12章:CdSセル回路

    作成2014.01.17
     CdSセル(硫化カドミニュウムフォトセル)を応用した回路を検討します。

  1. CdSセル(硫化カドミニュウムフォトセル)とは?
     硫化カドミニュウムは不思議な特性をもつ物質です。カドミニュウムは毒性のある重金属で最外殻の電子は原子核との結合が弱く、自由電子となり導電性です。これに硫黄(S)を結合させるとカドミニュウムの自由電子を硫黄原子が捕捉して絶縁体に変化します。この自由電子の捕捉力は非常に弱く、光があたると自由電子を放出して導体に変化します。したがって、光の量によって放出する自由電子の量が変化し、抵抗値が変化することになります。
     絶縁体と導体の中間的性質を持つ物質を半導体と呼びます。したがって、硫化カドミニュウムは半導体に分類されます。
     シリコンも半導体に分類されますが、シリコン単独では十分な自由電子を放出できず、シリコン系のホトセンサはPN接合のダイオードやトランジスタ構造にしないと十分な電流を得ることができません。これに対して、硫化カドミニュウムは単独でホトセンサとして動作します。


  2. CdSセル(硫化カドミニュウムフォトセル)の特性
     一例として、 CDSセル MI527(秋月電子通商)の特性データは以下のようです。
    (1)主要仕様
    ・外形寸法:直径5mm
    ・ピーク波長:540nm
    ・最大電圧:150VDC
    ・最大電力:100mW
    ・明抵抗:10k〜20kΩ(10Lux時)
    ・暗抵抗:1MΩ
    ・温度係数:±0.002/℃

    (2)照度特性
     照度特性を図12-1に示します。
    ・JIS基準照度 学校教室 200〜750Lux
    ・JIS基準照度 学校廊下階段 75〜300Lux


    (3)波長特性
     波長特性を図12-2に示します。
    ・人間の目の特性に近い!!


    (4)温度特性
     温度特性を図12-3に示します。
    ・通常の気温変化では、問題ないレベルです。



  3. CdSセルの単独評価
    (1)評価回路図
     CdSセル単独評価回路を図12-4に示します。


    (2)CdSセル単独評価
     簡易オシロによる電圧変化測定結果を図12-5に示します。
     CdSセルの遮光により電圧は約2.1Vから1.8Vに変化することがわかります。


    (3)評価結果の照度変換
     CdSセルの基本特性を
    ・明抵抗(R):15kΩ(10Lux時)
    ・暗抵抗(R0):1MΩ
     とするならば照度(L)は以下の式で計算できます。

    計算結果グラフを図12-6に示します。

     図12-6から、CdSセルの遮光により、照度が約108Luxから11Luxに変化したことがわかります。


  4. 自動LED点灯回路(1)
    (1)評価回路図
     図12-7に示す自動LED点灯回路は、CdSセルで1個のLEDを点灯します。

     この回路の電圧と電流変化をCh1、Ch2、Ch3,点について同時測定結果します。

    (2)簡易オシロによる電圧変化測定結果
     簡易オシロによるCh1、Ch2、Ch3,の同時測定結果を図12-8に示します。

     図12-7において、Ch1がトランジスタのベース電圧であり、CdSセルを遮光するとベース電圧が上昇し て、LEDに電流を流して点灯することが理解できます。


  5. 自動LED点灯回路(2)
    (1)評価回路図
     図12-9に示す自動LED点灯回路は、CdSセルで4個のLEDを点灯します。

     この回路の電圧と電流変化をCh1、Ch2、Ch3,点について同時測定結果します。

    (2)簡易オシロによる電圧変化測定結果
     簡易オシロによるCh1、Ch2、Ch3,の同時測定結果を図12-10に示します。

     図12-10において、コレクタ電流はI=(Vch3-Vch2)/220であり、Ch3の電圧が上昇するこ とからコレクタ電流が増大することが理解できます。


  6. 自動LED点灯回路(3)
    (1)評価回路図
     図12-11に示す自動LED点灯回路は、CdSセルで4個のLEDを点灯します。

     この回路では、CdSセルに接続する抵抗が200kΩと大きくなっています。このため、ベース電流がベース電流が小さくなり、コレクタ電流が不足します。増幅率を大きくするためトランジスタを2個接続します。これをダーリントン接続といいます。

     この回路の電圧と電流変化をCh1、Ch2、Ch3,点について同時測定結果します。

    (2)簡易オシロによる電圧変化測定結果
     簡易オシロによるCh1、Ch2、Ch3,の同時測定結果を図12-12に示します。

     図12-12において、Ch1のベース電圧が高くなっていますが、ダーリントン接続でベース・エミッタ間が直列に2個あるためと思われます。
     この回路の特徴は、かなり暗くしないとLEDが点灯しないことです。(昼間ではLEDが点灯しないかもしれません。)


  7. 結果の検討
    (1)照明の明るさの単位Luxは人間の目の感度を基準としているため、物理量としては曖昧です。
    (2)CdSセルの波長特性は人間の目の波長特性と良く一致している。
    (3)CdSセルは照明の明るさLuxを測定するのに適している。
    (4)自動LED点灯回路は周囲は暗くなった場合、自動的に照明を点灯することができる。
    (5)非常に暗い条件で点灯するには、CdSセルに接続する抵抗値を大きくする必要があるが、この場合ベース電流が小さくなるので、ダーリントン接続が有効となる。









13章:DCモータ制御に行く。

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