2章:誘電率とコンデンサ
作成2013.05.08
誘電率は物理定数の一種ですが、測定にはコンデンサが使用されます。誘電率とは何
か?その原理について考えててみたいと思います。
誘電率の測定方法
図2-1に誘電率の測定原理図を示します。電極面積(A)、間隔(T)の誘電体コンデンサに
の電圧をかけた場合、流れる電流は
となります。(2.2)式の測定結果からは電流の絶対値(I)と位相角度(α)が得られます。この値
は誘電体によって変化しますが誘電体のパラメータは2個あることになります。従って
誘電率は複素数で表現され
となります。これらの関係式を導くには、仮想モデル化が必要です。
一般的な物質は、完全な絶縁体ではなく極わずかに電圧と同位相の
電流が流れると考えるべきでしょう。理想コンデンサに流れる電流は
電圧と同位相の電流は
従って電流の絶対値は
電流の位相αは
となります。コンデンサの容量Cは誘電率の実数部をεrとすれば
の関係があります。誘電率の虚数部をεiとして
とするならば
変形して
の関係式が得られます。すなわち、電流の絶対値と位相角αが求まれば、誘電率
の実数部をεrと虚数部をεiが求まります。
逆に誘電率の実数部をεrと虚数部をεiが決まれば、電流の絶対値と位相角αが
求まります。誘電率が複素数として定義されるのは、交流電圧がかかった場合、電
流の絶対値と位相角αが変化するためであり、絶対値と位相角αの関係を数学的に
処理するためといえます。
たまたまですが、誘電率の実数部は理想コンデンサの特性から決定され、虚数部
は比抵抗の逆数として定義されます。(数学的にはどちらかが実数、残りが虚数となります。)
水の分子構造と誘電率
(1)誘電率実数部の仕組み
水の分子構造についてはナノインプリントと有機材料の物性_6章:水の性質
6章:水の性質 に行く。
水の分子構造は電荷分布が均一でなく、酸素がマイナス、水素がプラスに帯電しています。
このため、電界がかかると分子が電界の方向にそろい、電気双極子として作用します。
このため、電束密度が大きくなります。
(2)電束密度
EXCELで学ぶベクトル解析 19章:正電荷と電気双極子のある場
19章:正電荷と電気双極子のある場 に行く。
を参照願います。
(3)誘電率虚数部の仕組み
水は分子運動エネルギー(熱エネルギー)によりプラスHイオンとマイマスOHイオンに分離します。
25℃における水の分離粒子発生確率は約1.8E-9程度です。
分離粒子は導電性ですので、純水でも僅かに電気を通します。
イオン性の不純物が溶解しますと溶解したイオンのため電気抵抗が低下します。一般的な水はイオン性の不純物が溶解していますので良く電気を通します。
イオンの流れにより、交流電流と同位相の電流が流れることになります。
水の誘電率の周波数特性
(1)保存:数表データをタブ区切りテキスト形式で保存します。
水の誘電率の周波数特性については、工学関係の雑学49章:マイクロ波と電子レンジ
工学関係の雑学49章:マイクロ波と電子レンジ に行く。
に詳しく解説しています。
水の相対誘電率
相対誘電率εを下記式で定義します。
周波数fにより水の相対誘電率εは変化します。
周波数が1kHz〜5.5MHzにおいて
周波数が5.5MHz〜100GHzにおいて
が近似的に成立します。
相対誘電率をε、複素屈折率をnとした場合下記の関係式が成立します。
垂直入射の電波の反射波動r(複素数)は
反射率Rは
の関係式が成立します。これらの計算はEXCELの表計算機能を使うのが一番簡単
なのですが、ここではあえてC#、WPFアプリを適用してみたいと思います。
水の相対誘電率と屈折率と反射率の計算プログラム
水の相対誘電率と屈折率と反射率はEXCELの表計算でも可能です
が、C#、WPFアプリケーションで作成します。
完成ファイルは以下からダウンロードできます。
ダウンロード後は解凍してから使用してください。
[水の相対誘電率と屈折率と反射率の計算プログラム]をダウンロード する。
解凍すると「permittivity」フォルダーがあります。
「beam」フォルダー内の「permittivity.sln」をダブルクリックすると「Express 2012 for Windows Desktop」が起動して、プログラムの修正・デバッグが可能です。
「permittivity.exe」をダブルクリックすると実行プログラムが起動して、水の相対誘電率と屈折率と反射率の計算が可能となります。
操作説明
(1)計算実行ボタンを押すと数表が作成されます。
(2)グラフ表示ボタンを押すとグラフが表示されます。
(グラフは符号反転を行い、全て正の値として描きました。)
(3)戻るボタンで主画面に戻ります。
(4)再度計算実行ボタンを押して数表を作成します。
(5)メニューの「保存」を選択すると、数表をタブ区切りテキスト形式で保存できます。
(6)クローズボックスで終了します。
感想:
(1)入力すべき変数は、刻み分割数のみで変化にとぼしいプログラムとなりました。
(2)誘電率の実数部は1KHz〜100MHzまでほぼ一定で物質固有の定数であることがわかります。
(3)誘電率の虚数部は1KHz〜100MHzの範囲で周波数に反比例することから、不変的な定数
でないことは明らかです。周波数がゼロのときは値は無限大となり定義不能です。
(4)22GHzに水の双極子の回転運動の共振点があり、誘電率の実数部と虚数部の値は大きく
変化します。
(5)また、赤外線領域には、原子間運動の共振点があり、紫外線領域には共有結合の共振点
があります。
(6)22GHzの水の双極子の回転運動の共振点は電子レンジ過熱、車の衝突防止センサー等に
応用されます。
(7)水は不思議な特性をもつ物体です。
3章:斜め入射での反射率の計算 に行く。
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