18章:バイポーラ(BJT)トランジスタ

     本章では、バイポーラ(BJT)トランジスタの特性について検討したい。トランジスタは増幅作用をもつ電子回路の要素であり、極めて重要な役割をはたす。
     バイポーラトランジスタはバイポーラ接合トランジスタとも呼ばれ、高速で動作する半面、消費電力が大きい、微細化が難しい等の欠点もある。

     種々の参考書のバイポーラ(BJT)トランジスタの特性の解説は、かなり定性的であり、定量的な解説にかけている。従って、参考書をベースとした理論の展開がここでは困難となった。
     ここでの説明は個人的な見解が多く含まれており、裏付に乏しいものがあるがご容赦願いたい。

  1.  バイポーラ(BJT)トランジスタの基本構成
     バイポーラ(BJT)トランジスタの基本構成を図18-1に示す。


  2.  計算の実行
     図18-1の条件でポテンシャル電位Φ(V),電界E(V/m)、正孔密度[po](個/m^3),自由電子密度[no](個/m^3)、正味動きえる電荷(C/m^3),正味全電荷(C/m^3)、自由電子の電位(V),正孔の電位(V)等がどうなるか?まずは計算してみよう!!
     デホルト条件では電圧を加えない平衡状態を計算する。
     次に「ベース電圧 Vb 0.2 V エミッタ−ベース間の電圧 」「コレクタ電圧 Vc 0.3 V エミッタ−コレクタ間の電圧 」を設定し計算を実行してみよう。
     ちなみに微分方程式の解を求めるには、初期条件の設定が必要である。この初期条件の設定が大変難しいのである。まさに感と経験を必要とする。
     本プログラムではポテンシャル電位Φ(V)の初期値は下記式で計算し、設定している。
      no=(N1+Math.sqrt(N1*N1+4*ni*ni))/2 ---(18-1)
      Y0=(Ego/2-k*T*(Math.log(B)+Math.log(m*k*T)*3/2-Math.log(no)))/q ---(18-2)
     ここでN1=x0〜x1間の過剰ドナ濃度、ni=真性材料のキャリア濃度、Ego=禁制帯幅(0°K)、k=ボルツマン定数、B=キャリア濃度空間定数、m=電子静止質量、T=温度、q=電子電荷である。
     この初期値はx0〜x1間の過剰ドナ濃度で発生する。基準からの電位差を計算して入力したものである。
     次に電界初期値であるが、これはうまく式に置きかえることができなかった。なんのことはない。とりあえず電界初期値=0で計算を実行し、本来電界が零になる位置が電界零になるように初期値を補正したのである。デホルトで補正値として-34000V/mを設定してある。

  3.  物理定数
     表14-1 基礎物理定数
    名称記号単位備考
    円周率π無次元 
    ボルツマン定数kJ/deg 
    電子電荷qC 
    電子静止質量mkg 
    真空誘電率[εo]F/m 


  4.  シリコン(Si)の基本特性
     表14-2 シリコン(Si)の基本特性
    名称記号単位備考
    誘電率εF/m 
    禁制帯幅(0°K)[Ego]JJ/q=1.2075eV
    キャリア濃度空間定数β(Js)^(-3)実験式の定数


  5.  半導体の特性制御因子
     表14-3 半導体の特性制御因子
    名称記号単位備考
    x0位置x0m0基準位置
    x1位置x1mx1-x0距離
    x2位置x2mx2-x0距離
    x3位置x3mx3-x0距離
    過剰ドナ濃度N1N1個/m3x1-x0間の濃度
    過剰ドナ濃度N2N2個/m3x2-x1間の濃度
    過剰ドナ濃度N3N3個/m3x3-x2間の濃度
    計算刻みdxm数値計算刻み
    電界初期値EoV/m数値計算刻み
    ベース電圧VbVエミッタ−ベース間の電圧
    コレクタ電圧VcVエミッタ−コレクタ間の電圧
    (注)N=x3/dxの値は1000以下に設定願います。


  6.  半導体の特性変動因子
     表14-4 半導体の特性変動因子
    名称記号単位備考
    温度T°K 


  7.  計算の実行
     制御因子と変動因子の入力が完了したら、下の「計算実行」ボタンを押しましょう。


  8.  半導体の特性計算結果

     表14-5 真性材料のキャリア濃度計算結果
    名称記号単位計算式
    真性材料のキャリア濃度ni個/m3*1参照
    *1:ni=β*POW(k*m*T,3/2)*EXP(-[Ego]/(2*k*T))
    *2:POW(X,k)はXのk乗を意味する。
    *3:EXP(X)はeのX乗を意味する。

     表14-6 位置x(m),ポテンシャル電位Φ(V),電界E(V/m)計算結果

     表14-7 位置x(m),正孔密度[po](個/m^3),自由電子密度[no](個/m^3)計算結果

     表14-8 位置x(m),正味動きえる電荷(C/m^3),正味全電荷(C/m^3)計算結果

     表14-9 位置x(m),自由電子の電位(V),正孔の電位(V)計算結果

  9.  
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