6章:ダイオードの特性評価

    作成2013.12.01

  1. キットで遊ぼう電子回路 No.1基本編vol.1
     簡単な電気実験を行うには、電子部品の準備が必要となります。個別に電子部品を準備するのは面倒なので、キットで遊ぼう電子回路 No.1基本編vol.1を購入しました。
    (1)発売元
    ・株式会社アドウィン
    http://www.adwin.com/index.html
    キットで遊ぼう電子回路No.1
    基本編vol.1
    型番:ECB-100T
    価格:¥3,570 (税込)

    (2)アマゾン amazon.co.jp
     アドウィンからの直接購入も可能ですが、アマゾンからも購入できます。
    基本編Vol.1セット [キットで遊ぼう電子回路シリーズ1] [ムック]
    価格: ¥ 3,570 通常配送無料

    (3)付属の電子部品リスト
    部品名備考型番数量
    ブレッドボード-MB-1021
    線材ブレッドボード配線用-一式
    抵抗220Ωカーボン抵抗1/4W2
    抵抗820Ωカーボン抵抗1/4W3
    抵抗2.2kΩカーボン抵抗1/4W3
    抵抗15kΩカーボン抵抗1/4W1
    可変抵抗100kΩVRB100kΩ1
    LED-4
    LED-3
    LED-3
    ダイオード-1S15883
    電解コンデンサ33μF-3
    プッシュスイッチ--3
    トグルスイッチ単極双投HTS-1031
    電池ボックス単3×4(6V)用-1

     ブレットボードを使用すると、はんだごてを使用しないで、回路を構成でき、大変便利です。抵抗、LED、ダイオード、コンデンサ等は不要となった家電製品から回収可能ですが、新品の電子部品は使いやすいです。


  2. LED特性評価回路
     LED特性評価回路を図6-1に示します。Ch1とCh2の電圧を測定してLEDに加わる電圧と流れる電流を測定します。


    評価条件
    LED 赤 R=220Ω
    LED 黄 R=220Ω
    LED 緑 R=220Ω
    ダイオード 1S1588 R=2.2kΩ


  3. 評価結果
    (1)順方向電流特性
     順方向電流特性を図6-2に示します。


     評価データ詳細は下記ファイルを参照願います。

    LED特性評価結果「6-1.xls」に行く。


    (2)逆方向電流特性
     逆方向に流れる電流は、全てのLEDとダイオードにおいて、測定限界以下(ゼロ)でした。


  4. ダイオードの電流特性理論式
    (1)ダイオードの電流特性理論式
     トランジスタ回路入門記載の理論式

    半導体物理から導いた理論式は

     となります。上記の2個の式は、逆バイアスのブレイクダウンまたはツェナー領域を除き良く一致します。上記の式で測定結果の電流特性を近似できるのでは?
     そう思って、いろいろとパラメータを変えて近似を試してみました。

    (2)ダイオードの電流特性理論式よる近似の結果
     結論として、「ダイオードの電流特性理論式で実測した電流特性を近似できない!!」という結果となりました。

    (3) ダイオードの電流特性理論式の問題点
     ダイオードの電流特性理論式は式の誘導の過程で、電流による過熱が考慮されていません。半導体自身の抵抗をゼロとして式を誘導しています。
     実際には、電流により熱が発生し、半導体が過熱され、原子が激しく振動することにより、電子と原子の衝突が起こり、抵抗値が上昇すると思われます。 
     一定以上の電流で、PN接合の破壊温度に達することが、予想されます。ダイオードの電流特性理論式は発熱の影響を考慮していないため、破壊電流の予測もできません。
     破壊温度に達する限界電流は、実験的に求めるきりないはずです。(限界電流を求める実験は電子部品の破壊を伴います。)


