41章:水の体積弾性係数

    作成2012.08.10
     熱力学においては、水の圧力による体積変化は小さいとして無視しました。しかし一般機械材料と比較すると水の圧 力による体積変化は大きな値となります。

  1. 材料力学における縦弾性係数
     弾性係数に関する検討の多くは材料力学で検討されています。
     図41-1に縦歪の説明図を示します。図41-1において縦歪εは以下の式で定義されます。

    図41-1において応力σと縦歪εは以下の関係式が成立します。

    (41.2)式におけるEは縦弾性係数(ヤング率)といい実験的に計測されます。



  2. 材料力学における横弾性係数
     図41-2にせん断歪の説明図を示します。図41-2において縦歪γは以下の式で定義されます。

    図41-2においてせん断応力τとせん断歪γは以下の関係式が成立します。

    ((41.4)式におけるGは横弾性係数(せん断横弾性係数)といい実験的に計測されます。



  3. 材料力学における体積弾性係数
     体積歪εvは以下の式で定義されます。

    圧力pと体積歪εvはは以下の関係式が成立します。

    (41.6)式におけるKは体積弾性係数といい実験的に計測されますが、下記式で計算することもできます。

     材料力学において、応力は引っ張りをプラス、圧縮をマイナスと定義していますが、圧力pは圧縮をプラ スと定義することが多く、符号に関して注意が必要です。


  4. 材料力学における横歪とポアソン比
    横歪ε’は以下の式で定義されます。

    (41.8)式のdは図41-1において、応力の方向と垂直な方向の寸法であり、Δdは応力の方向と垂直な方向の寸法変化です。
    ポアソン比νは以下の式で定義されます。

    ポアソン比νは実験的にに計測されますが、下記式で計算することもできます。



  5. 主な金属材料の弾性係数
     主な金属材料の弾性係数を表41-1に示します。

    表41-1 主な金属材料の弾性係数
    項目 密度 縦弾性係数 横弾性係数 体積弾性係数 ポアソン比 降伏 引張 伸び
    単位 g/cm^3 GPa GPa GPa 無次元 MPa MPa
    記号 ρ E G K ν
    工業用鈍鉄 7.9 205 81 146 0.265 98 196 60
    一般構造用圧延鋼材(SS400) 7.9 206 79 175 0.304 240 450 21
    機械構造用中炭素鋼(S45C) 7.8 205 82 137 0.250 727 828 22
    高張力鋼(HT80) 203 73 309 0.390 834 865 26
    熱間金型用工具鋼(SKD6) 7.8 206 82 141 0.256 1550
    低温圧力容器用9%Ni鋼(SL9N590) 193 74 164 0.304 588 760 23
    マルエージング鋼(350級) 8.0 186 71 163 0.310 2403 10
    オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304) 8.0 197 74 194 0.331 205 520 40
    インコロイ800(NCF800) 8.0 196 73 207 0.342 205 520 30
    球状黒鉛鋳鉄(FCD370) 7.1 161 78 57 0.032 230 370 17
    ニッケル 8.9 204 81 141 0.259 58 335 28
    インコネル600(NCF600) 8.4 214 76 387 0.408 245 550 30
    ハステロイX 8.2 197 75 176 0.313 384 775 43
    モネルメタル 8.8 179 66 207 0.356 515 775 10
    7/3黄銅(C2600) 8.5 110 41 116 0.341 280 50
    6/4黄銅(C2801) 8.4 103 38 119 0.355 330 40
    りん青銅(C5212P) 8.8 110 43 83 0.279 600 12
    洋白(C7521P) 8.7 120 47 90 0.277 540 3
    マンガニン(CMW) 8.2 123 46 126 0.337 340-590 10
    工業用アルミニウム(A1085P) 2.7 69 27 52 0.278 15 55 30
    超ジュラルミン(A2024P) 2.8 74 29 55 0.276 323 430 15
    超々ジュラルミン(A7075P) 2.8 72 28 56 0.286 505 573 11
    マグネシウム合金(板)(MP5) 1.8 40 17 21 0.176 160 250 6
    マグネシウム合金(棒)(MB1) 1.8 40 17 21 0.176 140 230 6
    マグネシウム合金鋳物(MC1) 1.8 45 16 80 0.406 70 240 7
    工業用純チタン(C.P.Ti) 4.6 106 45 55 0.178 170 320 27
    チタン6Al-4V合金(60種) 4.4 106 41 85 0.293 920 980 14
    チタン5-2.5合金 118 48 73 0.229 800 860 16


  6. 水の体積弾性係数
     水の体積弾性係数の温度特性を表41-2に示します。

    表41-2 水の体積弾性係数の温度特性(単位GPa)
    温度 ℃ 0 20 40 60 80 100
    体積弾性係数 1.990 2.190 2.290 2.280 2.210 2.090

    水の体積弾性係数の圧力特性(単位×10000kp/cm2)を図41-3に示します。


    金属材料の体積弾性率が50〜150GPaに対して水の体積弾性率は約2GPaと小さいことがわかります。

     弾性率の標準的な単位はPaですが、実用的には以下の単位が使用されます。
    Gpa=1000000000Pa
    Mpa=1000000Pa
    N/mm2=1000000Pa
    kp/cm2=kgf/cm2=kg/cm2=98000Pa
    kp/mm2=kgf/mm2=kg/mm2=9800000Pa
    力の単位の標準はNですが、工学単位ではkp、kgf、kgの表示が用いられます。力の単位としてkgを用いると質量のkg と混同が起こります。
     使用される単位は工学書により異なるため注意が必要です。
    (図43-3はkp/cm2を使用しています。)










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