16章:変圧器と電力計

    作成2013.02.14

  1. 変圧器
     交流の便利な点は電圧を上げたり下げたりすることが簡単にできる点です。
     いま図16-1に示すように、1つの閉磁路鉄心に2つの巻線を設け、一方を電源につなぐ。その一方を一次巻線、他方を二次巻線といいます。
     すると電流が流入し、鉄心に磁束を貫かせ、磁束が変化するため巻線に起電力を誘起します。流入電流を励起電流といいます。磁束を

    とするならば、誘起される電圧は

     となります。二次巻線に負荷をつなぐと、負荷電流が流れてΦmを減少しようとするので、一次巻線にはちょうどこれの起磁力を打ち消すだけの一次負荷電流が流入してくれるので、負荷電圧(二次端子電圧)はほぼ一定に保たれ、高電圧電力が低電圧電力に変えられる。
     (16.2)式と(16.3)式から

    (16.4)式の関係が容易に導かれます。電流についても

    の関係が成立します。

     この装置を変圧器(トランス)というが、一次と二次の巻線は完全に絶縁されるため、一次が高電圧でも二次側は安心して使用できます。また可動部がないためメンテナンス不要です。
     
     変圧器の鉄心にはたえず変化する磁束が貫くため、たえずヒステリシス損を発生します。したがって鉄心にはヒステリシス損が少ない珪素鋼が用いられます。
     もうひとつ鉄も導体であり変化する磁束を切って起電力を誘起し、鉄心内部に電流が流れます。その流れる形が図16-2に示すように渦巻きになります。

     これは渦電流と呼ばれ、渦電流損を生じます。この起電力は小さくできないため、材料に電気抵抗の大きいものを選ぶほかに、鉄心を厚さ0.35mm程度の薄板にして渦電流の通路を細長くします。  このヒステリシス損と渦電流損を合わせて鉄損といいます。  これ以外に巻線の抵抗損があり、これを銅損といいます。  変圧器の損失は鉄損と銅損を合わせて小型で6%、大型で1%程度で、鉄損と銅損の割合は1対2、ヒステリシス損と渦電流損の割合は4対1程度となります。

  2. 積算電力計
     電気料金は基本料金と使用電力量の料金の合計となっています。使用電力量は図1 6-3に示す積算電力計で測定されます。

     図16-3において、Pなる電圧コイルは高抵抗rが直列に接続され、電圧に比例した磁界を発生します。Cなる電流コイルは負荷電流に比例した磁界を発生しますが、磁極が2つあり互いに逆方向の磁界を発生します。
     磁界は回転円板に渦電流を発生しますが、互いに逆方向の渦電流は半径方向の電流となります。P電圧コイルによる磁界とC電流コイルによる半径方向電流の作用により、円板には回転力が発生します。
     また、別の位置には固定磁石Mがあり、円板が回転すると粘性抵抗が発生します。円板の回転力と粘性抵抗がバランスした回転速度で円板は回転します。
     円板は回転計を回して回転数をカウントします。そして、トータルの回転数が積算電力量となります。







17章:三相交流に行く。

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