7章:整流回路

    作成2013.12.03
     ダイオードを応用した回路として、整流回路があります。

  1. 整流特性測定回路
     整流特性測定回路を図7-1に示します。電源は交流100Vを46kΩと1kΩの抵抗で分圧します。負荷抵抗Rと 平滑化コンデンサCの値を変更した場合の整流後波形を観察します。



  2. 整流用ダイオードの選定
     簡易オシロの測定可能電圧範囲は0〜5Vに制限されます。ダイオードの障壁電圧V0までは電流が流れません。このため、障壁電圧V0が小さい1S1588が良いのですが、残念ながら3本きりありません。
     やもなく、代替のシリコンダイオードを不要となった家電製品から探しました。外観が同じダイオードを5本探し、特性を評価しました。
     型番は不明ですが、評価結果から使用可能と判断しました。評価結果の要約を以下に示します。
    No直線近似抵抗値R(Ω)直線近似障壁電圧V0(V)
    185.50.53
    284.70.525
    388.50.522
    470.90.532
    589.30.518
     上記の表から、各ダイオードはほぼ類似の特性を持ち、障壁電圧も約0.5Vと低いことがわかります。


  3. 負荷抵抗変更(コンデンサなし)の評価結果
     コンデンサなしで抵抗Rを変化させた場合の整流特性を図7-2に示します。

     図7-2にから以下のことがわかります。
    (1)電圧ゼロで平らな部分があります。これは、ダイオードの障壁電圧V0の影響であることが想像できます。
    (2)順方向電圧と反転電圧の位相がずれており、波形のみだれがあります。原因としては、回路特性の非対称性が疑われます。


  4. コンデンサ変更(抵抗R=2.2kΩ固定)
     抵抗Rを2.2kΩに固定してコンデンサの容量を変化させた整流特性を図7-3に示します。

     図7-3から、コウデンサの容量を十分大きくすれば、少々の波形のみだれに関係 なく、電圧は一定になることがわかります。


  5. 位相ずれの原因調査
     図7-4に示すように、ダイオードをD1の1個のみに変更し、Ch1,Ch2、Ch3の電圧を観測して位相ずれを測定します。
     ダイオードD1は図と逆方向につけた場合の電圧特性も測定します。

     図7-4に示す回路で測定した結果を整理し分析した結果を図7-5に示します。

     図7-5において、交流電圧のゼロ以下がフラットになっていますが、これは簡易オシロの測定範囲の影響です。
     図7-5において重要なのは、順方向整流と逆方向整流の位相がずれている点です。すなわち、ダイオード1個でも位相ずれが発生します。これは、ダイオードが固有の容量を持つことにいらいすると思われ、交流電源の非対称配置の抵抗分圧の影響が強く疑われます。


  6. 位相ずれ対策
     図7-6に示すように、0.99kΩの両側に対称に46kΩの抵抗を設置します。
     ダイオードD1は図と逆方向につけた場合の電圧特性も測定します。

     図7-6に示す回路で測定した結果を整理し分析した結果を図7-7に示します。

     図7-7においては、位相ずれが小さくなっていることが確認できます。


  7. 位相ずれ対策後の整流波形
     位相ずれ対策後の整流波形を図7-8に示します。

     図7-8を見ると、位相ずれは残っていますが、改善されていることがわかります。

     評価データ詳細は下記ファイルを参照願います。

    整流特性評価結果「7-1.xls」に行く。


  8. 位相ずれモデル
     位相ずれが発生する可能性がある非対称回路の単純モデルを図7-9に示します。

     一般回路理論では、図7-9の順方向と逆方向の位相ずれをうまく説明できません。それは、一般回路理論では、電流がプラス側からマイナス側に流れるという単純モデルであり、電荷の密度分布までは考慮していないためと思われます。
     実際には電子はマイナス側から、電位の高い方に流れ、回路内で密度分布を持つ。したがって、順方向と逆方向で電子の密度分布が異なる可能性があります。
     したがって、位相ずれをなくすには、全ての回路部品が対称配置になっているか、あるいは位相ずれがなくなるように位相ずれのバランスを調整する必要がありそうです。
     この現象を完全に理論的に求めるのは大変難しそうです。回路理論は近似解と考え、実測値に基づく微調整が避けられないようです。


  9. 結果の検討
    (1)交流波形を得るには、100V交流電源を抵抗で分圧するのが、最も簡単な手法です。
    (2)抵抗で分圧で作成した電源は、理想電源とはほど遠く、負荷抵抗の影響をもろに受けます。
    (3)抵抗で分圧で作成した電源は、負荷抵抗の影響のみでなく、負荷の容量の影響も受けやすいようです。
    (4)分圧を非対称な抵抗値配置で行うと整流した場合、順方向と逆方向で無視できない位相ずれが発生する。
    (5)分圧を対称な抵抗値配置で行うと整流した場合、順方向と逆方向で無視できない位相ずれが低減できる。
    (6)整流後の波形形状は正弦波を中心で折り返した形状とならない。
    (7)コンデンサの容量を十分大きくすれば、整流後の波形形状にかかわらず、一定電圧となる。
    (8)直流電源においては、コンデンサがさまざまな誤差を吸収してくれる。









8章:OR・AND・マトリクス回路に行く。

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