22章:タービンとジェットエンジンのサイクル
作成2012.07.11
タービンとジェットエンジンのサイクルは熱力学的には同一です。ここでは、タービンとジェットエンジンの
効率について検討してみたいと思います。
- ガスタービン発電システム例
ガスタービン発電システム例を図22-1に示します。
図22-1において、
(1)空気は圧縮機で圧縮され燃焼室に送られます。
(2)燃焼室に燃料が送り込まれて燃焼します。
(3)燃焼ガスは高温・高圧のガスとなり、タービンを回転します。
(4)タービンの回転エネルギーは、圧縮機と発電機を回転させ、発電します。
(5)高温の排気ガスは蒸気タービンシステムの蒸気を発生させ、発電します。
(6)低温に冷却された排気ガスは排ガス処理装置で無害化されます。
(7)無害化された排気ガスは大気中に排気されます。
- ジェットエンジンシステム例
エンジンシステム例を図22-2に示します。
図22-2において、
(1)空気は圧縮機で圧縮され燃焼室に送られます。
(2)燃焼室に燃料が送り込まれて燃焼します。
(3)燃焼ガスは高温・高圧のガスとなり、タービンを回転します。
(4)タービンの回転エネルギーは、圧縮機を回転させます。
(5)高温・高圧のガスは超音速で噴射され、その反動で飛行しします。
図22-1と図22-2を比較すると、タービンとジェットエンジンは原理的に同じであることがわかります。
図22-2のジェットエンジンは以下の問題があります。
(1)高温・高圧のガスを噴射するため安全上、地上では使用できない。
(2)排ガス処理無しで大気中に燃焼ガスを放出する。(環境破壊のおそれがある。)
(3)ジェットエンジンで超音速飛行を行うと大量の燃料を消費する。
(4)亜音速飛行において、超音速ガス噴射による飛行は効率が良くない。
(5)亜音速飛行において、タービンの回転でプロペラを回転させ、亜音速気流を起こすと飛行効率が向上する。
ジェットエンジンは原理的に超音速飛行を可能としますが、大量の燃料を消費するため経済的ではありません。現在
は、飛行機の経済性が重要となっており、亜音速飛行での燃料効率向上のためのさまざまな工夫が行われています。
- ガスタービンのpv線図
ガスタービンのpv線図を図22-3に示します。
(1)吸気の初期条件はa点(T1,p1v1)です。
(2)圧縮機で断熱圧縮され、b点(T2,p2,v2)に変化します。
(3)燃焼エネルギq1により等圧膨張し、c点(T3,p3,v3)に変化します。
(4)断熱膨張により、d点(T4,p4,v4)に変化します。
(5)排気によりエネルギq2を失いa点に戻ります。
上記のサイクルにおいて、燃焼エネルギをq1、排気エネルギをq2、効率をηとした場合
となります。また、断熱過程の関係式
(10.27)式から、またp1=p4、p2=p3から
従って
また
(22.1)式に(22.3)式と(22.4)式を代入すると
となります。。
- ガスタービンの効率計算結果
ガスタービンの効率は(22.5)式で与えられ圧縮比εのみの関数となります。
比熱比k=1.33とした場合の計算結果グラフを図22-4に示します。
図22-4からガスタービンは圧縮比εを大きくすると効率が向上することがわかります。
しかし実際には、燃焼ガスの運動エネルギを回転エネルギに変換する際の効率があり、図22-4の値よりも小さ
くなります。
火力発電の場合は、高温の排気ガスを利用して蒸気発電を行いますので、効率が向上することになります。実際に
はさまざまなエネルギーロス要因がありますが、最新鋭のガスタービン方式火力発電所の効率は約60%に達しています。
23章:一定圧力における水蒸気の生成に行く。
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