17章:空気圧縮機とポリトロープ過程

    作成2012.07.05

      高圧空気は工業上広く利用されています。
  1. 空気圧縮機
     図17-1に空気圧縮機のpv線図を示します。

    (1)図17-1において、ピストンはB3点からB1点に移動し吸気を行います。吸気は吸気側のチェックバルブは開いて大気圧のまま行われるた め、気体の状態変化はありません。 B1点に対応するpv線図の位置がb=(p1,v1)です。

    (2)吸気の動作が終了すると吸気のチェックバルブは閉じます。ピストンがB1点からB2点に移動すると空気は断熱圧縮されます。この ため、圧力と温度が上昇します。B2点に対応するpv線図の位置がc=(p2,v2)です。

    (3)ピストンがB2点に達すると空気タンクのチェックバルブを開く圧力に達します。ピストンがB2からB3の間は一定圧力で空気を空 気タンクに押し出します。 。B3点に対応するpv線図の位置がdですが、圧力と比容積の変化がありません。

    (4)空気の押出しが完了すると、空気タンクのチェックバルブが閉じ、吸気側のチェックバルブが開きます。


  2. ポリトロープ過程
     空気圧縮機の場合、断熱圧縮を行うと圧縮空気の温度が上昇して効率が悪くなります。シリンダーとピストンを冷却して等温圧縮するの が理想的です。
     しかし、厳密な等温圧縮は困難であり、実際には等温圧縮と断熱圧縮の中間的な変化となります。
     ポリトロープ過程はk=1〜kの中間値として以下の式で定義されます。
     以下は10章の断熱過程の式です。






    (10.19)式、 (10.21)式、 (10.22)式、 (10.24)式、 、 (10.25)式、 (10.27)式においてk=nとして置き換えたのが、ポリ トロープ過程の定義式となります。
      (10.19)式、 (10.21)式、 (10.22)式、 (10.24)式、 (10.25)式、(10.27)式においてkの値は任意の値をとることがで きます。従って、 k=nとして置き換えても成立します。

     この説明は少しトリック的で納得できないかも知れません。一例だけ厳密に証明してみたいと思います。
     ポリトロープ過程を以下の式で定義します。

    (17.1)式から以下の関係が成立します。

    仕事lの定義式は

    (6.3)式に(17.2)式を代入すると

    となり、 (10.24)式と一致します。あとは、 (17.1)式とpv=RTの基礎式で(17.3)式を変形すれば全 ての式が断熱過程の式と一致します。



  3. 空気圧縮機の仕事
     空気圧縮機の仕事は図17-1の断熱過程で計算して、最後のk=nで置き換えるとポリトロープ過程の仕事となります。
     空気圧縮サイクルの仕事は図17-1の面積abcdであたえられます。従って仕事lは

    となります。



    (17.4)式に(17.5)式、 (17.6)式、 (17.7)式を代入すると

    一方

    (17.8)式に(10.25)式を代入すると

    (17.7)式のkをnに置き換えると

    となります。初めの体積が1m3の空気に消費される仕事Lは

    となります。


  4. 空気圧縮機の仕事の計算
     下記の条件で空気圧縮機の仕事の計算します。
    (1)最初の空気の圧力 p1=10000kp/m2
    (2)最初の空気の容積 =1m3
    (3)圧縮後の圧力 p2=20000〜120000kp/m2
    (4)nの値 n=1.0001、1.1、1.2、1.3、1.4  計算結果を表17-1に示します。仕事Lの単位はmkp/m3です。

    表17-1 空気圧縮機の仕事の計算結果(仕事Lの単位mkp/m3 )
    p\n 1.0001 1.1 1.2 1.3 1.4
    20000 6932 7155 7348 7517 7665
    30000 10987 11553 12056 12504 12906
    40000 13864 14774 15595 16337 17010
    50000 16096 17331 18460 19490 20434
    60000 17919 19459 20880 22190 23398
    70000 19461 21286 22985 24563 26027
    80000 20797 22890 24853 26688 28401
    90000 21975 24320 26535 28617 30571
    100000 23029 25613 28068 30388 32574
    110000 23982 26793 29478 32027 34440
    120000 24852 27880 30785 33556 36188

     空気圧縮機の仕事の計算結果グラフを図17-2に示します。

     図17-2からわかるようにnの値が大きくなるに従い圧縮機の仕事が増大します。増加した仕事は空気の温度上昇を 引き起こします。
     また、圧縮後の温度が上昇すると放熱後に圧力が低下する問題が発生します。このため、圧縮機の冷却は十分行う 必要が生じますが、冷却速度は遅いため十分とはなりません。
     十分な冷却速度が得られない場合は、多段圧縮を行い冷却の遅れを補います。


  5. 空気圧縮機のまとめ
    (1)圧縮後の温度が上昇すると仕事量が増大します。
    (2)圧縮後の温度が上昇すると放熱後に圧力が低下する問題が発生します。
    (3)このため、圧縮機の冷却は十分行う必要があります。
    (4)十分な冷却速度が得られない場合は、多段圧縮を行い冷却の遅れを補います。
    (5)圧縮空気には、固形異物、水蒸気、オイル蒸気が含まれます。
    (6)フィルターにより、固形異物は除去できますが、水蒸気、オイル蒸気は除去できません。
    (7)水蒸気、オイル蒸気の無いクリーンな高圧空気を必要な場合は、特別な処理が必要です。








18章:気体の流れによる仕事に行く。

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