5章:磁力線と磁気誘導

    作成2012.11.27

  1. 磁力線
     磁極の上のガラス板をのせ、その上に鉄粉をまき散らして静かにたたくと、鉄粉が並んで磁界の状態をみることができます。
     磁力線には以下の性質があります。
    (1)磁力線はゴムひものようにできるだけ短くなろうとする。
    (2)磁力線は相互に反発して遠ざかろうとする。
    (3)磁力線の接線の方向が磁界の方向を示す。
    (4)磁力線と直角に単位面積を考えると、それを貫く数(磁力線密度)が磁界の強さを示す。
    (5)磁界中に小磁計(コンパス)を磁力線と一致する方向で停止する。
     上記の中で重要な関係は(4)であり磁束密度の単位をTとすると

    の関係が成立します。


  2. 磁気双極子
     磁気双極子とは、涌点と吸点がそれぞれN極とS極に対応し、N極とS極荷の距離を無限小としたモデルのことです。

     図5-1における磁気ポテンシャル(磁位)は

    ここで

    とするならば、(5.2)式は下記のように変形できます。

     (5.4)式において、ΔXが無限小であっても、磁荷Mが無限大であれば、M ΔXは有限の値となります。
     もともと、磁荷Mの体積は無限小として静磁場ポテンシャルは定義しています。数学的モデルですからこのような定義が可能です。(実際は、磁荷Mの大きさもΔXの値も有限のはずです。)
     m= MΔXとするならば

    (5.5)式のmを磁気双極子のモーメントといいます。 mはXの方向だけでなく任意の方向をとることができる ためベクトルとして扱われます。
      (5.5)式の一般形はRを位置ベクトルとして下記のようになります。




  3. 棒磁石の磁気ポテンシャル(磁位)の計算
     棒磁石の磁気ポテンシャル(磁位)は(5.5)式で計算できます。ここでは、簡単のため定数項は1とし、磁気双極子が10個X方向に0.1間隔で配置されたとします。
    計算条件は
    項目記号
    分割数N40
    分割刻み0.1
    加算1個数N110
    加算1個数刻みD10.1
    加算1オフセットO10
    とした場合、計算結果グラフは、図5-2に示すようになります。

     図5-2において、赤がプラスでN極、青はマイマスでS極になります。磁気双極子を直線的に配置すると両端にスカラーポテンシャルの最大と最小が現れます。
     スカラーポテンシャルの勾配が磁界であり、極の近傍で磁界が強くなることがわかります。またスカラーポテンシャルの等高線の法線方向が磁界の方向となります。
     磁界の方向をつないだ線が磁力線となります。従って、カラーポテンシャルから法線を計算しつなぐことによって磁力線を描くことも可能ですが、結構面倒な作業となります。

     計算条件変更は下記の専用ソフトを使用すると便利です。
     下記の[図5-2専用ソフト]をダウンロードしてください。
     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
    [スカラポテンシャル1 ]をダウンロードする。


  4. 磁気双極子のベクトルポテンシャル
     数学手法的な問題なのですが、ベクトルポテンシャルを使用すると磁力線を比較的容易に描くことができます。
    磁気双極子のベクトルポテンシャルのZ方向値は

    で与えられます。  (5.7)式の一般形はRを位置ベクトルとして下記のようになります。



  5. 棒磁石の磁気ベクトルポテンシャルの計算
     棒磁石の磁気ベクトルポテンシャルは(5.7)式で計算できます。ここでは、簡単のため定数項は1とし、 磁気双極子が10個X方向に0.1間隔で配置されたとします。
    計算条件は
    項目記号
    分割数N40
    分割刻み0.1
    加算1個数N110
    加算1個数刻みD10.1
    加算1オフセットO10
    とした場合、計算結果グラフは、図5-2に示すようになります。

