33章:蒸気の断熱過程

    作成2012.07.28

  1. 蒸気の断熱過程
     蒸気の断熱過程は湿り蒸気と過熱蒸気の領域でおこります。
     図33-1に蒸気の断熱過程説明図を示します。
     図33-1において、1点と2点は湿り蒸気または過熱蒸気の領域にあります。
     断熱過程において、1点から2点の間で受取った熱量qはゼロであり、膨張の仕事は内部エネルギー の変化と絶対値が等しく、符号が反対となります。

    となります。



  2. 例題33-1
     乾燥飽和水蒸気が7ataから1ataに断熱膨張する。膨張の仕事を求めよ。

    解答:
     圧力7ata(kp/cm2)飽和蒸気の物性はワークブック「湿り蒸気表.xls 」から
    表33-1 圧力7ata(kp/cm2)飽和蒸気の物性
    沸点 圧力 比容積 比容積 エンタルピ エンタルピ 熱量 内部エネルギ 平均比熱 比熱 エントロピ 総熱量 内部エネルギ 蒸発熱 エントロピ
    摂氏 絶対圧 液体 気体 液体 気体 液体 液体 液体 液体 液体 気体 気体 気体 気体
    t p v’ v’’ i’ i’’ q’ u’ c’m c’ s’ λ’’ u’’ r=i''-i' s’’
    kp/cm2 m3/kg m3/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg・deg kcal/kg・deg kcal/kg・deg kcal/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg・deg
    160 6.302 0.0011021 0.3068 161.30 658.30 161.14 161.14 1.0071 1.036 0.4638 658.14 613.02 497.00 1.6117
    164.1 7.000 0.0011071 0.2784 165.60 659.38 165.42 165.42 1.0078 1.036 0.4737 659.19 613.84 493.77 1.6033
    165 7.146 0.0011082 0.2724 166.50 659.60 166.32 166.31 1.0080 1.036 0.4757 659.42 614.01 493.10 1.6015

    断熱過程では上記表のエントロピs’’=1.6kcal/kg・degが一定で変化します。 圧力1ata(kp/cm2)、エントロピsx=1.6kcal/kg・degの湿 り蒸気の物性はワークブック「湿り蒸気表.xls 」から

    表33-2  圧力1ata(kp/cm2)、エントロピsx=1.6kcal/kg・degの湿り蒸気の物性
    乾き度 比容積 エンタルピ 総熱量 内部エネルギ エントロピ
    vx(m3/kg) ix(kcal/kg) λ’’(kcal/kg) ux(kcal/kg) sx(kcal/kg・deg)
    0.89 1.542136 579.170 579.140 543.22 1.6

    従って膨張の仕事は

    となります。


  3. 例題33-2
     圧力2ata、乾き度x=0.072の湿り水蒸気を断熱圧縮して全部水にする。この場合の圧縮の仕事を求めよ。

    解答:
     圧力2ata、乾き度x=0.072の湿り水蒸気の物性はワークブック「湿り蒸気表.xls 」から
    表33-3 圧力2ata、乾き度x=0.072の湿り水蒸気の物性
    乾き度 比容積 エンタルピ 総熱量 内部エネルギ エントロピ
    vx(m3/kg) ix(kcal/kg) λ’’(kcal/kg) ux(kcal/kg) sx(kcal/kg・deg)
    0.072 0.066963 157.310 157.260 154.23 0.4593

    エントロピs’=0.4593kcal/kg・degを満足する温度は、湿り水蒸気の物性はワークブック「湿り蒸気表.xls 」から

    表33-4 エントロピs’=0.4593kcal/kg・degを湿り水蒸気の物性
    沸点 圧力 比容積 比容積 エンタルピ エンタルピ 熱量 内部エネルギ 平均比熱 比熱 エントロピ 総熱量 内部エネルギ 蒸発熱 エントロピ
    摂氏 絶対圧 液体 気体 液体 気体 液体 液体 液体 液体 液体 気体 気体 気体 気体
    t p v’ v’’ i’ i’’ q’ u’ c’m c’ s’ λ’’ u’’ r=i''-i' s’’
    kp/cm2 m3/kg m3/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg・deg kcal/kg・deg kcal/kg・deg kcal/kg kcal/kg kcal/kg kcal/kg・deg
    155 5.540 0.0010963 0.3464 156.10 656.90 155.96 155.96 1.0062 1.036 0.4518 656.76 611.96 500.80 1.6219
    158.1 6.000 0.0010999 0.3221 159.29 657.76 159.14 159.14 1.0068 1.036 0.4592 657.61 612.61 498.47 1.6156
    160 6.302 0.0011021 0.3068 161.30 658.30 161.14 161.14 1.0071 1.036 0.4638 658.14 613.02 497.00 1.6116

    従って圧縮の仕事は

    となります。








34章:過熱蒸気の断熱的な流れ過程に行く。

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