8章:電流の作用
作成2012.12.03
- 電熱
水をいれた器に電熱線をいれ、これに電流を流すと熱が発生して水の温度が上昇します。これを電流の発熱作用という。電流の磁気作用とともに応用の広いものである。
ジュールの法則
「電流による発生熱量はその抵抗と電流の2乗との積に比例する。」
発生する熱量Qは、抵抗をR、電流をI、時間をtとして
となります。(8.1)式の単位は力学エネルギーのNmと等しく電力量でありJ(ジュール)といいます。
また、熱量の単位としては、水1kgの温度を1℃上昇するのに要する熱量1kcalが多く使用されます。
- 例題8-1
電気茶びんで0.1lの水をいれ、20Ωの抵抗に5Aを1分間ながしたならば、その温度は何度上昇するか?
解答
- 例題8-2
家庭用2キロ電気アイロンは全質量が2kgでその90%が底金の質量とする。それに使用している電熱線の抵抗
が33Ωでそれに99Vを加えたとき、底金の温度を150℃とするには何分必要は?だだし、外気温度を20℃、底金
の比熱を0.17、効率を95%とする。
解答
t分当たりの熱量Qは
温度上昇に必要な熱量Qは
(8.4)式と(8.5)式から
- 例題8-3
21.5lの浴槽の5℃の水を45℃に30分で上昇させたい。電源電圧を100Vとして何Ωの電熱線を使えばよいか?
解答
30分の熱量Qは
温度上昇に必要な熱量Qは
(8.7)式と(8.8)式から
となります。(8.8)式から電流は50A、電圧100Vで5kWと大きな電力が必要なことがわかります。
- 許容電流
電線に電流が流れれば自身の抵抗のため、必ず温度上昇します。電線にはそれぞれ最高許容温度が定められています。(例えば裸線では外気温度30℃を基準とし連続で90℃)
各電線の許容電流については、2章:オームの法則を参照願います。
- 過電流遮断
過電流が流れると過熱が生じるので、これを防止する必要があります。
(1)ヒューズ
最も簡単な過電流遮断がヒューズです。ヒューズは鉛や亜鉛などの合金で過電流で過熱して溶断します。
(2)ブレーカ(電流遮断器)
ブレーカ(電流遮断器)の主要部はバイメタルであり、過熱によるバイメタルの変形を利用して電流を遮断します。一度遮断すると自動復帰しないタイプが一般的です。
- 電力
仕事率すなわちパワー(動力)を特に電力といいます。
1Vが加わって1A流れたときの電力を1ワット(W)といいます。したがってE(V)でI(A)流れたときの電力P(W)は
となります。
- 例題8-4
200V加わって40A流れたときの電力はいくらか?
解答
- 電力量
1Wの電力の電力が1sになした仕事が1Wsであるが、これは1Jに等しい。一般に電気のなした仕事またはエネル
ギーを電力量といいます。電力量Wの単位はMKS単位系ではJ(ジュール)ですが、慣用的にkWhも良く用いられます。
- 例題8-5
20℃の水43lを毎日1ヶ月(30日)40℃に電力で過熱して使用した。電力量単価を25\kWhとするといくらになるか?
解答
総熱量Qは
電力料金は
- なぜ電熱線は電流で過熱するか?
電界中の電子は電界で加速され大きな運動エネルギーを持つと考えられます。例えば1(V)の電位差で加速された電子の運動エネルギーは1(eV)=1.60217733×10-19 Jとなります。この運動電子が電熱線を構成する原子と衝突して、原子にエネルギーを与えて電子の運動エネルギーが消滅すると考えることができます。
エネルギーを得た原子はどうなるのか?さまざまな現象が予想されます。穏やかな衝突においては、原子あるいは分子構造は破壊されないでしょう。
(1)原子あるいは分子がエネルギーを得て激しく振動する。
(2)原子あるいは分子の運動は熱エネルギーそのものであり温度の上昇が起こります。
(3)温度上昇した物体は一部のエネルギーを熱伝導で放出します。
(4)陽子と電子間の振動により電磁波を放出します。(波長は温度に依存します。)
衝突が激しい場合
(1)原子あるいは分子構造が破壊され、原子に捕捉されている電子が飛び出し高エネルギーのプラズマ状態となります。
(2)プラズマ状態の原子は不安定であり、再度定位置に電子を捕捉します。このと余分なエネルギーを光エネルギーとして放出します。この場合、原子固有の波長を強く発光します。
半導体のように、電流が電子と正孔の流れで構成される場合
(1)電子が高電位の導電体から低電位の荷電子帯に落下します。このときのエネルギーは固有のエネルギーを持ち特定波長の光を出します。
空洞共振を利用すると特定周波数が強く発振します。
(1)電子と物質が電磁波がでますが、電子レンジのマグネトロンのように空洞共振を利用すると特定周波数(2.45GHz)が強く放出されます。冷凍食品の温めにとても便利です。
溶液中のイオンの流れは化学反応を促進します。
(1)電気メッキ、水の電気分解に応用されます。
(2)鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウムイオン二次電池等に応用されます。
上記は電気応用の一例ですが、過熱だけでなくさまざまな応用があります。
9章:電磁誘導に行く。
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