34章:過熱蒸気の断熱的な流れ過程

    作成2012.07.30

  1. 気体の断熱的な流れ過程
     気体の断熱的な流れ過程は19章で検討しました。


    (19.2)式と(19.6)式は過熱蒸気にもそのまま適用できます。



  2. 円錐ノズルで消費される気体の質量G
     図19-3に円錐ノズルの流れのモデル図を示します。 最初の状態をp1,v1で流速c=0とします。  ノズルの先端の断面積をfとします。先端の状態をp2,v2で流速をcとします。  消費される気体の重量は

    (19.9)式は過熱蒸気にもそのまま適用できます。



  3. 過熱蒸気の断熱的な変化の計算
     図19-3の円錐ノズルにおいて先端の直径がφ10mmとし、初期圧力p1=40000kp/m2、初期温度300℃とした場合
      (19.6)式と(19.9)式を使って、過熱蒸気の断熱的な流れ過程の計算を行うには、エントロピ一定での各圧力におけ るエンタルピと比容積の値を計算する必要があります。
     この計算はワークブック「加熱蒸気表.xls」と「ゴールシーク」の機能を使って計算できますが、多くの単純作業の繰り 返し操作が必要となります。(たぶん面倒な作業でうんざりするでしょう!!)

       このような場合、EXCELのVBAプログラムを利用すると効率的に計算できます。


  4. 加熱蒸気の断熱過程計算のワークブック「加熱蒸気断熱.xls 」のダウンロード
     下記のワークブック「加熱蒸気断熱.xls」をダウンロードしてください。

     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
     
    ワークブック「加熱蒸気断熱.xls 」をダウンロードする。


  5. ワークブック「加熱蒸気断熱.xls 」説明
    1. シート「操作」は計算条件の設定と計算結果の表示を行います。
    2. シート「加熱蒸気s」はエントロピs数表です。
    3. シート「加熱蒸気i」はエンタリピi数表です。
    4. シート「加熱蒸気v」は比容積v数表です。


  6. 過熱蒸気の断熱変化計算結果
     ワークブック「加熱蒸気断熱.xls 」から下記の表を作成します。

    表34-1 過熱蒸気の断熱変化計算結果
    温度 圧力 エントロピ 比容積 エンタルピ
    ata(kp/cm2) kcal/kg・deg m3/kg kcal/kg
    300 4.0 1.8079 0.6676 732.1
    296.3 3.9 1.8079 0.6854 730.4
    292.6 3.8 1.8079 0.7030 728.7
    288.9 3.7 1.8079 0.7203 727.0
    285.2 3.6 1.8079 0.7373 725.2
    281.5 3.5 1.8079 0.7540 723.5
    277.9 3.4 1.8079 0.7705 721.8
    274.3 3.3 1.8079 0.7867 720.0
    270.7 3.2 1.8079 0.8027 718.3
    267.1 3.1 1.8079 0.8183 716.6
    263.5 3.0 1.8079 0.8337 714.9
    258.8 2.9 1.8079 0.8596 712.8
    254.3 2.8 1.8079 0.8851 710.7
    249.8 2.7 1.8079 0.9100 708.6
    245.3 2.6 1.8079 0.9344 706.5
    240.8 2.5 1.8079 0.9582 704.4
    235.4 2.4 1.8079 0.9955 701.9
    230.1 2.3 1.8079 1.0319 699.5
    224.9 2.2 1.8079 1.0673 697.1
    219.6 2.1 1.8079 1.1019 694.7
    214.5 2.0 1.8079 1.1358 692.4
    208.4 1.9 1.8079 1.1843 689.6
    202.3 1.8 1.8079 1.2312 686.8
    195.8 1.7 1.8079 1.2900 683.8
    189.3 1.6 1.8079 1.3469 680.8
    181.9 1.5 1.8079 1.4200 677.4
    174.6 1.4 1.8079 1.4904 674.2
    166.4 1.3 1.8079 1.5855 670.4
    158.4 1.2 1.8079 1.6764 666.7
    149.5 1.1 1.8079 1.8064 662.7
    141.3 1.0 1.8079 1.9325 659.0


  7. 過熱蒸気の断熱的な流れにおける流速c、消費量G、断面径dの計算結果
     表34-1 過熱蒸気の断熱変化計算結果と(19.6)式から流速cが計算できます。さらに(19.9)式から消費量Gを計算します。
     また連続条件から、消費量Gが一定となる断面径dを求めます。計算結果を表34-2に示します。

