4章:平凸レンズ、アクロマートレンズ、アポクロマートレンズ特性の計算

    作成2019.09.24
  1. 計算プログラム
     簡単なレンズ特性の計算は1章:レンズの基礎方程式の2次元光線追跡で十分な場合があります。 2次元光線追跡はレンズ中を通る半径方向特性のみを計算します。レンズの円周方向の計算はおこないません。
     しかし、レンズの収差は半径方向に生じることが多く、レンズの円周方向の計算を省略できる場合があります。
      2次元光線追跡の特徴は、計算式が単純になり、理解しやすい点にあります。
     プログラム言語もBVAを採用しました。いきなり、3次元光線追跡とガウスニュートン法の最適化プログラムの内容を無理があります。
     まずは、以下のファイルをダウンロードしてください。

    「平凸レンズ、アクロマートレンズ、アポクロマートレンズ計算ファイル」にいく。

     ダウンロードしたファイルをオープンして、メニューの表示「」_「ツール」_「Visual Basic」を選択すると「Visual Basic」ツールバーが表示されます。次に「Visual Basic Editor」ボタンを押します。
     「プロジェクト」_「標準モジュール」_「Module1」をダブルクリックするとソースプログラムが表示されます。

    平凸レンズ計算を例にとると以下の順で処理されます。
    Sub 平凸レンズ計算実行()
    (1)レンズパラメータの取り込み
    (2)配列変数へのレンズパラメータ設定(正方向設定)
    (3)CAL ‘光線追跡計算実行
    (4)光線追跡計算結果の分析
    (5)正方向分析結果出力
    (6)配列変数へのレンズパラメータ設定(逆方向設定)
    (7)CAL ‘光線追跡計算実行
    (8)光線追跡計算結果の分析
    (9)逆方向分析結果出力
    End Sub


  2. 平凸レンズの計算果
     計算例としてシグマ光機株式会社の球面平凸レンズSLB-20-100PMを選定します。主な仕様を以下の表にしめします。

    材質BK7
    設計波長546.1nm
    反射防止膜コート波長域400〜700nm
    外径 φDφ20mm
    焦点距離 f100mm
    中心厚 tc3mm
    バックフォーカス fb98mm
    曲率半径 r51.9mm

    材質がBK7となっていますが、生産中止しになっていますので、BK7互換のS-BSL7((株)オハラ)として計算します。

     「4-1.xls」を開き、「平凸(緑)」タブをクリックすると、以下の画面となります。黄色セルにレンズ条件を入力して、「平凸レンズ計算実行」ボタンをおすと、 平行光線の半径、正方向焦点誤差、正方向後側焦点距離等の計算結果表が自動表示されます。



      「平凸(青)」 「平凸(赤)」も同様に計算できます。
     計算結果の解釈の仕方が重要です。
     正方向焦点距離ですが、カタログでは100mmですが、平行光線半径が変わると変化します。通常焦点距離fはθ=TAN(θ)=SIN(θ)が成立する近軸領域で定義されます。あくまでも、概略の近似計算用パラメータです。
     重要なのは、正方向後側焦点距離ですが、カタログでは、バックフォーカスfb=98mmとなっています。この正方向後側焦点距離は本来、平行光線の半径で変化してはいけないのですが、実際にはかなり変化しています。 「平凸(青)」 「平凸(赤)」を含めて判断すると誤差はさらに拡大します。
     次に正方向波面収差ですが、この場合単色光で計算していますので、色収差を含まない波面の収差です。良好な結像が得られる波面収差は、色収差を含む総合で0.25λ以下です。
     色収差を含まない波面の収差が0.2λ以上であれば、良好な結像が得られないと考えるべきです。
     平凸レンズの収差は非常に大きいため、結像用ではなく、照明の集光用として用います。


  3. アクロマートレンズの計算
      計算例としてシグマ光機株式会社の球面アクロマティックレンズ DLB-20-100PMを選定します。主な仕様を以下の表にしめします。

