55章:円管の断面積変化による損失

    作成2012.09.03
     管路の断面積の大きさが変化する場合、エネルギー損失を生じ、これが圧力損失となって現れます。

  1. 急拡大の場合


     管の断面積がA1より、A2に急拡大する場合、流れの主流は拡大管で最初壁面より遊離して、ある程度下流に行っ てから、管壁に接します。
     この拡大管の最初の所では、噴流が周りの流体を乱して渦を作り損失を生じます。
     図55-1のようにA1なる1の部分と、断面積A2となる拡大管で主流が壁面と再び接する2の部分において平均 流速をq1,q2;圧力をp1,p2とします。
     圧力損失Δpを考慮したエネルギー方程式は

    で与えられます。 (46.2)式を変形すると

    となります。次に1-2の流体について運動量の法則を適用します。

    (48.13)式において管が流体から受ける力Fはx点の断面(A2-A1)に作用します。x点の圧力をpx=p1とすると

    となります。また


    の関係があります。 (48.13)式に(55.2)式、 (48.5)式、 (48.6)式を代入して整理すると

    となります。また

    (55.3)式に(55.4)式を代入すると

    (55.1)式において位置ポテンシャルy1-y2=0となります。 (55.1)式に(55.5)式を代入すると

     となります。 (55.6)式はpx=p1と仮定しているため、実験値とは厳密には一致しませ ん。実験定数ξまたはζを使用して次のように変形します。

    (55.7)式においてζを損失係数といいます。


  2. 緩やかな拡大の場合
     流れの進む方向に管の断面積が緩やかに拡大する場合は壁にそって流れるが、大きくなると壁から離れ渦を生じます。
     実験式は(55.7)式を用いて、実験定数ξまたはζを求めます。

     実験定数ξのグラフを図55-2に示します。

     図55-2において角度θ=0度は拡大しない場合であり、θ=180度が急拡大に相当します。これから、 θ=180度の急拡 大においては、 ξ=1となることがわかります。


  3. 急縮小の場合


     大きな断面の管から急に小さな断面の管に、流体が流れる場合には、流れは先でさらに縮小し、しかる後、再び広がり、 管いっぱいになって流れてゆく。
     この場合の損失を求めるため図55-3に示すように、1、x、2の位置における圧力をp1、px、p2;流速をq1、qx、q2; 断面積をA1、Ax、A2とします。
     断面A1から断面Axにかけては流れは収縮するが、ここでは圧力エネルギーが速度エネルギーに変わるところで、 損失は小さく無視できます。
     次に断面AxからA2までは、流れが広がるところで、ここで生ずる損失は無視できません。(55.7)式と同様に

     (55.8)式が急縮小の場合の実験式となります。A2/Axまたはζの値は実験的に求めることになります。
     表55-1に急縮小の場合の損失係数の値を示します。

    表55-1 急縮小の場合の損失係数
    A2/A1 0.000 0.010 0.100 0.200 0.400 0.600 0.800 1.000
    A2/Ax 1.707 1.670 1.610 1.610 1.540 1.430 1.300 1.000
    ζ 0.500 0.449 0.372 0.372 0.292 0.185 0.090 0.000

    表55-1の値は管の形状・取付け方で変化します。これを図55-4に示します。




  4. 例題55-1
     内径300mmの円管と450mmの円管が直接連結されている。小管より大間に0.23m3/sの水を通す。連結部の 圧力損失は何Paか?

    解答
     図55-2からθ=180度の場合

    また


    比質量ρ=1000kg/m3とし、(55.7)式から

    となります。


  5. 例題55-2
     図55-5のように内径4mmの円管に内径0.4mmのノズルを取付けて、これより油(比質量ρ=900kg/m3)を毎分 680cm3/minの割合で噴出させる。この急縮小部分の圧力損失は何Paか?

    解答
     ノズルにおける流速は

    面積比は

    表55-1 急縮小の場合の損失係数から

    (55.8)式から

    となります。












56章:曲管による損失に行く。

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