3章:食塩水の電気特性

    作成2014.12.20

  1. 電気抵抗率の定義
     電気抵抗率は、どんな材料が電気を通しにくいかを比較するために、用いられる物性値である。単位は、オームメートル(Ω・m)である。
     電気抵抗 R の値は、電気抵抗率を ρ(ロー)、導体の長さを L 、導体の断面積を A とすると次の式で示される。

     (3.1)式で電気抵抗率を ρ(ロー)を計算するには、導体の長さを Lと導体の断面積を Aの値を知る必要がありますが溶液中の電流は3次元的な分布を持つため厳密な計算は容易ではありません。
     
     そこで、あらかじめ電気抵抗率のわかっている溶液の抵抗Rを測定するとA/Lの値を求めることができます。海水の比抵抗は0.2Ω・mで塩分濃度は約3.4%であるといわれています。
     海水は手持ちにないので約3%の食塩水で代用します。以下に示す電極で測定した結果は99Ωとなりました。
     したがって


    となります。


  2. 水道水と食塩水の電気抵抗率ト
     水道水と食塩水の電気抵抗率の測定結果表を以下に示します。
    濃度1回目2回目3回目4回目平均Ω電気抵抗率Ω・m
    0%(水道水)441145095103556348979.891
    1%食塩水1371311311351340.27
    2%食塩水1071041081091070.216
    3%食塩水100999898990.199
    4%食塩水91889089900.181
     上記表の結果において
    (1)水道水の電気抵抗率は一般的に50Ω・m程度といわれていますが、実測では約1/5の10Ω・m程度になってしまいました。
    (2)この原因としては、電極や容器の汚染の影響が考えられます。
    (3)電気抵抗率の変化は0から1%の間が最も大きく、濃度が上がるに従って変化が小さくなる。
    (4)塩分濃度と電気抵抗率の間には線形の関係が成立しない。


  3. 水道水と食塩水の静電容量
     E電極で水道水と食塩水の静電容量測定結果を以下に示します。
    物質静電容量(pF)
    空気43
    水道水526
    2.5%食塩水586
    5%食塩水572
     上記表の結果において
    (1)空気中で43pFであった静電容量は水道水で526pFまで増加する。
    (2)測定バラツキが大きいため、水道水、2.5%食塩水、5%食塩水は有意差無しとすべきである。
    (3)静電容量の変化は物質の誘電率変化の影響と思われる。


  4. 結果の検討
    (1)電極の絶縁部が溶液につかると、絶縁部が汚染され正確な測定ができなくなる。
    (2)電極の絶縁部が溶液につからない構造に変更する必要が生じた。
    (3)電極間隔を広くしたほうが測定結果が安定する。
    (4)電極間隔を大きくしても抵抗値はあまり変化しない。
    (5)溶液の電気特性測定は電極や容器の汚染の影響を受けやすく、正確な測定が難しい。
    (6)静電容量については、食塩の影響が確認できなかった。
    (7)水道水の電気抵抗率は一般的に50Ω・m程度といわれていますが、実測では約1/5の10Ω・m程度になってしまいました。
    (8)電気抵抗率の変化は0から1%の間が最も大きく、濃度が上がるに従って変化が小さくなる。
    (9)塩分濃度と電気抵抗率の間には線形の関係が成立しない。




4章:身近な食材の電気抵抗率に行く。

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