65章:エアーベアリングパッドの最適化検討
作成2012.09.17
- 2平面間流れの基礎方程式
図65-1に示すエアーベアリングパッドの構造において、供給圧力p0はオリフィスを通過することによりp1に変化
し、隙間h1とh2を通って大気(p2)に放出されます。
まず、r=0からr=r1、隙間h1における2平面間流れの基礎方程式を考えます。
2平面間流れの基礎方程式は
(65.1)式において、pは圧力、xは流れの方向の距離、μは粘性係数、qは流速、yは隙間方向距離です。ここで
とするならば
となります。(65.3)式の解は
となります。ここで、y=0とy=hにおいて、粘性流体の流速Uはゼロである条件を入れて積分定数C1とC2を求めます。
したがって
となります。半径rでの隙間hを通過する粘性流体の流量Qは
(65.9)式の積分を実行すると
(65.10)式を変形して
h=h1として、 (65.11)式をr0からr1まで積分すると
同様にh=h2として、 (65.11)式をr1からr2まで積分すると
となります。
- オリフィスによる圧力低下
オリフィスの実験式は
で与えられます。εは補正係数でありε=0.9、αは流量係数でありα=0.6、p1=p0
、p2=p1とするならば(58.10)式は下記のようになります。
- エアーベアリングパッドの特性式の誘導
大気圧p2=0として、p1-p1’=0とするならば
(65.15)式に(65.14)式を代入すると
(65.16)式は以下のように変形できます。
エアベアリングパッドの浮上力Fは
エアベアリングパッドの剛性Sは
となります。
- 計算事例
以下の条件で計算します。
比容積:v=8.63E-01(m3/kg)
比質量:ρ = 1.16E+00 ( kg/m3)
粘性係数:μ = 1.80E-05 ( Pa・s)
動粘性係数:ν = 1.55E-05 (m2/s)
パッド内半径:r1 = 7.00E-02 ( m)
パッド外半径:r2 = 8.00E-02 ( m)
供給圧力:p0 = 5.00E+05 ( Pa)
また、オリフィス半径r0は0.1mmと0.2mmで計算します。
圧力変化の計算結果を図65-2に示します。
図65-2からオリフィス半径r0=0.1mmにおいては、浮上量が約5μmで急激に圧力p1が変化することがわかります。
剛性変化の計算結果を図65-3に示します。
図65-3から、オリフィス半径r0=0.1mmにおいては、浮上量が約5μmで剛性Sが最大となることがわか
ります。この時の剛性は1.5E+09(N/m)であり、浮上量1μmの変化に対して、浮上力が1500N変化します。
このことから、最適設計されたエアーベアリングは十分な剛性を持つことがわかります。
- 空気室での圧力損失
(65.12)式と(65.13)式を加算すると
となります。したがって
であれば、空気室での圧力損失は無視できると考えるべきです。
計算事例の値を代入すると
となります。従って浮上量が5μmの場合
となります。
- 流体のまとめ
流体は身近な物質ですが、流れは複雑であり多くの場合理論解を求めることが困難です。しかし、実用的には重
要であり多くの実験がおこなわれています。実験結果の一部は実験式と実験データの形で公開されていますので
、実験式と実験データを活用することが重要となります。
理論的には鮮やかさにかけますが、実験式と実験データの活用はさほど難しくはありません。
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