2章:被染色物の選定と媒染の原理

    作成2019.05.13
  1. 被染色物の布
     被染色物の布としては、(a)絹、(b)ウール、(c)綿、(d)ポリエステル等が候補にあがりますが、 (a)絹、(b)ウールは高価であり、趣味の草木染めには適しません。
    (d)ポリエステルは安価ですが、水溶性の染料で染色することができません。
      (c)綿は安価で、水溶性の染料で染色することができます。したがって、趣味の草 木染めには(c)綿が最適です。

  2. 草木染めに適する品物
     草木染めの染料は、洗濯や天日干しで劣化しやすい問題があります。Tシャツ等は頻繁に洗濯 や天日干しが必要です。
      Tシャツ等に適する草木染めの条件は限られており、実現できる色も制限されます。これに対して、 小型の手提げ袋は安価で洗濯や天日干しの回数が少なくなります。
     小型の手提げ袋等が最適です。


  3. ブドウ糖の分子構造と特性
     植物は光合成によりブドウ糖や脂肪酸等の炭水化物を作り出します。
     水に二酸化炭素が溶けると炭酸になります。
     これに光エネルギーが加わって、酸素ガスと活性分子が生成されます。 活性分子が6個結合し 、端末安定化するとブドウ糖の分子になります。
     従って、光合成により水と二酸化炭素が酸素ガスとブドウ糖に変化する ことになります。
     ブドウ糖の代表的な形状としてはαブドウ糖とβブドウ糖があります。
     3次元形状を正確に表示できないため2次元の結合で表示してあります。
     αブドウ糖とβブドウ糖はほとんど同じに見えますが右端のOHとHの配置が 逆転しています。



     上記の図において、αブドウ糖、βブドウ糖ともに5個のOH基があります。 OH基のHは正に帯電し、 Oは負に帯電しますが、 OH基全体では負に帯電します。
     このOH基は水とよく馴染む性質があり、親水性となるため水によく溶解します。

  4. セルローズの分子構造と特性
     βブドウ糖が脱水縮合反応で結合したものがセルローズで以下のような分子構造となります。



     上記の図において、セルローズ表面には多数のOH基があります。 OH基のHは正に帯電し、Oは負に帯電 しますが、 OH基全体では負に帯電します。
     このOH基は水とよく馴染む性質があり、親水性となるため水によくなじみします。

  5. 媒染の原理
     草木染めにおける媒染の原理図を以下に示します。



     綿の主成分はセルローズであり、その表面にはたくさんのOH基があります。 OH基は負に帯電し ており、正に帯電した金属イオンを吸着します。また水溶性の染料の表面にもOH基があります。
     正に帯電した金属イオンは負に帯電した染料表面のOH基を吸着します。正に帯電した金属イオン を介して、綿は水溶性の染料を吸着します。
     草木染めにおける媒染はOH基と金属イオンの電気的な吸引力を利用したものであり、強固な 結合ではありません。
     また、繊維と染料の表面に多数のOH基があり、親水性の材料でることが必須となります。水 に溶けない疎水性の染料には有効ではありません。
     草木染めを行った布をアルカリ性洗剤を用いて洗濯するのは好ましくありません。  草木染めを行った布を天日干しで紫外線をあてるとOH基どうしが脱水縮合反応して、強固な 共有結合に変化することがあります。ただし、繊維や染料自体が劣化する危険を伴います。







3章:草木染めに必要な薬品に行く。

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