38章:集塵技術

    作成2012.06.03
      リサイクルプラントでは、気化した物質が冷却の途中で微細な液体または個体に変化します。微細な液体または個体を効率良く集める必要があります。


  1. フィルター方式の集塵技術
     フィルター方式の集塵技術の原理図を図38-1に示します。以下の特徴があります。
    1. 構造が簡単
    2. 集塵が進むと風量が減少する。(目詰まりが発生します。)
    3. フィルターが使い捨てとなる。
    4. 集塵効率は比較的良い。
    5. 家庭用掃除機の主流
    6. 耐熱性はとぼしく通常常温で使用



  2. 電気集塵方式
     電気集塵方式の原理図を図38-2に示します。コロナ放電により塵埃をマイナスに帯電させ、プラスに帯電した集塵板に吸着します。  以下の特徴があります。
    1. 吸気と排気の圧力差が発生しないため効率が良い。
    2. 目詰まりしない。
    3. 集塵効率が良い。
    4. 高電圧を必要とする。
    5. 大型の集塵装置に使用される。
    6. 耐熱温度は通常400℃以下。



  3. サイクロン方式
     サイクロン方式の原理図を図38-3に示します。以下の特徴があります。
     サイクロンは吸込んだ空気をテーパ面で渦巻き状の下降気流にします。渦の中心では上昇気流が発生します。渦の遠心 力で塵埃を分離します。気流の速度をV、開口部の半径をRとした場合、遠心加速度Aは
        A=V2/R
     として計算できます。
     気流の速度Vを極端に大きくすると空気抵抗が大きくなり、エネルギーロスが大きくなります。
     気流の速度の限界は音速1225km/h(340m/s)ですが、空気抵抗ロスを考慮すると、34m/s程度にすべきです。
     微細な塵埃を分離するには150000G程度の大きな加速度が必要といわれています。風速34m/sで150000Gの加速度が得られる 開口部の半径を計算するとR=0.786mmと小さな開口になります。
     開口部の半径が小さくなると風量が減少します。十分な風量をえるためには、小さなサイクロンを沢山並べる必要があります。
     ダイソンの掃除機は、3段階の集塵と小型サイクロンを沢山並べることにより実用化したようです。
    1. 目詰まりしない。
    2. 通常構造では、微細な塵埃の集塵効率は良くない。
    3. 耐熱構造が実現しやすい。

     リサイクルプラントでは、1550℃もの高温ガスの集塵を行う必要があります。耐熱温度1550℃が実現できる集塵方式はサイクロン方式以外にありません。



  4. リサイクルプラントの集塵構造
     リサイクルプラントの集塵構造を図38-4に示します。
    1. サイクロン構造
       1550℃の高温ガスが吸気口から吸引され、サイクロンのテーパ面にそって渦状の下降気流が発生します。高温ガスはサイクロンのテーパ面で冷却され、気化した 物質が液化または個体化して壁面に付着します。液化または個体化した物質は自重と下降気流の作用で耐熱容器に落下します。
       このサイクロンの目的は高温ガス中の微粒子を強力な遠心加速度で分離することではありません。壁面に付着した物質を落下させるには強力な遠心加速度を必要としません。
       このため、風速Vを極端に大きくしたり、サイクロン開口部の半径を極端に小さくする必要はありません。このため、サイクロンによるエネルギー損失は僅かとなります。

    2. サイクロン壁面
        1550℃の高温に耐えられる材料は限られており、耐熱セラミックが使用されます。耐熱セラミックは硬く脆い性質があり、大きな構造体は耐震性に問題が生じます。

    3. SUS配管
       構造体の耐震性を向上するため、 SUS配管で耐熱セラミックを補強します。 SUS配管は1550℃の高温に耐えられないため、冷却水で冷却します。冷却水を注入す ると瞬時に水蒸気となり気化熱を奪うためSUS配管は冷却されます。この冷却の目的はSUS配管の温度を耐熱温度以下にするためてあり、積極的な冷却ではありません。
       発生した水蒸気は高圧ガスとなり、発電に使用されます。

    4. 鉄筋コンクリート容器
       鉄筋コンクリート容器は中和用の炭酸カルシウムを収納するための密閉容器です。炭酸カルシウムは高温の耐熱セラミックに接しており、高温に加熱されます。加熱に より以下の反応が起こります。
      CaCO3 →  CaO + CO2
      炭酸カルシウムは加熱により、酸化カルシウムと二酸化炭素に変化します。発生した二酸化炭素は炭酸水に変化させ燃焼灰の中和処理に用います。

    5. 完全燃焼で発生する有害物質中和用水酸化カルシウム水溶液の生成
       完全燃焼で発生する有害物質を中和するため、大量の水酸化カルシウム水溶液が必要となります。この作業は、燃焼炉の運転を停止し、設備の点検時に実施します。
       燃焼炉の運転停止後は大量の冷却水を注入して炉の温度を下げます。炉の温度が下がったら、大量の水を炭酸カルシウムの容器に注入します。炭酸カルシウムの一部 は酸化カルシウムに変化しており、水と酸化カルシウムは反応して、水酸化カルシウム水溶液に変化します。

    6. 中和液の生成能力に余力が生じた場合
       中和液の生成能力に余力が生じた場合は炭酸カルシウムの代わりに断熱材(ガラス繊維等)を充填します。こうすると2重の断熱構造となり、エネルギー損失を防止できます。











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