  5. LED電流特性の4次多項式近似
     LED電流特性は4次多項式で精度良く近似できます。近似結果を以下に示します。
    型式4次係数3次係数2次係数1次係数0次係数相関R2
    LED赤-2.963922.361-63.10178.974-37.0030.9975
    LED黄-35.069270.54-782.231004.7-483.680.985
    LED緑0.6806-5.328615.937-21.49610.990.9989
    1S1588-0.53031.2895-1.12760.4275-0.05980.9974





  6. LED電流特性の直線近似
     LED電流特性は4次多項式で精度良く近似できますが、数学的に扱いにくくなります。若干の近似誤差を無視して直線近似すると扱いやすくなります。
    型式1次係数0次係数相関R2
    LED赤0.0433-0.07690.9881
    LED黄0.061-0.11330.9774
    LED緑0.0618-0.11610.9837
    1S15880.009-0.00470.9636

    線形近似式を変形して

    とするならば
    型式A(1/Ω)V0(V)
    LED赤0.04331.77598
    LED黄0.0611.857377
    LED緑0.06181.87864
    1S15880.0090.5222
    となります。さらに座標変換を行い

    とするならば

    型式R(Ω)V0(V)
    LED赤23.0946881.775981524
    LED黄16.39344261.857377049
    LED緑16.181229771.878640777
    1S1588111.1111110.52222222
    となり、オームの法則が適用できるようになります。(6.5)式において、 電圧Vが障壁電圧V0以下のとき、R=無限大となります。


  7. 障壁電圧V0と発光波長
     量子論によるならば、光のエネルギーと波長の関係は下記の式で表わされます。

    (6.6)式において、hはプランク定数、νは光の振動数、cは光速、λは光の波長です。
     光のエネルギーの単位はeVで示します。これをグラフにすると図6-5に示すようになります。

     図6-5からわかるように緑(波長550nm)のエネルギーは約2.2eVとなります。これに対して、LED緑の障壁電圧V0は約1.88Vです。
     本来ならば、緑(波長550nm)の光を発光するには、2.2V以上の電圧が必要なのでは?

     光のエネルギー以下の電圧で発光する理由としては、電流によるPN接合部の過熱の影響がかんがえられます。1.88Vの電位差で加速された電子は、PN接合部の原子の熱運動からエネルギーを得て、2.2eVのエネルギーに達した電気振動を起こし、電気振動に応じた電磁波を放出すると考えられます。
     また、このエネルギーが大きいほど、発光波長は短くなることになります。実験結果も正確ではありませんが、障壁電圧が高い方が、波長が短くなることを示しています。


  8. LEDは受光素子として使用できるか?
     発光素子と受光素子の基本構造は同じです。したがって、LEDは受光素子として動作するはずです。
     確認のため、LED赤を2個向かい合わせて設置し、片側に電流を流して発光させ、もう一方のLED に流れる電流を測定してみました。

     実験結果を図6-6に示します。

     図6-6は横軸が発光LED赤の電流、縦軸が受光LED赤の電流です。直線近似の相関R2=1という驚くべく結果です。
     ただ、効率は約2%と悪く流れる電流は微小です。


  9. 結果の検討
    (1)電気・電子工学を専門としないエンジニアにおいても、一般物理として電気の特性を学習します。抵抗、コンデンサ、コイルの特性は数学的にすっきりしており、理解しやすいのですがダイオードやトランジスタは難解です。
    (2)ダイオード電流特性の理論式を導くには、難解な半導体物理を理解する必要があります。
    (3)今回のLED特性評価でわかったこと!!難解な理論を展開して導いたダイオード電流特性の理論式が実際のLEDの電流特性に適用できないということがわかりました。
    (4)ダイオード電流特性の理論式と実測値の比較は、多くの時間をかけて検討してみました。しかし、どうしても一致しないというのが結論です。
    (5)机上理論がうまく適用できない場合、多くの実験や経験が重要となります。
    (6)電子工学は、多くの実験や経験が重要な分野のようです。









7章:整流回路に行く。

トップページに戻る。