12章:導電率

 我々はこれまでの議論で緩和時間τと移動度μを求める方法を知った。しかし、電気特性の多くは電流値や電圧値として測定されることが多い。
 従って、ここでは緩和時間τや移動度μを電流値に変換する方法を検討する。
  1.  一定電界Eにおける電流密度(J)
     我々は「9章:緩和時間τと移動度μ」「一定電界Eにおける自由電子の運動モデル」で電子の速度が下記式で求まることをしった。
      v=[μe]E ----(12-1)
     また、自由電子の密度[no]は「7章:不純物濃度と[po][no]積」「2.[po][no]積」の(7-11)式で求まることを知っている。自由電子による単位体積あたりの電流密度(Je)は下記式で求めることができる。
      Je=[no]v ----(12-2) (単位 A/m^2)
      Je=[no][μe]E ----(12-3) (単位 A/m^2)
     電流密度は自由電子による電流と正孔による電流の和として与えられる。従って、電流密度(J)
      J=([no][μe]+[po][μh])E ----(12-4) (単位 A/m^2)
    となる。

  2.  周期電界Eにおける電流密度(J)
     我々は周期電界Eにおける自由電子の運動速度の振幅が(11-4)式で与えられ、抵抗Rと移動度μの間には「R=q/μ」関係式が成立することを知っている。したがって自由電子による単位体積あたりの電流密度の振幅[Ae]は下記式で求めることができる。自由電子の抵抗を[Re]、実効質量を[me*]とすると自由電子による単位体積あたりの電流密度[Jae]は(12-5)式となる。

     電流密度は自由電子による電流と正孔による電流の和として与えられる。同様に正孔の抵抗を[Rh]、実効質量を[mh*]とし、合計の単位体積あたりの電流密度を[Ja]は(12-6)式となる。

     (12-6)式は複素数の式であり、実数(Jar)成分と虚数(Jai)成分にわけて、記載すると下記のようになる。


  3.  実験定数の決定
     我々は実験的に求めなければならない、自由電子と正孔の移動度[μe][μh]、及び実効質量[me*][mh*]と電流密度の関係式(12-4)式と(12-6)式を得た。求めるべき定数が4個であり、定数を決定するには4条件以上の実験データが必要となるが精密な測定を実施することにより、定数を逆算することが可能である。

  4. 13章:不均一材料に行く。
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