6章:オイルダンパの粘性抵抗理論検討

    作成2011.11.01
     粘性流体の理論は難しくて、あまり自信がありませんが、大まかな検討をしてみたいと思います。
  1. 2平板間流れの基礎方程式
     粘度の定義式を微分形で表現すると ・せん断応力=τ
      ・粘度=μ
      ・速度変化量=dU
      ・厚さ変化量=dY
       として
     
       図6-1に粘性流体の力のバランス図を示します。
     図6-1において、流体の流れはX方向とします。また流れの方向を決める壁はX軸とZ軸に平行とします。
     このような条件において、流速Uの変化はY軸方向のみに発生します。また、圧力Pの変化はX軸の方向に生じます。
     ここで、微小立方体ΔXΔYΔZに加わる力のバランスを考えます。
     微小立方体の底面と上面のせん断応力の変化Δτは

       微小立方体の底面と上面流速の変化ΔUは

       τ=Δτ、U=ΔUと置き換えて、 (6.1)式に(6.2)式と(6.3)式に代入します。

       すなわち

       (6.5)式に微小立方体の上面の面積ΔXΔZをかけるとX方向の力が求まります。
     微小立方体の左側と右側の圧力変化ΔPは

       (6.6)式に微小立方体の右側の面積ΔYΔZをかけるとX方向の力が求まります。
     力のバランスから(6.5)式にΔXΔZをかけた値と(6.6)式のΔYΔZをかけた値は等しくなります。
     従って

       すなわち

     となる。 


     
  2. オイルダンパの粘性抵抗を求める式
     図6-2にオイルダンパの変数条件を示します。
     図6-2に示すオイルダンパに右側から荷重Fを加えると左側に圧力Pが発生します。圧力Pにより粘性流体は半径R2とR1の隙間を流動し右側に移動します。これにより、左側の粘性流体が減少し右側が増大するため、ピストンは速度Vで移動します。
     ここで

     とします。 (6.8)式に(6.12)式を代入すると

       となります。 (6.13)式の解は、C1、C2を積分定数として

       となります。ここで、Y=0とY=Hにおいて、粘性流体の流速Uはゼロでる条件を入れて積分定数C1とC2を求めます。

     したがって 

     となります。隙間Hを通過する粘性流体の流量Qは

     (6.18)式の積分を実行すると

     となります。 (6.19)式は粘度μ、半径R、長さL、圧力Pに関しては1次の関係がありますが、隙間Hに関しては3乗の関係があることがわかります。
     隙間Hを変化すると流量Qは急激に変化します。

     図6-2のオイルダンパの変数条件において荷重Fと速度Vの関係式は

     となります。オイルダンパの粘性抵抗Cは

     となります。 (6.22)式において、粘度μと長さLは1次の比例関係が成立することがわかります。


     
  3. オイルダンパの粘性抵抗計算例

    計算条件
    ・シャフト半径:R0=2(mm)
    ・シリンダ内半径:R2=5(mm)
    ・隙間幅:L=4(mm)
    ・粘度:μ=100(mPa・s)
    ・隙間:H=0.01から0.4 (mm)
     として、オイルダンパの粘性抵抗を計算します。
     また、推力F=50Nとして、速度Vを計算します。
     計算結果グラフを図6-3に示します。

     2点間往復運動機構において、推力50Nのエアーシリンダを用いて、速度10mm/sに減速する場合は、シリンダの隙間H=0.05mmに設定すればよいことがわかります。
     また、粘性流体の粘度は100mPa・sとしていますが、1〜数万mPa・s程度の範囲で変更可能ですので、シリンダの隙間Hは0.1mm程度が適正と思われます。

     なお、以上の結果は理論的検討結果であり、実験的に確認されたものではありません。正確な値は実験的に求める必要があります。







7章:加圧によるレジスト流動に行く。

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