7章:不純物濃度と[po][no]積
ある母体半導体、例えばシリコンのような半導体を考えるとき、その中の余分なドナまたはアクセプタが全部イオン化するくらい十分高温における電子または正孔の真性濃度niをきめると「添加」不純物のあるときに、電子と正孔の濃度を決定する関係式がえられる。
- 不純物濃度(ドナ濃度[Nd]とアクセプタ濃度[Na])
シリコンのような半導体に加えられる不純物は全部イオン化するとして話しを進める。
過剰なドナ濃度(N)を下記式で定義する。
N = [Nd] - [Na] ---(7-1)
自由電子の数を[no]、正孔の数を[po]とすると下記関係式が成立する。
[no] - [po]= N ----(7-2)
(7-2)式の解釈はこうである。真性半導体においては自由電子と正孔の数は等しくなければならない。従って自由電子の数から正孔の数を引いた値は過剰なドナの数と一致しなければならない。
この条件を6章:半導体中のキャリア濃度の(6-16)と(6-23)式にあてはめてみよう。全ての温度条件で[no] = [po]を満足しなければならないとすると(7-3)(7-4)式の条件をみたさなければならない。
[me*]=[mh*] ----(7-3)
Ef=(Ec+Ev)/2 ----(7-4)
ここで[me*]、[mh*] は実験的に求めなければならない実効の自由電子と正孔の質量であるが、実験定数βが掛算ではいっているため電子静止質量 mと等しいとしても問題がない。
従って、(6-16)と(6-23)式は下記のようになる。
- [po][no]積
さて、ここでは6章:半導体中のキャリア濃度の電子の数[no]を求める(7-5)式と正孔の数[po]を求める(7-6)式から[po][no]積が不純物濃度に依存しないことを証明しなければならない。[po][no]積は下記のとおりとなる。
[po][no]積が不純物濃度に依存しないためには、電離して自由電子となるエネルギー(Ec)から荷電子帯のエネルギーEvを引いた禁制帯幅[Ego]が積不純物濃度に依存しないことが必要であることが(7-7)式から明らかである。
この物理的解釈としては、真性半導体の濃度に比較して、不純物濃度が十分小さい領域においては、禁制帯幅[Ego]に関して真性半導体の濃度が支配的で不純物濃度の影響が十分小さいと考えるべきであろう。
いま、真性半導体の自由電子、または正孔の濃度を[ni]で表すならば、(7-7)式は
いま、
[no] - [po]= N ----(7-2)
[po][no]=[ni]^2 ----(7-10)
として、[no]と[po]の値を求めるならば、
[no]=(N+SQRT(N^2+4*[ni]^2))/2 ---(7-11)
[po]=(-N+SQRT(N^2+4*[ni]^2))/2 ---(7-12)
(SQRT(X)はXの平方根を意味する。)
となる。(7-11)(7-12)式により、不純物濃度がある場合の自由電子と正孔の濃度を求めることができる。
- 電離して自由電子となるエネルギー(Ec)と荷電子帯のエネルギー(Ev)
(7-5)(7-6)式をそれぞれ(Ec-Ef)、(Ef-Ev)を左辺に変形すると
Ec-Ef =kT(Ln(β) + Ln(mkT)*3/2- Ln([no])) ---(7-13)
Ef-Ev =kT(Ln(β) + Ln(mkT)*3/2- Ln([po])) ---(7-14)
となる。これは不純物濃度がある場合、自由電子と正孔の濃度で電離して自由電子となるエネルギー(Ec)と荷電子帯のエネルギー(Ev)が変化することを意味する。Efのフェルミ準位は基準のエネルギーと考えるべきで、不純物がドープされた場合は(Ec)と(Ev)が変化すると考えるべきである。
(7-13)(7-14)式のエネルギー準位を電位φに変換するには電荷qで割ればよい。
φc=(Ec-Ef)/q ------(7-15)
φv=-(Ef-Ev)/q ------(7-16)
(7-15)(7-16)式は純物がドープにより、電位φが変化することを意味する。
- 8章:理論式と実験式の整合に行く。
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