50章:噴流による推進理論

    作成2012.08.23

  1. プロペラの理論

     図50-1に示すように、流速u0の一様な流体中にプロペラが固定され、後方2-2では、プロペラの回転により流速u2になる とする。この状態は静止流体中をプロペラが左方向にu0の速度で進行し、プロペラ後方の流速がu2-u0の場合と同じである。
     圧力は0-0位置で大気圧であり、プロペラ直前1-1で減少し、プロペラ直後1‘-1’で増加し、2-2位置でふたたび大気圧になる。
     流体がプロペラに作用する力Fは

    (48.13)式において、p1=p2=0、q1=u0、q2=u2となります。したがって

    となります。またプロペラのところにおける流速をu、断面積をAとすると

    となります。推力Fプロペラ前後での圧力差の条件を満足する必要があります。

    またベルヌーイの式を満足する必要があります。

    (45.16)式を0-0と1-1間と1‘-1’と2-2間に適用すると


    となります。 (50.2)式、 (50.3)式、 (50.4)式、 (50.5)式の条件式から

    (50.6)式の関係式を得ることができます。
     単位時間当たりのエネルギーすなわち有効仕事率Peは推力Fの方向を考慮して

    (50.7)式に(50.1)式を代入すると

    となります。また速度u0をu2に加速するに要する仕事率Piは

    となります。したがってプロペラの理論効率ηは

    となり、u2-u0を小さくすると効率が向上することがわかります。


  2. 例題50-1
     気圧100kPa、温度20℃、相対湿度50%の空気の比質量は1.183kg/m3となります。この空中を毎時400km/h で飛んでいる航空機において、直径2.1mのプロペラ1基より放出される空気の流量は465m3/sである。
     この時のプロペラの推力、動力、効率を求めよ。

    解答
     飛行速度は

    プロペラにおける流速uは

    プロペラ後方の速度u2は(50.6)式から

    推力は(50.1)式から

    (50.14)式のマイナスは推力が流れと反対方向を意味します。有効動力は(50.7)式から

    となります。効率は(50.10)式から

    となります。


  3. ジェットの理論

    図50-2にターボジェット略図を示します。入口から吸込まれた空気を圧縮機で圧縮し、燃焼室でこれに燃料 を混入して燃焼させ、高温高圧となったガスを高速ジェットとして噴出させる。なおこのガスは途中でガス タービンを回し圧縮機を駆動する役目も果たします。
     高温にて噴出されるガスが本体を押し出す力Fはプロペラ推力と同様に下記式となります。

    理論効率もプロペラ推力と同様に下記式となります。

    プロペラ推力と同様に、u2-u0を小さくすると効率が向上します。


  4. 例題50-2
     毎時580km/hの速度で飛んでいるジェット機が、高熱のガスを460m/sの速度で直径2mの吐き出し口から噴出し ている。高熱のガスは649℃、圧力1.033kg/cm2でガス定数R=29.27(m・kp/kg・K)とする。
     ジェット機の推力を求めよ。

    解答
     熱力学の基礎方程式から高熱のガスの比質量ρは

    となります。また流量Qは

    です。飛行速度uは

    したがって推力Fは

    となります。マイナスは推力Fが流れと逆方向を意味します。効率は(50.10)式から

    となります。


  5. ロケットの理論

     図50-3にロケット略図を示します。ロケットの動力は本体内の推進剤のみにより、大気 中からは空気を取らない構造です。推力Fは

    (50.1)式において、u0=0となります。したがって

    単位時間当たりのエネルギーすなわち有効仕事率Peは推力Fの方向を考慮して

    (50.7)式に(50.22)式を代入すると

    となります。また速度をu2-u0に加速するに要する仕事率Piは

    となります。したがってロケットの理論効率ηは

    となり、u2-u0を小さくすると効率が向上することがわかります。また推進剤消費量をWとすると

    であり、推力Fは

    となります。


  6. 例題50-3
     ロケットの推進剤消費量は125kg/s、噴射ガスの速度は2350m/sであった。ロケットの推力を求めよ。

    解答
      (50.27)式から

    となります。











51章:運動量モーメントの法則に行く。

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