1章:熱力学の基本パラメータの記号と単位

    作成2012.06.19
    気体の状態は3個のパラメータ、すなわち圧力、比容積、温度で表されます。

  1. 圧力
    1. 工学単位:工学気圧(ata)
       1ata=1kp/cm2=10000kp/m2  --- (1.1)式
        (1.1)式において、1kpとは質量1kgの物体が1G(9.8m/s2)の重力加速度で生じる力です。

    2. 物理単位:標準気圧(atm)
       物理学での標準気圧は
        1atm=101325Pa=10339kp/m2=1.0339ata --- (1.2)式
      となります。

       圧力計では大気圧をゼロとして、圧力の大きいときプラス、小さいときマイナス(真空圧)と表示してあります。このような圧力をマノメータ圧力(atm)といいます。これに対し て完全真空からの圧力を絶対圧力(ata)といいます。

      圧力の記号として、p(絶対圧力)を使用します。


  2. 比容積
       気体の状態を指定する基礎的な量として2番目にあげなければならないのは、比容積vです。
    1. 工学単位
      たとえば質量G(kg)の容積をV(m3)とすると
          v=V/G (m3/kg)  --- (1.3)式
      です。比容積の逆数が比質量γで
          γ=1/v=V/G (kg/m3)  --- (1.4)式
      です。 (1.4)式から      γv=1  --- (1.5)式
      従って
           V=Gv=G/γ  ---- (1.6)式
           G= γ V=V/v  --- (1.7)式
      の関係が得られます。
    2. 物理単位
       物理学における比容積はモル量G(mol)が用いられます。従って(1.3)式は
          v=V/G (m3/mol)  --- (1.8)式
      となります。(1.4)式は
          γ=1/v=V/G (mol/m3)  --- (1.9)式
      となります。


  3. 温度
     気体の状態を与える第3の基礎的な量は温度です。温度の単位は工学単位と物理単位が一致します。
     日常的に使用する温度t(摂氏)は1気圧における氷の融点が0℃、水の沸点が100℃として定義されています。
     温度には究極の冷たさがありこれを絶対零度といいます。絶対零度を基準とした温度が絶対温度T(ケルビン)であり単位は(°K)で表示します。
     絶対温度T(ケルビン)と日常温度t(摂氏)の関係は
        T=t+273 (°K )  --- (1.10)式
    となります。
    (厳密には絶対零度=-273.15℃ですが、以下絶対零度=-273℃とします。)
    絶対温度を記号T、単位Kと表記します。
    摂氏温度を記号t、単位℃と表記します。
    絶対温度、摂氏温度どちらでも変化しない場合(差分の場合)、単位degと表記します。


  4. エネルギー
     気体にエネルギーを与えると気体の状態が変化します。あるいは、気体の状態が変化するとエネルギーを得ることができます。
     体積Vの気体に与える総エネルギーをQとします。与えられたエネルギーは内部エネルギーUと仕事のエネルギーLに変化し下記の関係式となります。
        Q=U+L  --- (1.11)式
      (1.11)式はエネルギーの単位が一致していないと成立しません。
    1. 通常の工学単位
       通常の工学単位において
      総エネルギーQの単位=kcal
      内部エネルギーUの単位=kcal
      仕事のエネルギーLの単位=mkp
      が使用されます。この場合、エネルギーの単位が異なるため
      単位変換定数A=1/427 ( kcal/ mkp)
      が必要となり、 (1.11)式は
          Q=U+AL  --- (1.12)式
      となります。

    2. 統一工学単位
      総エネルギーQの単位= mkp
      内部エネルギーUの単位= mkp
      仕事のエネルギーLの単位=mkp
      とするならば、 (1.11)式が成立します。以後、統一工学単位と使用します。

    3. 物理単位
      総エネルギーQの単位=J
      内部エネルギーUの単位= J
      仕事のエネルギーLの単位=J
      であり、 (1.11)式が成立します。


  5. 比エネルギー
     比容積の気体に与える総エネルギーをqとします。与えられたエネルギーは比内部エネルギーuと比仕事エネルギーlに変化し下記の関係式となります。
        q=u+l  --- (1.13)式
     比容積と同様に
    1. 統一工学単位
      質量G(kg)の気体において
      比総エネルギー     q=Q/G (mkp /kg)  --- (1.14)式
      比内部エネルギー   u=U/G (mkp /kg)  --- (1.15)式
      比仕事のエネルギー  l=L/G (mkp /kg)  --- (1.16)式
      とします。

    2. 物理単位
      モル量G(mol)の気体において
      比総エネルギー     q=Q/G (J /mol)  --- (1.17)式
      比内部エネルギー   u=U/G (J /mol)  --- (1.18)式
      比仕事のエネルギー  l=L/G (J /mol)  --- (1.19)式
      とします。

       以上が熱力学の基本パラメータの記号と単位です。統一工学単位と物理単位とでは、単位が異なるため値は一致しませんが、計算式は同じとなります。








2章:気体の基礎方程式と熱力学の第1法則に行く。

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