害物を全く放出しない。
- 二酸化炭素を放出しない。
しかし、実現が無理な仕様もあります。
- 廃棄物の分別
あらゆる廃棄物を分別することなく処理できるのが理想ですが、技術的理由から若干の分別が必要となります。
- 爆薬、爆弾、ダイナマイト等の危険物は処理できません。(燃焼炉が破壊する危険があります。)
- 高圧エアータンクは密閉状態で処理できません。(開放状態にする必要があります。)
- 固形物の外形は燃焼炉の入り口以下である必要があります。
- 固形物、液体、気体は分ける必要があります。(燃焼炉への供給方法が異なります。)
- 液体に関しては以下の分別が必要です。
- 有機溶剤系:油、石油、アセトン、アルコール、トルエン等の有機溶剤および有機溶剤に溶解する物質(ペンキ等)
・有機溶剤系は燃料として利用されます。
- フロン溶剤系:フロン溶剤およびフロン溶剤に溶解する物質
・ フロン溶剤系と有機溶剤系は分離して溶解しないため分ける必要があります。
・燃焼・無害化処理でフッ化カルシウム(ホタル石)として回収されます。
- シリコンオイル系:シリコンオイルおよびシリコンオイルの溶解する物質
・シリコンオイル系はフロン溶剤系および有機溶剤系と分離して溶解しないため分ける必要があります。
- 酸・アルカリ・電解質系:塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム等の水溶液
・酸・アルカリ・電解質系は燃焼処理に適しません。
・ステンレス配管を劣化させます。
・中和処理・電気透析を行います。
- 気体は圧力容器からの供給となります。
・メタン、エタン、プロパン等は燃料となります。
・毒ガス(塩素、フッ素、サリン等)に関しては、個別に扱いを検討する必要があります。
- 1550℃燃焼炉の基本構造
1550℃燃焼炉の基本構造を図37-1に示します。図37-1は燃焼部・高温排ガスの排気口等を省略しています。
- 1550℃耐熱部
1550℃の高温に耐えられる材料は限られており、耐熱セラミックが使用されます。耐熱セラミックは硬く脆い性質があり、大きな構造体は耐震性に問題が生じます。
- SUS配管
構造体の耐震性を向上するため、 SUS配管で耐熱セラミックを補強します。 SUS配管は1550℃の高温に耐えられないため、冷却水で冷却します。冷却水を注
入すると瞬時に水蒸気となり気化熱を奪うためSUS配管は冷却されます。この冷却の目的はSUS配管の温度を耐熱温度以下にするためてあり、積極的な冷却ではありません。
発生した水蒸気は高圧ガスとなり、発電に使用されます。
- 鉄筋コンクリート容器
鉄筋コンクリート容器は中和用の炭酸カルシウムを収納するための密閉容器です。炭酸カルシウムは高温の耐熱セラミックに接しており、高温に加熱されます
。加熱により以下の反応が起こります。
CaCO3 → CaO + CO2
炭酸カルシウムは加熱により、酸化カルシウムと二酸化炭素に変化します。発生した二酸化炭素は炭酸水に変化させ燃焼灰の中和処理に用います。
- 完全燃焼で発生する有害物質中和用水酸化カルシウム水溶液の生成
完全燃焼で発生する有害物質を中和するため、大量の水酸化カルシウム水溶液が必要となります。この作業は、燃焼炉の運転を停止し、設備の点検時に実施します。
燃焼炉の運転停止後は大量の冷却水を注入して炉の温度を下げます。炉の温度が下がったら、大量の水を炭酸カルシウムの容器に注入します。炭酸カルシウムの一
部は酸化カルシウムに変化しており、水と酸化カルシウムは反応して、水酸化カルシウム水溶液に変化します。
- 炭酸カルシウムは減るか?増えるか?
水酸化カルシウム水溶液生成の過程で炭酸カルシウムは減少することになります。燃焼ガスと燃焼灰の中和処理の過程で大量の炭酸カルシウムが生成され回収されます。
廃棄物の中には貝殻や骨等カルシウムを多く含むものがあります。これらのほとんどは、中和処理の過程で炭酸カルシウムに変化します。
結果的にリサイクルプラントでは、炭酸カルシウムが資源として回収されます。
- リサイクルプラントは長期間の連続運転は可能か?
残念ですが、定期的な停止・点検が不可欠です。 リサイクルプラントは複数台設置し順次点検することになります。
38章:集塵技術に行く。
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