４７章：燃焼ガスの温度と圧力

    作成2012.06.30
    　ガソリンエンジンの燃焼ガスの温度と圧力に関して検討してみたいと思います。


  1. 検討条件
    　あらゆる条件での検討は大変ですので以下の条件で検討します。
    （１）圧縮比ε＝ｖ1/ｖ2＝12とします。
    （２）供給空気温度　ｔ1＝20℃（T1＝293K)
    （３）供給空気圧力　p1＝5000kp/m2と10000kp/m2の2条件


  2. 燃料混合気体のガス定数と比熱
    　燃料混合気体の圧縮過程での状態変化を計算するにはガス定数と比熱比の値が必要となります。
    （１）ガス定数
    　混合気体の質量比は酸素ガス0.219、窒素ガス0.721、イソオクタン0.0604です。
    　単体のガス定数は酸素ガス26.5（m・kp/ｋｇ・K）、窒素ガス30.26（m・kp/ｋｇ・K）、イソオクタン7.427（m・kp/ｋｇ・K）です。
    質量比で加重平均すると
    　燃料混合気体のガス定数＝28.07 （m・kp/ｋｇ・K）となります。

    （２）比熱
    　イソオクタン蒸気の比熱に関して、明確なデータはありません。液体における比熱2.047J/g・℃（15.6℃）から大まかに推定することになります。
    　燃料混合気体の比熱推定結果を表47-1に示します。

    表47-1　燃料混合気体の比熱推定結果　単位（kcal/kg・deg）
    0 空気 空気 空気 C8H18 C8H18 C8H18 混合ガス 混合ガス 混合ガス
    ℃ cp定圧比熱 cv定容比熱 ｋ比熱比 cp定圧比熱 cv定容比熱 ｋ比熱比 cp定圧比熱 cv定容比熱 ｋ比熱比
    0 0.240 0.172 1.399 0.507 0.489 1.036 0.256 0.191 1.343
    100 0.241 0.172 1.397 0.507 0.489 1.036 0.257 0.192 1.342
    200 0.245 0.176 1.389 0.507 0.489 1.036 0.261 0.195 1.335
    300 0.250 0.181 1.378 0.507 0.489 1.036 0.265 0.200 1.328
    400 0.256 0.187 1.367 0.507 0.489 1.036 0.271 0.205 1.319
    500 0.261 0.193 1.356 0.507 0.489 1.036 0.276 0.211 1.311
    600 0.267 0.198 1.346 0.507 0.489 1.036 0.281 0.216 1.303
    700 0.272 0.203 1.338 0.507 0.489 1.036 0.286 0.220 1.297
    800 0.276 0.207 1.330 0.507 0.489 1.036 0.290 0.224 1.292
    900 0.280 0.211 1.324 0.507 0.489 1.036 0.294 0.228 1.287
    1000 0.283 0.215 1.319 0.507 0.489 1.036 0.297 0.231 1.283
    1100 0.286 0.218 1.315 0.507 0.489 1.036 0.300 0.234 1.280
    1200 0.289 0.220 1.311 0.507 0.489 1.036 0.302 0.236 1.277
    1300 0.291 0.223 1.308 0.507 0.489 1.036 0.304 0.239 1.274
    1400 0.293 0.225 1.305 0.507 0.489 1.036 0.306 0.241 1.272
    1500 0.295 0.227 1.302 0.507 0.489 1.036 0.308 0.243 1.270
    1600 0.297 0.228 1.300 0.507 0.489 1.036 0.310 0.244 1.268
    1700 0.299 0.230 1.298 0.507 0.489 1.036 0.311 0.246 1.266
    1800 0.300 0.231 1.296 0.507 0.489 1.036 0.312 0.247 1.265
    1900 0.301 0.233 1.294 0.507 0.489 1.036 0.314 0.248 1.264
    2000 0.303 0.234 1.293 0.507 0.489 1.036 0.315 0.250 1.262
    2100 0.304 0.235 1.291 0.507 0.489 1.036 0.316 0.251 1.261
    2200 0.305 0.236 1.290 0.507 0.489 1.036 0.317 0.252 1.260
    2300 0.306 0.237 1.289 0.507 0.489 1.036 0.318 0.253 1.259
    2400 0.307 0.238 1.288 0.507 0.489 1.036 0.319 0.254 1.258
    2500 0.308 0.239 1.286 0.507 0.489 1.036 0.320 0.254 1.257
    2600 0.309 0.240 1.286 0.507 0.489 1.036 0.321 0.255 1.257
    2700 0.309 0.241 1.285 0.507 0.489 1.036 0.321 0.256 1.256
    2800 0.310 0.242 1.283 0.507 0.489 1.036 0.322 0.257 1.255
    2900 0.311 0.242 1.283 0.507 0.489 1.036 0.323 0.257 1.255
    3000 0.311 0.243 1.282 0.507 0.489 1.036 0.293 0.228 1.282

