10章:移動度μのモデルと実験式

 移動度μは常に一定の定数ではなく、温度や不純物濃度により、変化する。これは原子と電子の熱運動や原子の結晶構造の実だれ等に起因すると思われるが正確な値を純理論的に導きだすのはかなり難しいのである。
  1.  電子の生存確率と生存時間の関係
      単位時間あたりの電子の衝突確率をPとすると微少時間Δtあたりの電子の衝突確率はPΔtとなり、N回目の電子の生存確率fは

     この証明は数学的には難しくはないが、図10-1の実例で示す。
     図10-1において、緩和時間τ=8.46E-5(s)、P=1/τ、Δt=5E-6(s)として(10-2)(10-3)式の値の差をグラフで示す。2つの式は良く一致していることがわかる。



  2. 格子原子と電子の衝突確率への温度影響
     温度が高くなると格子原子と電子の熱振動が大きくなるので衝突確率が高くなり、緩和時間τは短くなる。自由電子の平均運動エネルギーは3kT/2に等しい。これを式であらわすと
      m(Vx^2+Vy^2+Vz^2)/2=3kT/2 ----(10-4)
     x,y,z方向のそれぞれ速度はVに等しいとすると
      V=SQRT(kT/m) ----(10-5)
     となる。運動はx,y,zの3次元方向にしており、移動距離は速度に比例すると仮定すれば、衝突確率は(10-5)式のVの3乘に比例する。従って、移動度μは(10-5)式のVの-3乘に比例する。

     移動度μや緩和時間τに関して、理論的に推定できるのは、残念ながらこの程度である。詳細の定数決定に関しては実験式を使用せざるえない。

  3. 純粋なシリコンのキャリア移動度の実験式
     純粋なシリコンのキャリア移動度の実験式を下記に示す。

     移動度μに関しては理論式と実験式の差が大きい。とりあえず理論式は役にたちそうもない。ここでは実験式を使用せざるなないが、(10-7)(10-8)式は純粋なシリコンでの実験式であり、不純物濃度が高い場合には誤差が大きくなることを知っておく必要がある。
     移動度μに関してはその条件での測定データを採用することが望ましい。

     
  4. 11章:実効質量と周波数特性に行く。
  5. トップページに戻る。