5章:フェルミーディラック分布関数

   いよいよ、準備運動も本格的になります。
 半導体のキャリアの数はフェルミーディラック分布関数とよく一致します。従ってこの関数の意味を理解することは極めて重要です。しかし、なんとも理解しにくい分布関数の一つです。
 フェルミーディラック分布関数を導き出すには、下記の2つの前提条件が不可欠です。
(1)単位体積あたりの自由電子の数(すなわち密度)は4章で説明したボルツマン分布関数(4-12)式に従う。
(2)フェルミーディラック分布関数は自由電子の密度分布を与える関数ではなく、電子の収まる箱に対して、電子の存在する相対確率を示す。
 いいかえるとボルツマン分布関数をベースに密度分布→収納箱の中身の存在する確率に変換したものです。
  1.  遷移確率
     ボルツマン分布関数(4-12)式から、状態の異なる状態iから状態jに遷移する確率と状態jから状態iに遷移する確率の比を求めます。

  2.  排他律に従う系のフェルミーディラック分布関数
     2章:原子間結合の性質で詳しく説明したように結晶中の電子の配置は原子軌道により厳しく規制されています。従って同一の電子受容体に2つの電子を収めることができません。
     電子受容体は電子の箱として考えることできます。この電子の箱の規制条件をいれた電子の存在確率を求めます。

     (5-5)式はフェルミーディラックの分布と呼ばれ、iに無関係な一定値Efはフェルミ準位としてしられる。一定値Efはfiの確率が0.5となるエネルギーを意味すると同時に実質的なエネルギーの正負を決定する基準のエネルギーとして用いられる。
     言い換えると実質的にはフェルミ準位がエネルギー零の状態であり、フェルミ準位より上が正のエネルギー、フェルミ準位より下が負のエネルギーとして取り扱われる。

     
  3. 6章:半導体中のキャリア濃度に行く。
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