    表47-1に示すように比熱は温度で変化します。しかし、比熱一定としたほうが計算が容易となります。燃料混合気体の圧縮過程の温度は0℃〜400℃の間となります。
    　温度は0℃〜400℃の間の平均比熱比は
    　　ｋ＝1.33
    となります。


  3. 圧縮前の比容積
    （１） p1＝5000kp/m2の場合

    （２） p1＝10000kp/m2の場合



  4. 圧縮後の温度と比容積と圧力
    　温度は共通です。

    （１） p1＝5000kp/m2の場合


    （２） p1＝10000kp/m2の場合




  5. 燃焼ガスのガス定数と比熱
    　燃焼によりガスの組成が変化、熱エネルギーが発生します。
    （１）燃焼後のガス組成
    　酸素と窒素のみの理想空気と100％イソオクタンが理想の混合比で燃焼した場合、燃焼後のガス組成は質量比で以下のようになります。
    N2＝0.719
    CO2＝0.192
    H2O＝0.0886

    （２）ガス定数
    　単体のガス定数は窒素ガス30.26（m・kp/ｋｇ・K）、二酸化炭素19.27（m・kp/ｋｇ・K）、水蒸気47.07 （m・kp/ｋｇ・K）です。
    質量比で加重平均すると
    　燃料後気体のガス定数＝29.64 （m・kp/ｋｇ・K）となります。

    （３）燃焼エネルギー
    　燃料混合気体は窒素ガス47mol、酸素ガス12.5mol、イソオクタン1molが燃焼したとします。この時の質量比は
    N2＝0.719
    O2＝0.218
    C8H18＝0.0624
    としました。 C8H18が1kg当たりの燃焼エネルギーは、 10339 （kcal/kg）です。従って、燃料混合気体が1kg当たりの燃焼エネルギーは
    　燃料混合気体が1kg当たりの燃焼エネルギー ＝　645 （kcal/kg）
    となります。

