40章:溶解物質の分別
作成2012.06.06
1550℃燃焼炉で溶解し液体に変化する物質は貴重なリサイクル資源となります。
- 溶解物質の比重
1550℃燃焼炉で溶解し液体に変化する物質の一覧を表40-1に示します。
表40-1 1550℃燃焼炉で溶解し液体に変化する物質の一覧
− | − | 密度 | 融点 | 沸点 | 酸化物 | 密度 | 融点 | 沸点 | 水溶性 | 水酸or酸 | 酸性 | 炭酸塩 | 水溶性 |
元素名 | 記号 | g/cm3 | ℃ | ℃ | 化学式 | g/cm3 | ℃ | ℃ | g/L | 化学式 | アルカリ性 | 化学式 | g/L |
ベリリウム | Be | 1.85 | 1287 | 2469 | BeO | 3.02 | 2570 | 3900 | 0.2 | Be(OH)2 | 弱アルカリ | BeCO3 | 0.36 |
ケイ素 | Si | 2.33 | 1414 | 2355 | SiO2 | 2.2 | 1650 | − | 不溶 | − | 中性 | − | − |
アルミニウム | Al | 2.7 | 660 | 2519 | Al2O3 | 4.03 | 2032 | 2977 | 不溶 | Al(OH)3 | 酸・塩基に溶解 | Al2(CO3)3 | 不安定 |
スカンジウム | Sc | 2.99 | 1541 | 2836 | Sc2O3 | 4.5 | 2000 | − | 酸に溶解 | H3O3Sc | ? | Sc2(CO3)3. | ? |
バリウム | Ba | 3.51 | 727 | 1897 | BaO | 5.72 | 1923 | 2000 | 3.48 | Ba(OH)2 | 強アルカリ | BaCO3 | 0.0024 |
ゲルマニウム | Ge | 5.32 | 938 | 2833 | GeO2 | 6.24 | 400 | ? | 不溶 | − | 中性 | − | − |
ガリウム | Ga | 5.91 | 30 | 2403 | Ga2O3 | 6.44 | 1900 | − | 酸に溶解 | Ga(OH)3 | 酸・塩基に溶解 | ? | ? |
鉄 | Fe | 7.87 | 1538 | 2862 | Fe2O3 | 5.24 | 1566(分解) | 分解 | 不溶 | Fe(OH)2 | ? | CFeO3 | ? |
コバルト | Co | 8.9 | 1495 | 2927 | CoO | 6.1 | 1933 | − | 強酸に溶解 | Co(OH)2 | ? | CCoO3 | ? |
銅 | Cu | 8.94 | 1085 | 2562 | CuO | 6.31 | 1201 | 2000 | 酸・塩基に溶解 | Cu(OH)2 | 塩基に溶解 | CuCO3 | 不溶 |
銀 | Ag | 10.49 | 962 | 2162 | Ag2O | 7.14 | 280(分解) | 分解 | 酸・塩基に溶解 | − | − | − | − |
鉛 | Pb | 11.34 | 327 | 1749 | PbO | 9.53 | 886 | | 不溶 | Pb(OH)2 | 弱アルカリ | PbCO3 | 0.0001 |
金 | Au | 19.3 | 1064 | 2856 | Au2O3 | 3.6 | 160(分解) | 分解 | 塩酸硝酸に溶解 | Au(OH)3 | 100℃以下で分解 | − | − |
1550℃燃焼炉で溶解し液体に変化する物質の中で最も比重が大きいのは金であり、続いて鉛、銀、銅、コバルト、鉄となります。
金と銀は酸化物が不安定で高温状態で金属に戻る性質があります。また、これらの金属の中で硫酸に溶解しないのは金のみです。この性質を利用して金と銀を抽出す
るのはたやすいことです。また、鉛と銅は融点の違いを利用して抽出できます。
半導体電子回路は配線に金線を使用しています。またコネクタ等は金メッキされています。素子間配線には多くの銅をもちいています。このため、電子回路機器、
家電製品からは多くの貴重な資源が回収できます。
電子回路機器、家電製品の廃棄物は資源としての価値が高いのですが、現在の家電リサイクル法では、廃棄に費用が発生します。これはリサイクルの仕組みに欠陥があるからです。
- 溶解物湯口の構造
湯口遮断時の溶解物湯口の構造を図40-1に示します。高温に加熱された溶解物は湯口に集まります。
- 溶解物の量測定
湯口には耐熱パイプが設置されており、高圧エアーが絞りを通して供給されます。この時のパイプ内の圧力は液面の高さに比例します。従って圧力を検
知することにより、溶解物の量を測定できます。
- 溶解物遮断構造
溶解物は耐熱板により遮断されますが、湯口との隙間をゼロにはできません。隙間から溶解物がもれだしますが、耐熱板を冷却すると溶解物は個体化するため漏れ出しません。
- 開閉時の溶解物湯口の構造
開閉時の溶解物湯口の構造を図40-1に示します。耐熱板を開閉するには、個体化した溶解物を溶かす必要があります。
このため、耐熱板をバーナーで加熱します。
- 溶解物の成型
図40-3に溶解物の成型の原理を示します。
- 砂型
高温の溶解物を成型する場合、通常砂型を使用します。プラスチック等の成型には通常金型を使用しますが、高温の溶解物の場合金型が溶ける問題が発生します。
耐熱性セラミックの型を使用した場合は、溶解物が個体化した後、型から剥離できなくなります。従って、個体化した溶解物を取り出すには、型を破壊する必要が発生します。砂型
は簡単に破壊でき、再利用できる特徴があります。
砂型は隙間だらけで通常の液体は染込んでしまいますが、溶解物は冷却されると個体になります。砂型の表面温度は低いため、砂型表面で溶解物は個体化して容器状になるためもれません。
- 流し込み
湯口から溶解物を流しこみます。
- 溶解物液面検出
砂型の上部に耐熱パイプを設置します。高圧エアーが絞りを通して供給されます。この時のパイプ内の圧力は液面の高さに比例します。従って圧力を検知することにより、溶解物の
液面を測定できます。
この時、耐熱パイプが冷えると溶解物が個体化して取れなくなるため、バーナーで加熱します。
- 個体化
所定の量に達したら、湯口が閉鎖され、耐熱パイプが退避します。この後、砂型を冷却すると溶解物は個体化します。
ここで、砂型を熱交換器を使って冷却するとエネルギー損失を低減できます。
- 資源の分別
個体化した溶解物は、適当な大きさにスライスして分割します。分割された塊は比重を計測し比重別に分別します。比重の重い部分には高価な金属が多く含まれる可
能性が高くなります。(金が抽出できるかもしれません。)
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