    表34-2 過熱蒸気の断熱的な流れにおける流速c、消費量G、断面径dの計算結果
    温度 圧力 エントロピ 比容積 エンタルピ 流速c 消費量G 断面径d
    ata(kp/cm2) kcal/kg・deg m3/kg kcal/kg m/s kg/s m
    300 4.0 1.8079 0.6676 732.1 0.0 0.0000
    296.3 3.9 1.8079 0.6854 730.4 119.8 0.0137 0.0170
    292.6 3.8 1.8079 0.7030 728.7 169.5 0.0189 0.0145
    288.9 3.7 1.8079 0.7203 727.0 207.8 0.0227 0.0133
    285.2 3.6 1.8079 0.7373 725.2 240.0 0.0256 0.0125
    281.5 3.5 1.8079 0.7540 723.5 268.5 0.0280 0.0119
    277.9 3.4 1.8079 0.7705 721.8 294.3 0.0300 0.0115
    274.3 3.3 1.8079 0.7867 720.0 317.9 0.0317 0.0112
    270.7 3.2 1.8079 0.8027 718.3 339.8 0.0333 0.0110
    267.1 3.1 1.8079 0.8183 716.6 360.3 0.0346 0.0107
    263.5 3.0 1.8079 0.8337 714.9 379.6 0.0358 0.0106
    258.8 2.9 1.8079 0.8596 712.8 402.7 0.0368 0.0104
    254.3 2.8 1.8079 0.8851 710.7 423.8 0.0376 0.0103
    249.8 2.7 1.8079 0.9100 708.6 443.9 0.0383 0.0102
    245.3 2.6 1.8079 0.9344 706.5 463.3 0.0390 0.0101
    240.8 2.5 1.8079 0.9582 704.4 482.0 0.0395 0.0100
    235.4 2.4 1.8079 0.9955 701.9 502.9 0.0397 0.0100
    230.1 2.3 1.8079 1.0319 699.5 522.7 0.0398 0.0100
    224.9 2.2 1.8079 1.0673 697.1 541.6 0.0399 0.0100
    219.6 2.1 1.8079 1.1019 694.7 559.8 0.0399 0.0100
    214.5 2.0 1.8079 1.1358 692.4 577.0 0.0399 0.0100
    208.4 1.9 1.8079 1.1843 689.6 596.9 0.0396 0.0100
    202.3 1.8 1.8079 1.2312 686.8 615.9 0.0393 0.0101
    195.8 1.7 1.8079 1.2900 683.8 636.2 0.0387 0.0101
    189.3 1.6 1.8079 1.3469 680.8 655.4 0.0382 0.0102
    181.9 1.5 1.8079 1.4200 677.4 676.8 0.0374 0.0103
    174.6 1.4 1.8079 1.4904 674.2 696.8 0.0367 0.0104
    166.4 1.3 1.8079 1.5855 670.4 719.0 0.0356 0.0106
    158.4 1.2 1.8079 1.6764 666.7 740.0 0.0347 0.0107
    149.5 1.1 1.8079 1.8064 662.7 762.5 0.0332 0.0110
    141.3 1.0 1.8079 1.9325 659.0 782.4 0.0318 0.0112

     表34-2から、消費量の最大値は0.0399kg/sであり、このときの圧力は約pcr=2.1ata(kp/cm2)、流速は約ccr=560m/sとなることがわかります。
     また連続条件から、ノズルの断面径は圧力は約pcr=2.1ataの点で最小となり、末広がりの形状となることがわかります。


  8. 理想気体の断熱的な流れにおける臨界圧力pcrと臨界流速ccrの計算
     理想気体の臨界圧力pcrを与える式は

    であり、k=1.4、p1=4ataとすると

    となり、表34-2の計算結果とほぼ一致します。また理想気体の臨界流速を与える式は

    であり、k=1.4、p1=4ata、v1=0.6676m3/kgとすると

     となり、表34-2の計算結果ccr=560m/sと近似的一致します。この結果から、過熱蒸気の断熱的な流れは理想気体の計算式が近似的に適 用可能なことがわかります。








35章:湿り蒸気の断熱的な流れ過程に行く。

トップページに戻る。