    （４）比熱
    　燃焼ガスの比熱推定結果を表47-2に示します。

    表47-2　燃焼ガスの比熱推定結果　単位（kcal/kg・deg）
    0 N2 N2 CO2 CO2 H2O H2O 燃焼ガス 燃焼ガス 燃焼ガス
    ℃ cp定圧比熱 cv定容比熱 cp定圧比熱 cv定容比熱 cp定圧比熱 cv定容比熱 cp定圧比熱 cv定容比熱 ｋ比熱比
    0 0.249 0.178 0.196 0.151 0.443 0.333 0.256 0.187 1.372
    100 0.249 0.179 0.219 0.174 0.450 0.340 0.261 0.192 1.362
    200 0.251 0.181 0.238 0.193 0.461 0.351 0.268 0.198 1.350
    300 0.256 0.185 0.251 0.206 0.475 0.365 0.274 0.205 1.339
    400 0.261 0.190 0.264 0.219 0.490 0.380 0.282 0.212 1.327
    500 0.267 0.196 0.277 0.232 0.506 0.396 0.290 0.221 1.315
    600 0.273 0.202 0.286 0.241 0.522 0.412 0.297 0.228 1.305
    700 0.278 0.207 0.294 0.249 0.539 0.429 0.304 0.235 1.296
    800 0.283 0.212 0.300 0.255 0.556 0.446 0.310 0.241 1.288
    900 0.287 0.216 0.305 0.260 0.572 0.462 0.316 0.246 1.282
    1000 0.291 0.220 0.310 0.265 0.588 0.477 0.321 0.251 1.276
    1100 0.294 0.223 0.314 0.269 0.602 0.492 0.325 0.256 1.271
    1200 0.297 0.226 0.317 0.272 0.616 0.505 0.329 0.260 1.267
    1300 0.299 0.228 0.320 0.275 0.628 0.518 0.332 0.263 1.264
    1400 0.301 0.231 0.323 0.278 0.639 0.529 0.336 0.266 1.261
    1500 0.303 0.233 0.325 0.280 0.650 0.540 0.338 0.269 1.258
    1600 0.305 0.234 0.327 0.282 0.660 0.550 0.341 0.271 1.256
    1700 0.307 0.236 0.329 0.284 0.669 0.559 0.343 0.274 1.254
    1800 0.308 0.237 0.331 0.286 0.676 0.566 0.345 0.276 1.252
    1900 0.309 0.238 0.332 0.287 0.683 0.573 0.347 0.277 1.250
    2000 0.310 0.240 0.334 0.289 0.690 0.580 0.348 0.279 1.249
    2100 0.311 0.241 0.335 0.290 0.697 0.586 0.350 0.281 1.247
    2200 0.312 0.242 0.336 0.291 0.703 0.593 0.352 0.282 1.246
    2300 0.313 0.242 0.337 0.292 0.708 0.598 0.353 0.283 1.245
    2400 0.314 0.243 0.338 0.293 0.713 0.603 0.354 0.285 1.244
    2500 0.315 0.244 0.339 0.294 0.717 0.607 0.355 0.286 1.243
    2600 0.316 0.245 0.340 0.295 0.722 0.611 0.356 0.287 1.242
    2700 0.316 0.245 0.341 0.296 0.726 0.616 0.357 0.288 1.241
    2800 0.317 0.246 0.342 0.296 0.726 0.616 0.358 0.288 1.241
    2900 0.317 0.246 0.343 0.297 0.726 0.616 0.358 0.289 1.240
    3000 0.318 0.247 0.343 0.298 0.726 0.616 0.359 0.289 1.240


  6. 燃焼後の温度上昇
    　平均定容比熱はcvは400℃〜2800℃の平均をとり、cv＝0.264（kcal/kg・deg）とします。
    　燃焼エネルギーをq、平均定容比熱をcvとした場合、温度上昇tは

    となります。したがって燃焼後の温度は
    T3=677+2442＝3119（K)＝2846（℃）
    となります。


  7. 燃焼後の圧力
    （１） p1＝5000kp/m2の場合

    （２） p1＝10000kp/m2の場合

    (47.10)式から約125気圧の高圧、2800℃の高温に達することがわかります。


  8. 断熱膨張後の温度T4
    　1100℃〜2800℃の平均比熱比ｋ＝1.252となります。
    　断熱膨張後の温度T4は



  9. 断熱膨張後の比容積と圧力 （１） p1＝5000kp/m2の場合


    （２） p1＝10000kp/m2の場合


    となります。排気は573℃の高温になります。排気圧は供給空気圧に依存します。ノーマルエンジンでアクセ ル全開の場合は約2.8気圧となりますがアクセル半開ですと大気圧に近づきます。
    　ターボエンジンの場合は、排気圧が高くなります。








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