     図5-3において、赤は正方向回転量、青は逆方向回転量を意味します。この図において、等高線が磁力線に対応します。磁力線密度は磁界の強さに比例します。

     計算条件変更は下記の専用ソフトを使用すると便利です。
     下記の[図5-3専用ソフト]をダウンロードしてください。
     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
      [ベクトルポテンシャル1 ]をダウンロードする。


  6. スカラポテンシャル計算プログラムリスト
     スカラポテンシャル計算の主要部分は以下のようになります。
    '初期化
    For i = 0 To N
    For j = 0 To N
    PH(i, j) = 0
    Next j
    Next i
    'スカラポテンシャル計算
    For k = 0 To N1 - 1
    DX = (k - N1 / 2) * D1 + O1
    For i = 0 To N
    X = (i - N / 2) * H
    For j = 0 To N
    Y = (j - N / 2) * H
    C = (X - DX) ^ 2 + Y ^ 2
    If C <> 0 Then
    PH(i, j) = PH(i, j) + (X - DX) / C ^ 1.5
    End If
    Next j
    Next i
    Next k


  7. ベクトルポテンシャル計算プログラムリスト
     ベクトルポテンシャル計算の主要部分は以下のようになります。
    '初期化
    For i = 0 To N
    For j = 0 To N
    PH(i, j) = 0
    Next j
    Next i
    'ベクトルポテンシャル計算
    For k = 0 To N1 - 1
    DX = (k - N1 / 2) * D1 + O1
    For i = 0 To N
    X = (i - N / 2) * H
    For j = 0 To N
    Y = (j - N / 2) * H
    C = (X - DX) ^ 2 + Y ^ 2
    If C <> 0 Then
    PH(i, j) = PH(i, j) + Y / C ^ 1.5
    End If
    Next j
    Next i
    Next k

     スカラポテンシャルとベクトルポテンシャル計算の相違点は1行のみです。
     プログラム的には非常に簡単な変更で磁力線のグラフが作成できます。


  8. 磁気誘導
     鉄片に磁石を近づけると、ある点から急に鉄片が近づいてくる。その際調べてみるとこの現象はN極でもS極でも全く同様で、N極を近づけたときは、N極に近いところにS極、遠いところにN極を生じ、鉄片が磁石になっていること示します。
     このように、磁石を鉄片に近づけただけで、鉄片が磁石になることを磁気誘導といいます。

     鉄粉でこの状態を確認すると磁力線が鉄片に吸込まれており、これは鉄片が磁石となる結果鉄片から磁力線がでて主磁石の生じる磁力線と打ち消される結果と考えればよい。


  9. 磁気誘導の磁気ポテンシャル(磁位)の計算
    計算条件は以下とします。
    項目記号
    分割数N40
    分割刻み0.1
    加算1個数N110
    加算1個数刻みD10.1
    加算1オフセットO10
    加算2個数N24
    加算2個数刻みD20.1
    加算2オフセットO21
    とした場合、計算結果グラフは、図5-4に示すようになります。

    図5-4は主磁石のN極のすぐそばに鉄片のS極が生じ、遠い方にN極が生じることを示しています。

     計算条件変更は下記の専用ソフトを使用すると便利です。
     下記の[図5-4専用ソフト]をダウンロードしてください。
     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
      [スカラポテンシャル2 ]をダウンロードする。


  10. 磁気誘導のベクトルポテンシャルの計算の計算
    計算条件は以下とします。
    項目記号
    分割数N40
    分割刻み0.1
    加算1個数N110
    加算1個数刻みD10.1
    加算1オフセットO10
    加算2個数N24
    加算2個数刻みD20.1
    加算2オフセットO21
    とした場合、計算結果グラフは、図5-5に示すようになります。

    図5-5は主磁石の磁力線の一部が鉄片に吸込まれることを示しています。

     計算条件変更は下記の専用ソフトを使用すると便利です。
     下記の[図5-5専用ソフト]をダウンロードしてください。
     ダウンロード後はダブルクリックで解凍してから使用してください。
      [ベクトルポテンシャル2 ]をダウンロードする。









6章:電流の磁気作用に行く。

トップページに戻る。