19章:BJT計算結果の検討

 本章では、18章で計算した結果をグラフ化し、バイポーラ(BJT)トランジスタの特徴について検討してみたい。
  1.  ポテンシャル電位Φ(V),電界E(V/m)計算結果
     エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vb)=0(V)の場合の計算結果を図19-1、エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0.2(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vc)=0.3(V)の場合の計算結果を図19-2にしめす。


     Vb=0(V)、Vc=0(V)でポテンシャル電位Φ(V)は中央で低く、谷形となっている。この条件において、自由電子は中央の谷形部に集まり、電流は流れない。
     Vb=0.2(V)、Vc=0.3(V)ではポテンシャル電位Φ(V)はエミッタ側で高く、コレクタ側で低くなる。したがって、自由電子はエミッタ側からコレクタ側に移動しやすくなる。

  2.  正孔密度[po](個/m^3),自由電子密度[no](個/m^3)計算結果
     エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vb)=0(V)の場合の計算結果を図19-3、エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0.2(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vc)=0.3(V)の場合の計算結果を図19-4にしめす。


     Vb=0(V)、Vc=0(V)で自由電子密度(個/m^3)は中央で低く、谷形となっている。この条件において、密度差による拡散電流と電位差がバランス状態にあり、電流は流れない。
     Vb=0.2(V)、Vc=0.3(V)では自由電子密度(個/m^3)はエミッタ側で高く、コレクタ側で低くなる。したがって、自由電子はエミッタ側からコレクタ側に拡散しやすくなる。
     なお、本条件においては、正孔密度は自由電子密度と比較して、著しく小さく正孔による電流は無視できる。

  3.  正味動きえる電荷(C/m^3),正味全電荷(C/m^3)計算結果
     エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vb)=0(V)の場合の計算結果を図19-5、エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0.2(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vc)=0.3(V)の場合の計算結果を図19-6にしめす。


     Vb=0(V)、Vc=0(V)とVb=0.2(V)、Vc=0.3(V)ともに正味全電荷は中央部が負に帯電しており、これにより電界が発生し、キャリア密度分布が均一になろうとする力とバランスしている。

  4.  自由電子の電位(V),正孔の電位(V)計算結果
     エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vb)=0(V)の場合の計算結果を図19-7、エミッタ?ベース間の電圧(Vb)=0.2(V)、エミッタ?コレクタ間の電圧(Vc)=0.3(V)の場合の計算結果を図19-8にしめす。


     Vb=0(V)、Vc=0(V)でポテンシャル電位Φ(V)は中央で低く、谷形となっているが、値としては僅かであり、ほぼ平らになっている。
     Vb=0.2(V)、Vc=0.3(V)ではポテンシャル電位Φ(V)はエミッタ側で高く、コレクタ側で低くなる。したがって、自由電子はエミッタ側からコレクタ側に移動しやすくなる。

  5.  計算結果纏め
     以上の検討で電流がエミッタ側からコレクタ側に流れることが定性的には理解できる。しかし、流れる電流値を定量的に求めるためには、さらなる検討が必要である。
     流れる電流値を定量的に求める方法を後章で検討したい。


  6. 20章:BJTの電流値の検討に行く。
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