42章:火力発電の仕組み
作成2012.06.10
燃焼によるエネルギーで発電ができます。
- 火力発電の仕組み
火力発電の効率は燃料の違いや技術の進歩とともに年々良くなっており、最近では発電効率(発電端)の平均は40%を超えるまでになっています。
蒸気タービンとガスタービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電(CC:Combined Cycle)や、これを改良したACC(Advanced Combined Cycle)、
これをさらに改良したMACC(More Advanced Combined Cycle)が開発され、さらに高効率の発電が可能になってきました。最先端の発電所は、発電効
率が約60%のものもあります。
図42-1にコンバインドサイクル発電に仕組みを示します。燃焼炉で発生した高温高圧ガスは、ガスタービンに供給され発電機を回します。ガスタービンか
ら排出された燃焼ガスはボイラーに供給され、水蒸気を発生します。高温高圧の水蒸気は蒸気タービンに供給され発電機を回します。
蒸気タービンから排出された水蒸気は、復水器で冷却され水に戻ります。戻された水はポンプでボイラーに供給されます。
ボイラーから出た燃焼ガスは排気浄化器で浄化された後煙突から排気されます。
- 火力発電の課題
- ガスタービンは燃焼ガスの温度を高くした方が効率が上がりますが、ガスタービンの耐熱性が問題となります。ガスタービンに使用される材料は高価な特殊合金が使用されます。
- ガスタービンに使用する燃料は、不純物が少なく純度の高い燃料を使用する必要があります。不純物の多い燃料を使用するとガスタービンのトラブルの原因となります。
- 燃焼ガスの温度が100℃以下となるとエネルギーが利用できなくなります。(排熱として大気中に放出されます。)
- 蒸気タービンからでた水蒸気を水に戻すため冷却が必要です。冷却水は通常海水が用いられ排熱が海水中に放出されます。
多くの火力発電所は海岸付近に建設されます。それは、燃料の輸送と冷却水として海水を用いるためと思われます。火力発電所は津波の被害を受けやすい場所に設置されています。
- 100℃以下のエネルギー利用
蒸気発電で100℃以下のエネルギー利用ができないのは、水の沸点が100℃のためです。沸点の低い液体を使用すれば、 100℃以下のエネルギー利用が可能となります。
- フロン
不燃性で低沸点の液体としては「フロン」があります。ただし、 「フロン」はオゾン層破壊の問題があり、その使用が大幅に規制されています。
- アルカン類
アルカンとは、一般式 CnH2n+2 で表される鎖式飽和炭化水素です。代表的なアルカンの沸点を表42-1に示します。
表42-1 アルカンの沸点
物質名 | 沸点 |
メタン | -182.5℃ |
エタン | -89℃ |
プロパン | -42.1℃ |
ブタン | -0.5℃ |
ペンタン | 36.1℃ |
ヘキサン | 69℃ |
表42-1から発電用低沸点液体としてはペンタンの沸点36.1℃が最適なことがわかります。
- ガス漏れ対策
水蒸気は外部に漏れても安全上の問題が発生しませんが、ペンタンは引火性であり危険です。メタンは都市ガスに使用され、プロパンはLPGとして利
用されていますが、いづれも無臭の引火性ガスであり、ガス漏れ検知のため、エタンチオール(CAS登録番号[75-08-1]、沸点35℃)が添加されています。エタン
チオールはギネスブックで世界一臭い物質として登録された物質で微量でも異臭を放ちます。
また、エタンチオールは特徴的な赤外線吸収特性があるため、定量分析が容易です。ペンタンの危険性はプロパンと同程度と考えることができます。
ペンタンは万が一にも漏れない構造にすべきですが、非常に僅かな確率でガス漏れは発生します。ガス漏れ発生時は速やかな検知と何重もの遮断システムにより
ガスを遮断し、漏れ量を最小にとどめるシステムが不可欠です。
九州電力八丁原発電所(地熱発電)には日本国内初のバイナリー発電施設があり、2006年からペンタンを利用したバイナリー発電を行っています。
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