5章:CR回路交流特性
作成2013.11.28
CR回路交流特性測定回路
図5-1にCR回路交流特性測定回路を示します。
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図5-1のCR回路交流特性測定回路において、特徴的なのは、100Vの交流電源を用いている点ですが、抵抗値の選定を誤ると発熱によるトラブルを発生する可能性があります。
使用する抵抗の許容電力に注意が必要です。
抵抗値は100kΩを使用しているので、電流は1mAで電力は約0.1Wとなります。(発熱のトラブルはありませんでした。)
次に特徴的なのは、乾電池(1.52V)でオフセットを与えている点ですが、電流を安定する目的でR4(10kΩ)を加えました。オフセットを与えた理由は簡易オシロの測定範囲が0〜5Vでマイナスの電圧を測定できないためです。
CR回路はコンデンサCと抵抗R2で構成されます。簡易オシロでは、GNGとCh1間の電圧とGNDとCH2間の電圧を観察します。
CR回路交流特性測定回路の基礎理論
以下の基礎関係式が成立します。
図5-1において、各電路の電流を
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としした場合、トータルの電圧は
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(5.2)式を変形して
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となります。すなわち関数I2(t)の値が求まれば、V1とV2の値が決定できます。CR回路の基礎方程式は
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(5.4)式のI2を電荷qに置き換えると
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さらに変形すると
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(5.6)式は1階線形微分方程式であり、ラプラス変換法で代数解を求めることができます。初期条件でq=0と
してラプラス変換すると
(5.7)式を変形すると
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となります。したがって、(5.8)式をラプラス逆変換すると
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したがって(5.9)式の解は
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(5.10)式の台1項はt→∞でゼロとなります。したがって
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と比較的単純な式に変換できます。したがって、電流I2は
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となります。したがって
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(5.13)式でV1とV2の値が求まります。
交流理論
交流理論ではコンデンサに
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の電流を流した時、コンデンサの電圧は
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RC直列回路の電圧は
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したがってインピーダンスZは
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この結果は、基礎方程式(5.4)式から導かれる代数解と一致しますが、位相の基準が異な
ることに注意が必要です。抵抗R2の位相を基準と
した場合、抵抗R3の位相は進むことになります。(5.13)式から位相を逆算すると
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となり、位相が反転します。これはなにを基準とするかの違いです。同様にインピーダンス
Zの絶対値を逆算すると
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となり一致することが確認できます。交流理論では、複雑なラプラス変換を行うことなく、CR合成の電流位相角とインピーダンスZが求まり、電圧の絶対値を容易に求めることができます。
しかし、交流理論が成立する条件として
(1)入力信号が正弦波
(2)入力信号が変化時の過渡応答を除く
が必要となります。
CR回路交流特性測定ソフト
(1)CR回路交流特性測定ソフトのダウンロード
CR回路交流特性測定ソフトは以下からダウンロードできます。
[ CR回路交流特性測定ソフト]をダウンロードする。
(2)CR回路交流特性測定ソフトの構成
解凍すると「CR回路交流特性測定」フォルダーがあります。フォルダー内には
・USB-FSIO_Oscillo.exe:簡易オシロ実行ファイル(3チャンネルとも10bitに変更)
・USB-IO_Family.dll:USB-FSIO_Oscillo.exeで使用するDLL
・CR回路交流特性.xls:R回路交流特性演算ファイル
・out.txt:測定結果例ファイル
(3)使用方法
・USB-FSIO_Oscillo.exeを起動し、測定を実行します。測定を実行すると同一フォルダー内に測定結果が「out.txt」に保存されます。
・CR回路交流特性.xlsを起動して、シート「操作」の計算条件表を設定すると理論値が表計算されます。
・シート「操作」の「測定データコピー」ボタンを押すと測定結果がシート「data」にコピーされ、理論値に対応する形式でシート「操作」に表示されます。
・シート「操作」にはグラフも表示されます。
(4)CR回路交流特性の計算手法
・単純な表計算を用いました。
評価結果
(1)計算条件
項目 | 記号 | 値 | 単位 |
電源電圧 | |V0| | 100 | V |
周波数 | N | 50 | Hz |
抵抗R1 | R1 | 100 | kΩ |
抵抗R2 | R2 | 0.9 | kΩ |
抵抗R3 | R3 | 1 | kΩ |
コンデンサ | C | 2 | μF |
時間間隔 | dt | 1 | ms |
オシロ電圧換算係数 | kV | 0.004918 | V/div |
(2)評価結果グラフ
評価結果グラフを図5-2に示します。
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結果の検討
(1)理論値と実測値は図5-2に示すようによく一致する。
(2)位相差を大きくするには、抵抗R3を小さくする必要があるが、Ch2の電圧に対して、Ch1の電圧が小さくなる。
(3)同様にコンデンサCの容量を小さくすると位相差が大きくなるが、Ch2の電圧に対して、Ch1の電圧が小さくなる。
(4)、抵抗R3または、コンデンサCの容量を大きくすると位相差が小さくなる。
(5)思いのほか適切な電圧と位相差が得られる、抵抗R3または、コンデンサCの容量の範囲が小さい。
(6)CR回路の位相差検出は、平板型コンデンサによる微小ギャップ測定に適するように思われる。
6章:ダイオードの特性評価に行く。
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