    材質BK7、SF2
    設計波長青:486.1nm、緑:546.1nm、赤:656.3nm
    外径 φDφ20mm
    曲率半径 r158.5
    曲率半径 r2-43.253
    曲率半径 r3-150
    中心厚 d14.1
    中心厚 d22
    焦点距離 f99.5mm
    中心厚 tc6.1mm
    バックフォーカス fb96.4mm

    材質がBK7とSF2となっていますが、生産中止しになっていますので、BK7互換のS-BSL7((株)オハラ)と、SF2互換のS-TIM22((株)オハラ)として計算します。
    「4-1.xls」を開き、「アクロマティク (緑)」タブをクリックすると、以下の画面となります。黄色セルにレンズ条件を入力して、「アクロマティクレンズ計算実行」ボタンをおすと、平行光線の半径、正方向焦点誤差、正方向後側焦点距離等の計算結果表が自動表示されます。



      「アクロマティク(青)」 「アクロマティク(赤)」も同様に計算できます。
     計算結果の解釈の仕方は平凸レンズと同じです。正方向波面収差の値が素晴らしい!!しかし、油断してはいけません。この波面収差は色収差を除く収差です。
     正方向後側焦点位置が「アクロマティク(青)」 「アクロマティク(赤)」の結果と一致しているか?確認が必要です。
     カタログの焦点距離はf=99.5mm、バックフォーカスfはfb=96.4mmです。


  4. アポクロマートレンズの計算
      計算例として3章:アポクロマート(3色に対して色収差補正)で最良の組合せとなったS-FPL53 & S-NBM51 & S-BAH27で独自設計したアクロマートレン ズを計算します。主な仕様を以下の表にしめします。

    材質S-FPL53、S-NBM51、S-BAH27
    設計波長青:486.1nm、緑:546.1nm、赤:656.3nm
    レンズ直径(mm) Dia20
    第1面曲率半径(mm) R144.392
    第2面曲率半径(mm) R2-33.964
    第3面曲率半径(mm) R323.263
    第4面曲率半径(mm) R4-458.57
    S-FPL53中心厚(mm) Ad4
    S-NBM51中心厚(mm) Bd2
    S-BAH27中心厚(mm) Cd4

      「4-1.xls」を開き、「アクロマティク (緑)」タブをクリックすると、以下の画面となりま す。黄色セルにレンズ条件を入力して、「アクロマティクレンズ計算実行」ボタンをおすと、平行光 線の半径、正方向焦点誤差、正方向後側焦点距離等の計算結果表が自動表示されます。



      「アポクロマティク(青)」 「アポクロマティク(赤)」も同様に計算できます。
     計算結果の解釈の仕方は平凸レンズと同じです。正方向波面収差の値が素晴らしい!!しかし、油断してはいけません。この波面収差は色収差を除く収差です。
     正方向後側焦点位置が「アポクロマティク(青)」 「アポクロマティク(赤)」の結果と一致しているか?確認が必要です。


  5. 正方向後側焦点誤差(青、緑、赤のMAX-MIN)(μm)の比較
     青、緑、赤総合の正方向後側焦点誤差MAX-MIN (μm)の比較グラフを以下に示します。



     平凸レンズでは、2637μmと非常に大きいですが、アクロマートレンズでは、122μmまで改善できます。アポクロマートでは、39μmとさらに改善しています。
     この正方向後側焦点誤差はm色収差のみでなく、球面収差の影響も含まれます。


  6. 開口数NAと理論解像度Rxと理論焦点深度Dfと波長λの関係
     レンズの有効半径をRy=9mm、焦点距離f=100mmとしたとき開口数NAは

    波長0.546μmにおける解像度は

    焦点深度Dfは

     焦点深度(4-3)式の結果から、焦点誤差のMAXーMINの値が60μm以内にないと十分な解像度が得られないことになります。
     アポクロマートレンズはNA=0.09、解像度=3.7μm、焦点深度=±33μmの条件を満足します。







5章:3次元光線追跡プログラムに行く。

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